仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

聖徳太子から出雲へ:目まぐるしく休暇が始まる

2008-08-07 17:51:20 | 生きる犬韜
勤務校の春学期業務がある程度終了したところで、8/2(土)には大山誠一さん主催の『日本書紀』研究会の例会があった。今回は3月に刊行された『アリーナ』誌の合評会に当たっていて、岡山から曽根正人さんや八重樫直比古さんも駆け付け、主要メンバーがほとんど顔を揃える盛況となった。ぼくは瀬間正之さんの執筆分、「所謂「推古朝遺文」について」を担当。瀬間さんの詳細な調査と強固な論理は、素人がなかなか批判できるものではないので、全体の要旨をまとめたほか、「仕奉」表記成立の政治性について蛇足のコメントを付し、古韓音をはじめとする朝鮮半島由来の漢文訓読・記述法について研究の現状を紹介するに止めた。前者は現御神天皇の創出とも関わるし、後者は一般官人の駆使したコトバの実態を浮かび上がらせてくれる点で、ぼくの史官研究においても重要な意味を帯びてくる。国語学の展開には、今後も大きく注意を払っておかねばならない。
研究会終了後の飲み会では、藤井由紀子さんと、最近気になっている〈月〉の話で盛り上がった。藤井さんは以前から月に注目していて、月見の名所を訪ねる旅をしているという。実証はとりあえず措いておいて、前近代の人間たちが風景とどのように感応し信仰を築いていったか、ぼくら自身が追体験する会を開きたいね、などと夢想した。大山さんとは、渡辺誠さんの縄文研究を手がかりに日本社会、日本文化のありようについて意見交換。大山さんは、最近のセンセーショナルな研究で誤解が広がっているけれど、社会や文化のものの見方については案外ぼくと近いところに立っているのかも知れない(失礼な書き方でごめんなさい)。なんと、アジア民族文化学会の理事でもある(ぼくも会員です)。『書紀』についてはもちろんだが、今後、この方面でもいろいろご指導を仰ぎたいところだ(温かいひとで、この日も「今日は北條君が元気そうなんで安心したよ」と言葉をかけてくださった)。ここまで、最近の関心事がいい形で人間関係にも繋がってきている。この日の朝も、某大学で使われる教科書の執筆について依頼をいただいたのだが、なんとテーマは「鎮魂」であった。現行本でその箇所を担当されたのがかなりのビッグネームなので、後を襲うのにはそれなりの緊張感が伴うが、この死をめぐる流れを断ち切ってしまうのは惜しい。1月までの仕事で、卒論の審査のことを考えるとけっこう大変だが、引き受けようという気持ちになっている。

翌日は、午前中に金沢文庫の特別展を観てから、買い物・準備をして慌ただしく出雲へ出発。今回は、鉄道マニア垂涎?のサンライズ出雲での夜行となった。冒頭の写真がその勇姿である。ぼくの乗ったのはシングル個室で、さほど広くはないものの不自由もない。有料でシャワーも使うことができ、エアコンも付いていて快適である。現地の情報をいろいろ回してくださった森田喜久男さんと連絡を取り、コピーして持っていった特講のレポートを幾つか読んで眠りについた。翌朝5時頃に目が覚めると、なんとなく首に違和感があり、妙に肩も凝っている。少し体を動かし、出雲入りの気構えを整えた。まずは米子に到着、学生たちと合流して鰐淵寺へ参詣する手筈になっているが、その詳細はまた次回に書くことにしよう。
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