波紋

一人の人間をめぐって様々な人間関係が引き起こす波紋の様子を描いている

音楽スタジオウーソーズ   第19回

2014-10-13 16:10:00 | Weblog
結局は自分の役目はこれで終わるのかと思うと少し寂しい思いもあったが、サラリーマンであれば、これも運命かとあきらめるしかなかった。福島は少し遠い気がして気が重かったが新しい始めての土地も気分転換で良いかと考え直していた。
週末に自宅へ帰ることは出来たし、コーラスで彼女との出会いも出来た。二人の間には大人としての振る舞いであったが少しずつ距離が近くなっている気がしていたが外処が踏み込もうとすると彼女は本能的にそれを避けるのだった。
不思議なもので人は追われていると感じると逃げの姿勢になり、避けられていると思うと追う気持ちが働くものらしい。むしろその度合いは強くなるものなのだ。(ストーカー)
彼は結婚前の青春時代を思い出しかのように情熱が戻っていた。仕事も順調であり、家族も何の問題もなかった。だからこそ、何のためらいもなく一途なそして純粋な恋愛感情を持つことが出来たのだ。何時しか彼女の住まいも分かるようになり、コーラスの帰りをともにして送る機会を持つようになっていたが、彼女は彼を決して家に入れることはなかった。彼女には主人がいないことは知っていたが、大人の子供が二人いることは分かっていた。子供たちも大人の親たちのことは承知で理解していると思われ、母親を一人の女性としてみていると思っていたが、真実は分からなかった。
彼女の子供たちが外処の存在を知ったのは、コーラスの帰りが遅くなり始めたころであり、出かけるときの様子がいつもと違ってきたことであっおた。いつもはあまり着るものや化粧に時間をかけることがなかったが、最近は出かける前になるとそわそわと落ち着かない様であった。娘は目ざとくそんな母を見て問い詰めた。「お母さん、この頃少し変よ
誰か好きな人でも出来たの。もう年なんだからよく考えてね。」と釘を刺していた。
然しそんな家庭のこととは関係なく、二人の関係は続いていた。彼女のほうも外処のマスクやその熱意に少しずつ負けて頼るところがあったのである。
たびたびの密会、時間外の帰宅がつづき二人の関係は次第にエスカレートしていた。
しかし、その度合いと反比例するように彼女の家庭は次第に壊れていったのである。
そして彼女は決心に迫られて、外処に「これ以上の関係を続けると子供たちを犠牲にすることになります。それは私には出来ません。許してください」それは母としての自覚に目覚めた言葉であった。