もろい日本経済③ 沈む日本からの脱却策
群馬大学名誉教授 山田博文さん
「物価の番人」の日銀が身動きできないとなれば、物価は上昇し続け、国民生活はいっそう深刻化します。新型コロナウイルス禍やロシア・ウクライナ戦争など、危機的事態に出くわすことで、それまで隠されていた矛盾が表面化しました。
証明されたのは、新自由主義政策と異次元金融緩和政策にまい進したアベノミクスが貧富の格差を拡大し、政府債務を膨張させ、日本経済そのものを脆弱(ぜいじゃく)化させたことです。アベノミクスを進めた安倍晋三政権と、それを継承した菅義偉・岸田文雄政権の責任は重大です。

「消費税5%減税」の署名やシールアンケートを呼びかける人たち=4月1日、東京都新宿区
世界で位置低下
かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下しています。
日本経済(国内総生産陪GDP)が世界経済に占める割合は、1994年の17・8%をピークに、2021年には5・3%まで落ち込んでしまいました。
為替相場やインフレを排除した購買力平価で比較しても、日本のGDP(5・6兆ドル)は、中国(27・0兆ドル)、アメリカ(22・9兆ドル)、インド(10・1兆ドル)に次ぐ第4位です。
日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクスです。日本はもはや各国から注目されなくなり、海外メディアの日本記事は激減しました。日本に代わって注目されるようになったのは、経済大国に成長した中国やインドです。
21世紀に入り、先進国が高い経済成長率を誇る時代は終わりました。そもそもゼロ金利とは「貨幣が資本として増殖しない=経済成長しない」状態です。
2000年から20年までの実質経済成長率平均は、新興国のトップランナー中国の8・6%に対して、アメリカ1・8%、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均1・6%、そして日本は0・6%です。

日本の貿易相手国・地域と年間輸出入額(2020年)
財務省「貿易統計」から作成
対外関係見直し
この事実と歴史的傾向を踏まえるなら、沈む日本からの脱却はむやみに「成長」に走ることではなく、ましてアメリカに代わって日本の最大貿易相手国になった中国を仮想敵国にして軍備を増強することではありません。
やるべきことは、新自由主義政策とアベノミクスからの大転換であり、塗り変わった世界経済地図にふさわしい対外関係の見直しです。
第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復です。なによりも消費税率5%への減税が必要です。さらに賃金を上げ、各種保険料を下げて、国民の懐を温めることです。これは消費不況からの脱出に直結します。また、社会保障・教育関連政策を充実させ、明日への安心と夢を与えることです。その財源は大資本や富裕層などの応能負担で調達すべきです。
第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ることです。国民生活を破壊する消費者物価高騰を回避するためには、円安で高騰した輸入物価を安易に消費者物価に転嫁させない大企業の努力が求められます。その財源は十分存在します。非常事態の今こそ、大企業がため込んできた466兆円の内部留保金を吐き出してもらうことです。そうすれば、消費者物価を低位安定化できます。
第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却することです。
問題は、このような政策に向かわせる政府を実現できるかどうかにかかっている、と言えるでしょう。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月23日付掲載
かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下。
日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクス。
その転換の道は…
第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復。
第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ること。
第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却。
群馬大学名誉教授 山田博文さん
「物価の番人」の日銀が身動きできないとなれば、物価は上昇し続け、国民生活はいっそう深刻化します。新型コロナウイルス禍やロシア・ウクライナ戦争など、危機的事態に出くわすことで、それまで隠されていた矛盾が表面化しました。
証明されたのは、新自由主義政策と異次元金融緩和政策にまい進したアベノミクスが貧富の格差を拡大し、政府債務を膨張させ、日本経済そのものを脆弱(ぜいじゃく)化させたことです。アベノミクスを進めた安倍晋三政権と、それを継承した菅義偉・岸田文雄政権の責任は重大です。

「消費税5%減税」の署名やシールアンケートを呼びかける人たち=4月1日、東京都新宿区
世界で位置低下
かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下しています。
日本経済(国内総生産陪GDP)が世界経済に占める割合は、1994年の17・8%をピークに、2021年には5・3%まで落ち込んでしまいました。
為替相場やインフレを排除した購買力平価で比較しても、日本のGDP(5・6兆ドル)は、中国(27・0兆ドル)、アメリカ(22・9兆ドル)、インド(10・1兆ドル)に次ぐ第4位です。
日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクスです。日本はもはや各国から注目されなくなり、海外メディアの日本記事は激減しました。日本に代わって注目されるようになったのは、経済大国に成長した中国やインドです。
21世紀に入り、先進国が高い経済成長率を誇る時代は終わりました。そもそもゼロ金利とは「貨幣が資本として増殖しない=経済成長しない」状態です。
2000年から20年までの実質経済成長率平均は、新興国のトップランナー中国の8・6%に対して、アメリカ1・8%、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均1・6%、そして日本は0・6%です。

日本の貿易相手国・地域と年間輸出入額(2020年)
中国 | 36.0兆円(26.5%) |
アメリカ | 20.0兆円(14.7%) |
アジア | 73.8兆円(54.2%) |
欧州連合 | 14.2兆円(10.5%) |
東南アジア諸国連合 | 20.5兆円(15.0%) |
対外関係見直し
この事実と歴史的傾向を踏まえるなら、沈む日本からの脱却はむやみに「成長」に走ることではなく、ましてアメリカに代わって日本の最大貿易相手国になった中国を仮想敵国にして軍備を増強することではありません。
やるべきことは、新自由主義政策とアベノミクスからの大転換であり、塗り変わった世界経済地図にふさわしい対外関係の見直しです。
第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復です。なによりも消費税率5%への減税が必要です。さらに賃金を上げ、各種保険料を下げて、国民の懐を温めることです。これは消費不況からの脱出に直結します。また、社会保障・教育関連政策を充実させ、明日への安心と夢を与えることです。その財源は大資本や富裕層などの応能負担で調達すべきです。
第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ることです。国民生活を破壊する消費者物価高騰を回避するためには、円安で高騰した輸入物価を安易に消費者物価に転嫁させない大企業の努力が求められます。その財源は十分存在します。非常事態の今こそ、大企業がため込んできた466兆円の内部留保金を吐き出してもらうことです。そうすれば、消費者物価を低位安定化できます。
第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却することです。
問題は、このような政策に向かわせる政府を実現できるかどうかにかかっている、と言えるでしょう。
(おわり)
「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月23日付掲載
かつて「1億総中流」や「ジャパン・アズ・ナンバーワン」などともてはやされた昔日の日本は、もはや見る影もありません。世界経済における日本の位置は驚くほど低下。
日本経済の脆弱化を加速したのは、大資本の目先の利益を優先し、国内の設備投資を怠り、賃金を削減する新自由主義を推進し、さらに異次元金融緩和で資産バブルと政府債務の膨張を招いたアベノミクス。
その転換の道は…
第1に、新自由主義政策とアベノミクスによって失った「99%の人々の経済利益」の回復。
第2に、目下のインフレ・物価高から国民生活を守ること。
第3に、世界最大の経済圏に成長したアジアに目を向け、中国、韓国、東南アジア諸国連合(ASEAN)との共存共栄を実現し、対米従属的な対外関係から脱却。
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