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「しんぶん赤旗」の記事を中心に、政治・経済・労働問題などを個人的に発信。
日本共産党兵庫県委員会で働いています。

許すなロックアウト解雇② 理由示さずいきなり通告 日本IBMの労働者たち

2015-10-18 11:26:55 | 働く権利・賃金・雇用問題について
許すなロックアウト解雇② 日本IBMの労働者たち
作家 田島 一さん

理由示さずいきなり通告
田中純さん(45)は、今年の3月17日の朝に、所属長から午後5時に会議室に来るようメールで指示された。定刻に指定の部屋におもむくと所属長が構えていて、すぐに部門のトップである研究所長と人事の担当者が現れた。そしていきなり所長が、「あなたの解雇を通知する場です」と述べるや、有無を言わさず解雇予告通知書を読み上げたのだった。

暴圧的な「宣告」
これまで労組役員として、多くのケースを目にしていただけに、田中さんは対処のすべを心得ていた。
「解雇理由は何ですか?」と即座に返すと、顔をこわばらせた所長は、「業績が低い状態が続いており(中略)会社は、もはやこの状態を放っておくことができない…」と記した書面を棒読みし、「就業規則第45条第2項の解雇事由に該当します」と言い放つのみで具体的な理由は示さない。
田中さんがなおもただすと、「ここは議論をする場ではありません」とかわす。解雇予告通知書は、「退職する意思を示した場合はこれを受理し、解雇を撤回したうえで、貴殿の自己都合退職を認める」と記し、退職加算金や再就職支援会社のサポートも受けられるなどの事項を連ねて、「会社と貴殿との間の雇用契約を円満に終了したいとの考えに基づくものです」と最後に締めくくっていた。
まさに、労働者の権利もあったものではなく、これは社員に対する暴圧的な「死の宣告」に等しい。その後田中さんは所属長と人事担当の監視下に置かれ、自席に戻って私物をまとめさせられた。ただならぬ様子に、「なにかやったのか?」と、犯罪者を見るような同僚の視線を感じたという。
2012年5月に、本国ドイツで辣腕(らつわん)を振るい「コストカッター」と呼ばれていたマーティン・イェッター氏が社長に就任した。そしてその年の7月以降今日まで、実に35人のJMIU組合員が解雇されるという驚くべき経過をたどっているのである。



東京地裁への提訴にかける思いを語る田中さん(右から2人目)=6月3日、厚労省

「新陳代謝」強弁
ロックアウトとは一般的に、労働争議における経営側の対抗手段としての事業場閉鎖を指す。組合員らはそれをもじって、IBMの常軌を逸するやり方に「ロックアウト解雇」と名づけた。ちなみにウェブサイトの『デジタル大辞泉』(小学館)でこれを引くと、「企業が労働者に対して、正当な理由がなく解雇を通告し、職場から締め出すこと」と明記されている。的を射た表記に感心し、私は思わずうなずいた。
自社の振る舞いがこのように辞書に登場していることを、社長はどう考えるか、聞いてみたいものだと思う。
マーティン・イェッター氏(現会長)は、解雇乱発で提訴されたことに関する取材を受け、「今起きていることは新陳代謝であり、人の入れ替わりはどこの会社でもある。これはリストラではない」と答えている。日本社会の雇用・労働環境からすると常識はずれの詭弁(きべん)であり、傲岸(ごうがん)で挑戦的態度とのそしりを免れないだろう。
(つづく)

「しんぶん赤旗」日刊紙 2015年10月16日付


たたかう労働組合の役員を狙い撃ちした日本IBMのリストラ。
それも「ロックアウト」という有無を言わせぬやり方で。
会社の言う「新陳代謝」などという詭弁は許されません。
コメント
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