きんちゃんのぷらっとドライブ&写真撮影

「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

もろい日本経済② 身動きできない日銀

2022-04-23 05:13:09 | 経済・産業・中小企業対策など
もろい日本経済② 身動きできない日銀
群馬大学名誉教授 山田博文さん

インフレ・物価高に襲われた各国中央銀行は、政策金利を引き上げ、量的緩和(QE)を縮小し、金融緩和から引き締め政策に転換しました。中央銀行の本来の役割はインフレを防止する「物価の番人」だからです。
アメリカの連邦準備制度理事会(FRB)は、政策金利を3月に0・25%引き上げました。今後連続利上げを予定し、来年半ばには3・5%超の水準に達しそうです。また、8兆9000億ドル(約1100兆円)に膨らんだ資産を来年末までに約2兆ドル圧縮する予定です。
イギリスの中央銀行(BOE)は昨年末から連続して利上げし、現在0・75%になりました。欧州中央銀行(ECB)も利上げを予定しています。
しかし、この肝心な時に、日銀は「物価の番人」として身動きできない事態に追い込まれています。アベノミクス(安倍晋三政権の経済政策)の悲惨な末路です。



日本銀行本店=東京都中央区

金利格差拡大
日銀はマイナス0・1%の政策金利に固執し、世界各国との金利格差は拡大する一方です。日米の長期金利格差は2%超に拡大しました。日銀が長期金利を目標値の0・25%以下に抑え込むために、長期国債を利回り0・25%の指し値オペで無制限に買いまくっているからです。
利益を求める世界の投資マネーは金利の高い金融商品に向かうので、日本からの資本逃避が進み、円安が加速しました。日本の対外金融資産残高は外貨準備や直接投資分を除いても796兆円に達しています。4月に入り、20年ぶりに1ドル=129円台の円安になりました。経済界からも、現在の為替水準は「日本が独り負けしていることの象徴」で、「大変大きな問題」との声が上がっています。資源・エネルギーの輸入コストが高騰し、企業収益に打撃を与えているからです。ただ、大企業は一時的に受けるこの打撃を商品価格に転嫁することで軽減しています。
円安が日本経済を活性化させる時代は去りました。かつて対外輸出で貿易黒字を稼ぎ出していた大企業の多くが海外に生産拠点を移転したからです。貿易黒字大国だった日本は貿易赤字国に転落しています。


アベノミクスによる日本経済の脆弱化と格差拡大
項目2012年(A)2021年(B)B/A
名目GDP6.3兆ドル5.1兆ドル0.8倍
世界経済に占める割合8.3%5.3%3ポイント縮小
日本の株式時価総額300.7兆円753.0兆円2.5倍
大企業の内部留保金333.5兆円466.8兆円1.4倍
国民負担率39.8%48.0%8.2ポイント増
政府債務総額1131.5兆円1421.6兆円1.2倍
円・ドル相場(年間平均)79.7円118.5円38円の円安
国際通貨基金「World Economic Outlook Database」、日本取引所グループ「市場別時価総額」、財務省「国民負担率の推移」などから作成。大企業内部留保金は20年のデータ


円安で生活苦
円安はむしろ、国民生活を苦しめる事態を引き起こしています。原油・天然ガス・原材料・食料を海外に依存する日本の輸入物価を高騰させ、高騰した輸入物価が企業物価を押し上げ、それが一番川下の消費者物価に転嫁されるからです。円安が進めば進むほど、国内の物価が上がり、生活は苦しくなる悪循環に陥っています。
こんな状況にもかかわらず、日銀が身動きできないのは、アベノミクスの負の遺産に縛られているからです。異常な低金利水準を維持しないと、財政破綻や株式バブルの崩壊を引き起こし、場合によっては日本発の大恐慌が発生するからです。
安倍元首相の強力な推薦で総裁になり、アベノミクスの「第1の矢」異次元金融緩和政策を担った黒田東彦日銀総裁が、目前のインフレ・物価高や円安間題よりも重視しているのは、以下の事柄だと考えられます。
第1に、国債金利の低位固定化(国債の加重平均金利は0・83%)を継続し、日本政府の財政破綻を先延ばしすることです。日銀が異次元金融緩和で国債を買いまくり、国債は大増発されました。国債発行残高は約1000兆円に達し、日本は世界トップの「政府債務大国」となっています。もし国債金利が上昇するなら、政府の国債利払い費用は数兆円規模で増え、財政危機が深刻化する恐れがあります。
第2に、バブルの夢を見続けることです。異次元金融緩和政策は国債・株式などの金融資産バブルを起こしました。大企業・富裕層・内外投資家に巨額の利益をもたらし、経済界から支持を集めました。この夢から覚めたくないのでしょう。国民には格差拡大の悪夢でしかありません。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月22日付掲載


利益を求める世界の投資マネーは金利の高い金融商品に向かうので、日本からの資本逃避が進み、円安が加速。
経済界からも、現在の為替水準は「日本が独り負けしていることの象徴」で、「大変大きな問題」との声が。
円安が日本経済を活性化させる時代は去りました。かつて対外輸出で貿易黒字を稼ぎ出していた大企業の多くが海外に生産拠点を移転。貿易黒字大国だった日本は貿易赤字国に転落。
こんな状況にもかかわらず、日銀が身動きできないのは、アベノミクスの負の遺産に縛られているから。異常な低金利水準を維持しないと、財政破綻や株式バブルの崩壊を引き起こし、場合によっては日本発の大恐慌が発生するから。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

もろい日本経済① インフレ・物価高が襲う

2022-04-22 07:12:08 | 経済・産業・中小企業対策など
もろい日本経済① インフレ・物価高が襲う
インフレ・物価高が世界を襲う中、日本経済の脆弱(ぜいじゃく)性が際立っています。その現状と原因について、群馬大学の山田博文名誉教授に寄稿してもらいました。

群馬大学名誉教授 山田博文さん

最近の消費者物価は、アメリカで40年ぶりの前年比8・5%の上昇、ユーロ圏諸国でも過去最高の7・5%上昇です。欧米の消費者物価は従来1~2%台の上昇で推移していましたから、現在は深刻なインフレです。
国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界の食料価格指数(2014~16年=100)は3月に過去最高の159・3まで上昇しました。各国の国民生活は食料高騰に直撃されています。
日本は、原油・ガス・原材料・食料の多くを輸入に依存しているので、高騰した輸入物価は企業物価指数を押し上げます。2月には前年同月比で9・3%上昇し、41年ぶりの高水準となりました。
この高騰した企業物価は消費者物価に転嫁され、店頭の食料品価格の高騰を招いています。食卓に上がるパン7・2%、マーガリン9・5%、コーヒー・ココア5・6%などと高騰しています。



ロシア軍の空爆に見舞われたウクライナのヤコプリフカ村近辺の麦畑で肥料を散布するトラクター=5日(ロイター)

ダブルパンチ
世界中がインフレ・物価高に襲われる背景には、以下の事情があるようです。
第1に、リーマン・ショック(世界金融恐慌)や新型コロナウイルス禍に直面した各国政府と中央銀行が歴史的に例をみないほど拡張した財政金融政策を行ってきたことです。各国の財政支出と中央銀行の資金供給量は世界の実体経済(国内総生産=GDP)の成長を大きく上回りました。
不況対策・生活支援の財政支出は必要なことです。しかし増大した中央銀行の資金供給は、民間銀行の企業・家計・投資家などへの貸し出し原資を増やすので、実体経済が必要とする通貨量を超えて過大な通貨が流通し、通貨価値は下落します。そのため、すべての商品価格が上昇する全般的な物価高=インフレが発生します。
中央銀行の資金供給量がどれだけ増大したかは、中央銀行の資産(保有国債や貸出金など)の増大となって表示されます。リーマン・ショック以降、主要中央銀行の資産は激増しました。日銀で約6倍、米連邦準備制度理事会(FRB)で約10倍、欧州中央銀行(ECB)で約6倍に増えました。しかし世界経済(GDP)の規模は1・6倍にしか増えていません。
各国中央銀行から過剰に供給された資金は、民間金融機関を通じて世界各国の各種商品、株式などの金融資産、不動産などに買い向かい、インフレやバブルを起こしました。
第2に、ロックダウン(都市封鎖)など、新型コロナ対策としての人と物の移動制限は、グローバル化したサプライチェーン(供給網)を切断し、商品の供給量が減りました。しかし、需要サイドは各国の財政金融膨張で大きくなっていますから、需要が供給を上回り、その分だけ商品価格は上昇しました。
この価格上昇は、通貨価値の下落によるインフレとは区別されます。国民生活からすれば、インフレに加えて需給のアンバランスによる価格上昇というダブルパンチの物価高に襲われました。




生命維持深刻
第3に、今年2月末に勃発したロシア・ウクライナ戦争は、世界の原油・天然ガス・各種資源大国の対外輸出減と供給減を招き、価格が高騰しました。世界中の全産業の基幹エネルギー価格が高騰したので、この川上の価格高騰が川中の企業物価を押し上げ、さらに川下の消費者物価に転嫁され、世界的な物価高を誘発しました。
ウクライナとロシアの2カ国は世界の穀物取引の4分の1を占めます。国連は、世界が食料難に陥り、すでに過去最高値にある食料品価格が今後さらに22%上昇する恐れがあると推測しています。穀物は生命維持のための代表的な食料です。各国の国民生活、とくに食料自給率が低く輸入に依存する日本の国民生活にとって、今後の物価高の影響は深刻化することが予想されます。(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月21日付掲載


第1に、増大した中央銀行の資金供給は、民間銀行の企業・家計・投資家などへの貸し出し原資を増やすので、実体経済が必要とする通貨量を超えて過大な通貨が流通し、通貨価値は下落します。そのため、すべての商品価格が上昇する全般的な物価高=インフレが発生。
第2に、新型コロナからの経済回復で、需要サイドは各国の財政金融膨張で大きくなっていますから、需要が供給を上回り、その分だけ商品価格は上昇。
第3に、今年2月末に勃発したロシア・ウクライナ戦争は、世界の原油・天然ガス・各種資源大国の対外輸出減と供給減を招き、価格が高騰。
困窮世帯への経済支援が欠かせません。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

理研の研究職員600人雇止め 60チーム解散も 日本の科学研究ますます衰退

2022-04-21 07:13:10 | 政治・社会問題について
理研の研究職員600人雇止め 60チーム解散も 日本の科学研究ますます衰退
理化学研究所(理研)が来年3月に約600人の研究系職員の雇い止めを計画しており、約60の最先端研究チームが解散の危機にひんしています。労働契約法の特例で、非正規の研究者は通算雇用期間10年で無期雇用転換権が発生します。しかし理研は、来年3月に期限となる直前に無期雇用転換を逃れるため「上限10年」とされた非正規の研究者296人を解雇の対象にしています。中には研究チーム(ラボ)を率いる責任者も含まれており、ラボが閉鎖されることで約300人のスタッフも雇い止めになります。対象者数は理研全職員の8分の1に及び、現場からは「理研の研究の継続性が危ぶまれる」「日本の研究・技術開発の衰退に拍車をかける」など懸念や不安の声が上がっています。(原千拓)

【理化学研究所】
国立研究会開発法人で、日本で唯一の自然科学の総合研究所として、物理や生物、工学、医科学など広い分野で研究を進めています。



理研の人員の推移を示したグラフ(理研の資料から作成)。2018年度から任期制の職員を無期雇用に転換する制度を導入。理研は研究職員について「厳正な選考の上、無期雇用職員として雇用」としていますが、現場からは「公募分野が非常に狭く審査基準があいまい」、「不透明な選考になっている」などと指摘する声が上がっています。

話し合いなく突然通告
研究室主宰者Aさんは…
理研の研究室主宰者のAさんは、上限10年を理由に今年度末で雇い止めに。突然の通告に「青天のへきれきでした」と話します。「研究評価を考慮せず、プロジェクトの途中でも強行しようとしています。これまで職員との話し合いは一切ありませんでした」
Aさんが10年以上けん引してきたラボは、常勤研究員や技術専門のスタッフなど十数人で運営。工学的もしくは物理学的な見地から、生物や医療の分野の研究を飛躍的に高度化するための最先端の装置や基盤技術を開発する基礎研究を行っており、研究は順調に進んでいました。
現在、当局から執拗(しつよう)に実験装置の撤去や片付け、人の転出を迫られている状況にAさんは「研究は続けていますが、先の見通しが立てられず意欲が上がりません」と訴えます。実験装置の撤去に数千万円かかり、転出ができたとしても移設に1億円かかるといいます。
複数の研究を抱えるAさんのラボは、人材などにかかる経費を理研以外から予算を得て工面してきました。「プロジェクトの中には海外の研究室や国内の大学との共同研究もあり進行中です。それが全部中断するので損害は大きい」
博士課程学生の学位取得も大きな課題です。「指導途中の学生は確実に実験が中断してしまい年限通りに卒業できなくなってしまう可能性が高く、どうしようかと悩んでいます。当局はこのような状況を全く理解してくれません」と怒ります。
今回の雇い止めで理研の生命機能科学研究センターの神戸の施設では、ビル1棟丸ごと解散に迫られています。主に技術開発の基礎研究を10年、20年かけて教授から准教授へ技術を培い伝承して発展していく分野が多いといいます。
「基礎研究は10年どころか倍以上かかることもあります。長年続けてきた研究を断ち切ってしまえばその芽をつぶしてしまいます」とAさん。「残念ながら日本で同じ研究ができる大学はほとんどなく、どこも予算が減っている状況で転出しようとしてもする先がない。
海外にあるかもしれませんが実際には難しい」


予算採択も全て中止に
研究室主宰者Bさんは…
「機械的な雇い止めで研究の継続性と発展が失われてしまう」と訴えるのは研究室主宰者を10年以上続けてきたBさん。Aさんと同様、今年度末で雇い止めに。長年、積み重ねてきた基礎研究の成果が認められ、応用研究へ展開させようとした矢先でした。
「来年度から3年間の科学研究費が採択されているにもかかわらず、一方的な雇い止めでプロジェクトはもちろん、これまでの研究をすべて中止せざるをえなくなります。非常に乱暴なやり方だ」とBさん。「スタッフは上限10年に該当しませんが機械的に雇い止めになり生活に困ります。これまで築き上げてきた研究成果や人材、実験装置などがすべてゼロになってしまう」
Bさんは、光を使ってがん細胞の成長や転移などの生命現象を可視化する技術開発の基礎研究を続けてきました。この技術を使った早期のがん検出などへの応用研究を目指しています。
「アメリカや中国、ヨーロッパと竸争している世界最先端の分野です。ラボにある実験装置は世界に1台しかなく、分解したら元に戻らないし他の研究者には扱えません。研究がストップしたら完全に世界から立ち遅れてしまいます」
今後、上限10年の雇用が続けば成果が出やすい研究をする人が増え、基礎研究をしっかりできる環境ではなくなるとBさんは懸念します。「チームリーダーになっても10年で再任もなく解雇される所に優秀な人材が集まるでしょうか。自分の研究で手いっぱいになり、若手の研究者も残らないし人材育成もできない」
Bさんはオンリーワンの研究を目指すため、世界との競争の中で状況変化に合わせて軌道修正しながら新しい目標をつくってきました。
「理研には研究に集中できるすばらしい環境があります。知の探究や新発見の研究を続けるには精神的な余裕が大事です。雇用が安定しないと基礎研究はできません」とBさん。「理研内の厳しい評価を乗り越えてきた優秀な研究者たちを機械的に切り、ラボを閉鎖させることで研究力の低下を招くと思います。5年、10年後には取り返しのつかない状況が理研だけでなく他の研究機関、大学にも広がるのではないでしょうか」


上限10年納得せず計画の撤回求める
労組など政府要請

要請書を手渡す理研労の金井執行委員長(右から2人目)たち=3月25日、文科省

理研は業務継続や予算の有無にかかわらず、事務系は5年、研究系は10年を超えた契約を行わないとする就業規則を2016年度に導入しました。起算日は改定された労働契約法第18条の施行日(13年4月1日)にさかのぼって適用しました。
理研の研究職員は8割弱が任期制で雇い止めを生む要因になっています。理研の予算は増額しており、法人評価は最高の「S」ランクです。
理化学研究所労働組合(理研労)の金井保之執行委員長は「理研では10年、20年と非正規で研究所を支えてきた研究職や事務職の人たちがたくさんいる。労働契約法の趣旨にのっとれば、みんな無期にすべき。上限10年での雇い止めは理不尽なことで現場は納得していない」と訴えます。
理研労や地域の住民、労働組合などでつくる「理研の非正規雇用問題を解決するネットワーク」は3月25日、文部科学省と厚生労働省に対し、理研に雇い止めを撤回させるよう要請しました。
日本共産党の田村智子政策委員長はこの間題を国会で取り上げ政府の姿勢を追及しました。


じっくり従事できる雇用こそ
「科学・政策と社会研究室」代表 榎木英介さん
研究者の任期制は以前からあり、大学では若い教員も任期制になってきています。次のポストを探しながらの研究では、じっくり取り組むことができません。声を出すにも上げられない人はたくさんいると思います。
2013年の労働契約法改正時、多くの人が指摘した上限10年による雇い止めが起こっています。雇用者の意向で非正規労働者が安心して働く環境作りが阻害されており、研究者や職員の声を反映させる仕組みがないことが大きな問題です。
研究者が安定的に仕事ができず、苦しむ状態が続けば、理研に限らず日本の科学技術の発展、維持が困難になることが考えられます。
現在、日本の科学・研究のレベル、質、量が低下し、科学論文の引用数が減っているなど影響が出始めています。
研究予算では、安定的な予算ではなく、プロジェクト雇用型という時限的な予算が増えており、研究者は成果が出やすい目先の研究計画を立てざるをえません。
また一部の大学だけに手厚く支援する「選択と集中」の予算によって、研究者同士の競争がさらに激化する恐れがあります。このままでは一部の研究分野のみが突出し、周囲はやせ細った状態になってしまいます。不安定な雇用が続けば新たな人材が集まらず人材育成の低下にもつながります。悪循環によって新しい画期的な知見を生み出す研究成果が出にくくなります。
本来はじっくり研究できる任期のない雇用のポストを増やすべきです。一部がとがった山でなく、すそ野が広い分だけ高い山になるように、たくさんの研究者が多様な研究に安定して従事できる環境づくりが重要です。

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月18日付掲載


今回の雇い止めで理研の生命機能科学研究センターの神戸の施設では、ビル1棟丸ごと解散に。
「基礎研究は10年どころか倍以上かかることもあります。長年続けてきた研究を断ち切ってしまえばその芽をつぶしてしまいます」
今後、上限10年の雇用が続けば成果が出やすい研究をする人が増え、基礎研究をしっかりできる環境ではなくなるとBさんは懸念。
理化学研究所労働組合(理研労)の金井保之執行委員長は「理研では10年、20年と非正規で研究所を支えてきた研究職や事務職の人たちがたくさんいる。労働契約法の趣旨にのっとれば、みんな無期にすべき」
研究に必要な職員が2000人規模でふてえているのだから、任期制でなくって、期間の定めなしの雇用にすべきです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

住まいの貧困“日常化”―セーフティネットの抜本的改善求め集い 公営など10年で11万戸減 年金で暮らせる家賃に

2022-04-19 07:08:56 | 政治・社会問題について
住まいの貧困“日常化”―セーフティネットの抜本的改善求め集い 公営など10年で11万戸減 年金で暮らせる家賃に
社会の高齢化や貧困・格差の拡大にコロナ禍が加わり、高齢者は先行きの暮らし、とりわけ住居をめぐって不安を募らせています。先月、東京・参院議員会館で、公的賃貸住宅と住宅セーフティネットの抜本改善を求める院内集会(国民の住まいを守る全国連絡会など3団体主催)を開催。現状と問題点を指摘する発言が相次ぎました。(青野圭)

「生活困窮者支援を28年間続けていますが、世代も性別も国籍も超えて、住まいを含む生活困窮がこれほどまでにあふれている状況を見たことがありません」。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人の稲葉剛さんが、“貧困の日常化”の現状を語りました。

炊き出しはしご
「炊き出しには、賃貸住宅にお住まいの方が増えています。家賃は削ることができないので食費を削っていると思われます。炊き出しをはしごして何とかしのいでいる方、子どもさん連れの方も珍しくありません」
国と地方自治体は「住宅を整備し、これを住宅に困窮する低額所得者に対して低廉な家賃で賃貸」(公営住宅法)することを求められています。
住まい連代表幹事の坂庭国晴さんは、国が「住宅セーフティネットの根幹」と位置づける公営住宅(2020年現在、約214万戸)が「この10年間で約3万3700戸削減された」と指摘。
同様に「重要な役割を担う」とされる公社住宅とUR住宅も、それぞれ約3万2300戸、4万3300戸減っています。とくに、「維新の会」が府政を握る大阪では、公社住宅を9572戸も削減しました。
住宅に困っている人の“入居を拒まない”として登録するセーフティネット住宅は72万654戸(3月15日現在)。しかし、すぐに入居できる専用住宅の空き室は3091戸(登録総数の0・4%。東京都は353戸)しかありません。
国や自治体が行う経済的な支援策「家賃低廉化」を実施したのは、この3年半で37自治体・369戸。東京都では4区1市だけ。「改正・住宅セーフティネット法はほとんど機能していないのが実態です」(坂庭さん)



東京都内の公営住宅


神戸市須磨区のUR名谷団地

入居倍率250倍も
東京都に約26万戸ある公営住宅の自治会と住民でつくる、東京都公営住宅協議会の会長を務める小山謙一さん。この間行われた入居募集など、都営住宅をめぐる現状を紹介しました。
都心から離れて入居倍率が低い所もある一方、昨年11月の募集では、豊島区「南大塚二丁目」で218倍、墨田区「文花一丁目」250倍などの高倍率も。同5月分では、「北青山三丁目」のたった1戸に579人が殺到しました。
都営の平均家賃は2万3000円(16年)。民間は同8万9600円、都営の4倍です。都営では8割以上が4万円未満の家賃で暮らしています。民間で家賃4万円未満はたった5%。「夫婦で年金が10万円未満の方もたくさんいらっしゃいます。これではまともな暮らしはできません」
石原慎太郎都政誕生翌年の00年以降、建て替えはするものの、都営住宅の新規建設は1戸もありません。今年度予算でも、自民・公明両党と都民ファーストは新築を認めませんでした。
さらに、東京維新の会は、昨年の都議選で「公団公社の民営化・都営住宅は全て民間売却又は民間委託」を公約に掲げるなど都営廃止の立場です。


居住保障へ転換を―東京都の計画批判
和洋女子大学名誉教授の中島明子さんが、東京都住宅マスタープラン案(都の住生活基本計画)について詳しく紹介しました。
少子高齢化の急速な進行や単身世帯の増加など「住宅事情の厳しさの一端が浮き彫りになっている」と指摘する一方、「コロナ禍で深刻となった住宅困窮者の持続的対策になっていない」と指摘しました。
日本の住宅政策は、もともと住居保障(住居の権利)の視点に乏しいうえに、「自助・自己責任と市場主義」の新自由主義的政策が展開されたと指摘。
1992年制定の東京都住宅条例には家賃補助が明記されていましたが、2006年の改定で削除されました。
「長期化するコロナ禍で、ますます住居に困窮する人が増えるなか、①低家賃で質のいい公的住宅を増やす②住宅費負担軽減=家賃補助こそ実施すべきです。自助でうまくいかなかった人をすくう住宅セーフティネットではなく、だれもが住居を確保できる居住保障に転換すべきです」

「しんぶん赤旗」日刊紙 2022年4月18日付掲載


生活貧困者への援助・炊き出しには、賃貸住宅に住まいの方が増えています。家賃は削ることができないので食費を削っていると思われますと。
しかし、この10年間で公営住宅は約3万3700戸削減。公社住宅とUR住宅も、それぞれ約3万2300戸、4万3300戸削減。
我が神戸市の市営住宅もエレベーターの無い1980年以前建築の住宅の追い出しを計画。許されません。
昨年、僕が引っ越してきたUR名谷団地は、1978年に造られたということですが、今でも空き家補修が行われています。心強いことです。
URでは比較的家賃の安い名谷団地などを継続して維持して欲しいものです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ウクライナ報道に触れる子どもたち 「戦争だめ」おとなの言葉が大事

2022-04-18 07:27:52 | 国際政治
ウクライナ報道に触れる子どもたち 「戦争だめ」おとなの言葉が大事
破壊し尽くされたウクライナの街。子どもを含む民間人の犠牲…。ロシアによる侵略の惨状が日々報じられています。痛ましい現状を目の当たりにした子どもたちにおとなは何ができるでしょうか。自身も空襲を生き延びた臨床心理士の横湯園子さん(中央大学元教授)に聞きました。
本吉貴希記者


臨床心理士・中央大学元教授 横湯 園子さん


ウクライナ侵略の報道にふれて、以前相談を受けていた子どもたちの保護者から「どうしたらいいでしょう」と連絡がきます。私は私の感じたことを伝えています。
太平洋戦争の末期、私は5歳になる直前に静岡県の沼津大空襲(1945年7月17日)を経験しました。弟を背にした母に手を引かれて、私は火のなかを逃げました。
真夏だったのに、小川に逃げたからすごく寒くて震えていました。あるおばさんが「おいで」と言って、私を抱きしめ温めてくれました。怖さとともに、おばさんの温もりや優しさを、いまでもちゃんと覚えています。
沼津は市街地の約90%が焼失し、私たちの家も焼かれました。浜辺の千本松原には累々と焼死体が並んでいました。そこに一人の男の子が来て「モンペをはいた女の人を知りませんか」と聞きました。浜辺に避難していた知らないおじさんが「その人はみんなが連れて帰ったよ。きっとあなたのお母さんだよ」と言いました。私はこのときの光景をいまもまざまざと覚えています。
私はウクライナの惨状や避難する人たちを新聞やテレビで見ると、空襲のときの出来事が現在進行形で思い出されます。
不安で眠れなくなります。

無理に聞き出さず自分の思い語って
子どもたちも不安や怒りを感じていると思います。思春期の子どもたちはとくに自分の気持ちを語らないと思います。語ることを拒否しながら、ずっと考えている子は多いでしょう。親に話す子でも、全部を語ってはいないと思います。その子たちに無理に聞き出す必要はありません。
おとなは一緒にニュースを見ながら、自分の感想をぽつんと言う。「ひどいね」「許せないね」「日本に避難してきたら助けてあげたいね」など…。世界にはウクライナの市民を支援している人たちがいることや、戦争反対の声を上げている人たちがいることを伝えるのも大事です。
日本も太平洋戦争のときに攻撃され、家を焼かれ、暮らしを壊されたと伝えるのもいいでしょう。私でしたら沼津大空襲のときのことを語ります。



スロバキアのコシツェ駅で到着したばかりのウクライナ避難民を待機所に誘導するボランティア=4月13日、コシツェ(撮影・石黒みずほ記者)

いつかきっと思い出し、考えてくれる
残酷な映像の時は「消すね」と声かけ
あまりに残酷な映像で、見せたらいけないと思うことはあるでしょう。そのときは「あまりにひどいからテレビを消すね」などと声をかけるといいでしょう。子どもが不安と恐怖にあるとき、おとなの言葉で安心できることもあります。
私は当時の場面やおとなの言葉を一つ一つ覚えています。ウクライナの現状は、子どもたちに映像とおとなの語りかけた言葉が焼き付くでしょう。80歳を超した私が5歳のときのことを思い出すように、きっと何かのきっかけで思い出し、考え始めると思います。
私の世代は、戦争は絶対にダメで、平和憲法のなかで戦争をしないと決めた9条がどんなに大事か、体験として身に染みています。戦争体験を語る世代はもうそろそろ終わりです。9条を、戦争体験を含めて伝えていくことが、いまこそ大事なのだと思います。


不安軽視しないで寄り添って対話を
日本ユニセフ(国連児童基金)協会は「子どもとの対話のヒント」として、8点をホームページで紹介しています。(3月3日)
①子どもが何を知っていて、どう感じているかを知りましょう―。子どもと話すときは就寝前を避け、食事のときなど子どもが自然に話しやすい時間や場所を選びます。子どもの心配を軽視したり否定したりせず、不安を感じるのは自然なことだと伝えてください。



②落ち着いて年齢に応じた対応を―。すべての質問に答えられなくていいことを忘れずに。報道機関や国際機関など信頼できる情報を見つけることの重要性を説明しましょう。


③偏見や差別ではなく、思いやりを広げましょう。
④支え合う行動に注目しましょう。
⑤会話を終えるときは丁寧に―。いつでも話を聞くよ、そばにいるよと伝えてください。



⑥見守り続けましょう―。腹痛や頭痛、怖い夢を見る、眠れないなど変化がないか注意してみてください。
⑦ニュースに触れすぎていませんか?
⑧自分のことも大切に―。不安や動揺を感じたら、自分のための時間をとり、信頼できる人と話しましょう。
子ども支援専門の国際NGO「セーブ・ザ・チルドレン」も「子どもの『助けたい』と思う気持ちを応援しましょう」など「専門家がすすめる、子どもと戦争を話すときの5つのポイント」をホームページで公開しています。(4月1日)

挿絵はすべて©UNlCEF

「しんぶん赤旗」日曜版 2022年4月17日付掲載


子どもたちも不安や怒りを感じていると思います。思春期の子どもたちはとくに自分の気持ちを語らないと思います。語ることを拒否しながら、ずっと考えている子は多いでしょう。親に話す子でも、全部を語ってはいないと思います。その子たちに無理に聞き出す必要はありません。
おとなは一緒にニュースを見ながら、自分の感想をぽつんと言う。
不安軽視しないで寄り添って対話をすることが大事だと。
日本ユニセフが公開している「子どもとの対話のヒント」の8点を参考に。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする