トレッキング、聞きなれない言葉に戸惑っていた松山は名越の話を聞いているうちに何となく分ってきた感じだった。本格的な登山と違って、気軽に登る山登りのことらしい。しかし、そうは言っても普段の服装と言うわけには行かない。
頭の先から足の先までトレッキング用の支度が必要である。自然を相手の、場合によっては野宿も想定した準備も必要である。勿論コースもどこでも良いというのではなく、トレッキングコースが決められているようである。名越は週末になると、これを楽しんでいたらしい。しかし、それにしても何か動機があったはずだ。
松山はそれとなく、聞き出そうとしたのだが、その辺の話になると、はぐらかされてしまう。そのうち、名越の家族の人と話しているうちにその謎が解けた。
群馬の工場の従業員の女性と親しくなり、その女性の趣味であったトレッキングに誘われて夢中になったのだとの事。それから、何かと言うと、彼女と行動を共にするようになり、仕事以外には家にも帰らないのだと言う。そういうことか、松山は改めて納得するところとなったが、それもいいだろうと思っていた。少なくても
彼は無趣味で、酒も飲まず、(マージャンぐらいだったが、メンバーがいなくなり、出来なくなった。)淋しい生活だった。一度ゴルフを誘って近くの練習場へ出かける約束をした事があったが、いざとなると渋って、結局駄目になったことがある。家庭を犠牲にしていることは決してほめられないけど、過去の経緯から今に始まったことでもなく、年もとってきて、今の女性と落ち着くなら、それも仕方の無いことかなと、他人事であったが、本人は生き生きとしていた。
仕事も順調であり、楽しそうであった。月に一回の名越との出会いは続いていたのである。ある年の二月、寒い時だったが、そろそろ会って、食事でもして近況を話そうと思っていたら、名越の奥さんから電話が飛び込んできた。
「名越が脳梗塞で倒れて、出先から救急車で運ばれてきました。しばらくお会いできなくなったので、お知らせします。詳しいことはまた後ほど」寝耳に水であった。週末から出て行って、連絡も無く、いつものことと誰も心配もせず、気にもしないでいたのだが、出先の女性から知らせが合ったらしい。
絶対安静らしく、様子が全く分らないまま彼との連絡は途絶えてしまった。
そして、一ヶ月くらい過ぎた頃、奥さんから電話があり、「松山さんにお話したいことがるので、来てほしい。」と呼び出されたのである。
「好事魔多し」と言うことも聞くけど、あの元気な彼がと思うと、人間は絶対は無い、弱いものだと言うことをつくづく思わされた。
頭の先から足の先までトレッキング用の支度が必要である。自然を相手の、場合によっては野宿も想定した準備も必要である。勿論コースもどこでも良いというのではなく、トレッキングコースが決められているようである。名越は週末になると、これを楽しんでいたらしい。しかし、それにしても何か動機があったはずだ。
松山はそれとなく、聞き出そうとしたのだが、その辺の話になると、はぐらかされてしまう。そのうち、名越の家族の人と話しているうちにその謎が解けた。
群馬の工場の従業員の女性と親しくなり、その女性の趣味であったトレッキングに誘われて夢中になったのだとの事。それから、何かと言うと、彼女と行動を共にするようになり、仕事以外には家にも帰らないのだと言う。そういうことか、松山は改めて納得するところとなったが、それもいいだろうと思っていた。少なくても
彼は無趣味で、酒も飲まず、(マージャンぐらいだったが、メンバーがいなくなり、出来なくなった。)淋しい生活だった。一度ゴルフを誘って近くの練習場へ出かける約束をした事があったが、いざとなると渋って、結局駄目になったことがある。家庭を犠牲にしていることは決してほめられないけど、過去の経緯から今に始まったことでもなく、年もとってきて、今の女性と落ち着くなら、それも仕方の無いことかなと、他人事であったが、本人は生き生きとしていた。
仕事も順調であり、楽しそうであった。月に一回の名越との出会いは続いていたのである。ある年の二月、寒い時だったが、そろそろ会って、食事でもして近況を話そうと思っていたら、名越の奥さんから電話が飛び込んできた。
「名越が脳梗塞で倒れて、出先から救急車で運ばれてきました。しばらくお会いできなくなったので、お知らせします。詳しいことはまた後ほど」寝耳に水であった。週末から出て行って、連絡も無く、いつものことと誰も心配もせず、気にもしないでいたのだが、出先の女性から知らせが合ったらしい。
絶対安静らしく、様子が全く分らないまま彼との連絡は途絶えてしまった。
そして、一ヶ月くらい過ぎた頃、奥さんから電話があり、「松山さんにお話したいことがるので、来てほしい。」と呼び出されたのである。
「好事魔多し」と言うことも聞くけど、あの元気な彼がと思うと、人間は絶対は無い、弱いものだと言うことをつくづく思わされた。