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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

課税新時代① 米、法人増税へ転換

2021-04-28 07:25:22 | 予算・税金・消費税・社会保障など
課税新時代① 米、法人増税へ転換
政治経済研究所理事 合田寛さんに聞く

米財務省がバイデン政権の税制改革の基本的考え方を示す「メイド・イン・アメリカ・タックスプラン」を発表しました。その意義について、企業課税に詳しい政治経済研究所の合田寛理事に寄稿してもらいました。

バイデン政権の新税制プランによる税収増は、15年間で2・5兆ドル(約270兆円)と試算されています。新型コロナウイルス危機後のニューディール(新規まき直し)として、8年間で総額2兆ドル(約220兆円)を投入する「アメリカ雇用計画」を十分賄うことのできるものとなっています。

企業減税見直し
その内容は、①トランプ政権が35%から21%に下げた法人税率を28%に引き上げる②多国籍企業のタックスヘイブン(租税回避地)への利益移転による税逃れを封じる③国際的な最低税率の適用を強化する④高収益をあげながら税を支払わない企業に対して最低15%の税率を適用する⑤化石燃料産業への補助金をクリーン産業への補助金に置き換えるーなどとなっています。新税制プランの核心は、これまでの法人税制に関する考え方を根本的に転換し、新しい方向に向けることを強調している点にあります。企業課税に関するこれまでの支配的な考え方は、「企業に対する課税の強化は投資を抑制し経済成長を妨げる」というものです。
新税制プランは、トランプ政権による2017年の企業減税が経済成長をもたらさなかったことなどを例に挙げ、減税が成長を呼ぶという考えを真っ向から否定しています。それどころか、減税で過剰となった現金はさらに低税率のタックスヘイブンに移転され、国内の投資を呼び起こさなかったというのです。
数十年にわたる企業減税の結果、米国の法人税収は税収総額の10%以下に下落しています。一方、労働に対する課税は増え続け、その税収は総税収の80%を超えています。



ホワイトハウスで開かれた「アメリカ雇用計画」に関する超党派会合で話すバイデン大統領(右)=4月19日、ワシントン(ロイター)

課税逃れにメス
新税制プランは、長期にわたって続いた企業減税は、税負担を企業や資本から労働に移し、富裕者をより豊かにさせる一方、労働者に過大な負担を負わせ、不平等をいっそう拡大する原因となったとみています。法人税の増税は税収を確保するだけでなく、不平等を減じるためにも必要であり、資本にではなく、労働に報いる税制を構築する必要があると指摘しています。米国を拠点とする多国籍企業が利益を海外のタックスヘイブンに移転して巨額の税を逃れている実態にメスを入れる必要性を強調しています。
トランプ税制改革までは、多国籍企業が海外であげた利益は、米国内に還流したときに初めて通常の法人税率で課税されることになっていました。そのことが、米国での課税を逃れるために利益を海外でため込む誘因となっていました。
17年のトランプ税制によって、海外にため込まれた利益にも課税できるよう、海外であげた利益に対し、一定の控除を認めたうえで、法定税率の半分の税率(10・5%)を課す「ギルティ」という制度が設けられました。しかし、この制度によっても、多国籍企業の利益移転の誘因は減ることはなく、タックスヘイブンへの利益移転は止まることはありませんでした。
トランプ改革後、多国籍企業が利益をあげた場所のトップ10のうち、7カ所はタックスヘイブンでした。バミューダ、ケイマン、アイルランド、ルクセンブルク、オランダ、シンガポール、スイスです。これらのタックスヘイブンに海外利益の約61%が移転されていたのです。
新税制プランの特徴は、新型コロナウイルス危機後必要となる巨額の財政需要を、法人税を中心とした増税によって賄うことです。法人税率引き上げなどによって国内企業への課税を強めるとともに、利益を海外に移して米国の税を逃れる多国籍企業に対し、利益移転の誘因を封じようとするものです。(つづく)(3回連載です)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2021年4月27日付掲載


バイデン大統領の法人税増税への転換。税収の確保だけでなく、資本にではなく、労働に報いる税制を構築。
タックスヘイブンへの税収逃れを許さない。新税制プランの特徴は、新型コロナウイルス危機後必要となる巨額の財政需要を、法人税を中心とした増税によって賄う。
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