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仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

古代文学会シンポへむけて

2006-05-29 05:37:14 | ※ 環境/文化研究会 (仮)
今日も夜明けに立ち会ってしまいました。
講義の準備が未だ終わらず、昼までに片付けなければならない事務作業もある。疲労のかさむ毎日ですが、ここのところ、1週間の睡眠時間も20時間を切っています。夏休みが待ち遠しいですが、8月も土日以外は(大学とは別の理由で)9~19時と予定が入りそうなので、秋まで現在と近い状態が続くことになります。それほどストレスが溜まっているわけではないのですが、「保つかなあ」という漠然とした不安もアリ。まだまだ忙しい人たちはたくさんいるわけですが、う~む、情けない。

27日(土)は私の誕生日、年男ですので36歳になりました。しかし、誰から祝ってもらうでもなく、環境/文化研究会(仮)の5月例会に参加。中澤克昭さんと私が対論する古代文学会シンポの前哨戦だったのですが、上記のような毎日が続いているのでレジュメ作成はほぼ一夜漬け。構想は少しずつ練っていたのでなんとか形にはなったものの、中澤さんの完成度に比べればまだまだ。言い訳に終始した報告となってしまいました(でも、ここで一度まとめておかなかったら、本番に間に合わせることができなかったかも)。ですが、歴研等々と重複しているところ、わざわざ集まってくださった皆さんのおかげで、どうやら本格的にやる気が出てきました(今までなかったというわけではなく、頭が完全に切り替わってきたということです)。木鎮めを送りとして捉えなおすこと(以前、環境/文化研究会のMLでも議論していたのでした)、樹木との交感や痛みの対象化など、修正すべき点・補足すべき点も議論のなかでみえてきました。互酬性の楽園についても、もう少し慎重かつ根本的な批判を考えてみたいところです。そこをちゃんと押さえておかないと、単なる衰退史観にみえてしまうので(「初めに楽園ありき」ではなく、「初めから破綻ありき。緊張と対立、正当化ありき。しかし交感と痛み、共振ありき」でしょうか)。

monodoiさんよしのぼりさんなど、すでに感想を書いてくださっている方もいらっしゃるのですが、私自身のちゃんとしたまとめは本番終了後となりそうです。MLへの投稿もそれから、ということでご容赦ください。
とりあえずは、体調のお悪いなかご参加いただいた岡部隆志さん、いろいろご指摘いただいた中村生雄さん、武田比呂男さん、工藤健一さん、三品泰子さん、小野紳介さん、monodoiさん、山口えりさん、よしのぼりさんに感謝。何より中澤克昭さんには、うまく噛み合う話題へ持ってゆけず、申し訳ないことをいたしました。今週どこまで修正できるか分かりませんが、面白がっていただけるものを構築してゆくつもりです。
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GW最後の闘争

2006-05-17 13:28:41 | 議論の豹韜
6~7日というGW最後の土日、いろいろな場所へ出現するために、やむをえず強行軍のスケジュールを組みました。

まずは土曜日。古代文学会連続シンポジウム〈古代文学研究の最前線〉の2回目、「霊性論―霊魂の世界性について―」へ出席しました。報告は、安藤礼二さんと津田博幸さん。遅刻したため安藤さんの発表は聞けませんでしたが、論理的には理解しえない文学のあわいを霊性の問題として捉えなおす、津田さんの刺激的な議論は拝聴。ただ、近年の歴史の物語り論でもテクストの外部へそうした役割がふられたように、霊性が万能のブラック・ボックスになってゆく危険性が見え隠れしていました。個人的には、霊性論は、社会や共同体を相手にしてきた従来の宗教学、人類学が振るい落としてきた、神的なるものと主観的セルフとの繋がり、葛藤を対象化するために提起されたと考えています。ですから、世界性や普遍性をテーマとする場合、「誰がみすえたものなのか」をちゃんと措定しておく必要があるでしょう。その点今回は、報告にも質疑応答にも、多少の混乱があったようにみえました。ただそれにしても、古代文学会の熱気と議論の奥深さはいつもながら。安藤さんと岡部隆志さんのやり取りなど聞き応えがありました。
例会終了後は、中澤さんと私の発表するシンポ第3回、「環境論―動植物の命と人の心―」についての打ち合わせがありました。対論の鍵は後ろめたさと快楽。人間が他の生命を犠牲にするとき、後ろめたさを感じるのか快楽を覚えるのかという、およそ歴史学ではアプローチしえないような難問です。中澤さんも私も、「人間は罪深いものだ」という点ではベクトルが一致しているのですが、中澤さんがさらに人間をラディカルに捉えてゆくのに対し、私はどこかに希望を見出そうとしてしまうようです(宗教者ですから)。
それにしても、以前このブログでも触れた、対称性社会の理想化は問題視したいですね。神話にも歴史があり、決して無時間に閉じられてはいません。禁忌はやぶられて破綻が訪れます。だとすれば〈対称性〉とは何なのでしょう。対称的な両項は置換可能であっても、そのものとして実体化されており、関係は対立的に固定されているのではないでしょうか。だとすれば、関係を創出する分節のあり方自体を、問わなければならないように感じます。まあ、中沢新一の議論への理解もまだ浅いので、もう少し勉強してみましょう。

さて、実は7日も午後からシンポの勉強会。古代文学会の主要メンバーが、中澤さんと私の研究を分析してくださるというので、ぜひにと参加を表明しました。その前に、この日で終了となる歴博の企画展「日本の神社と祭り」を観るため、6日夜は妻と西船橋の三井ガーデンホテルに宿泊、ゆっくり休んで?早朝の佐倉に到着しました。
展示室では、最終日ということもあり、責任者の新谷尚紀さん自らが解説に立たれていました。「隔絶したキリスト教の神に対し、日本の神はより身近な存在。だから食事や着物、調度品を差し上げるのです」と、(実は)かなり突っ込んだ説明。そういえば先日の研究集会でも、〈人格神化〉の過程が話題に上っていました。食堂では、研究会をご一緒している小峯和明さん、山口えりさんともお会いしましたが、お二人とも家族連れでいらっしゃいっていた様子。研究者の家庭が交錯する休日の博物館……という感じですが、そういえばこちらも家族連れなのでした。

ランチの後は、そのまま帰宅する妻と別れて新宿へ。歌舞伎町のルノワールで、再び古代文学会の方々と合流しました。担当の飯泉健司さんが手際よくまとめてくださったレジュメを前に、中澤さん、岡部さん、猪股ときわさんらとあれこれ意見交換。相手が動物にしても植物にしても、人間が暴力的に領域を侵犯してゆくことに変わりはないので、「戦争論とどう関わらせるか」という議論も出ましたね。相手の命を奪っているという実感が除去されることで、ヒトの残酷さは増してゆく。当たり前のことですが、日本が賛成した戦争で死傷した人の痛みを共有できない私たちと、場で鉄針を打ち込まれる豚の悲鳴を聞けない私たちとは、同じ地平に立っていることになります。私たちは、他者のポジションに対する想像力をどこまで持つことができるのか。それが人間でなく、存在論的に異なる動物、植物の場合はどうなのか……。自分のなかの不明瞭だった部分も整理でき、何を話すべきかもまとまってきました。皆さんありがとうございました。また、環境と心性に関するアプローチの先駆者・中村生雄さんが、これを契機に古代文学会に参加、私たちの環境/文化研究会にも、岡部さんと一緒に出席してくださることになりました。お二人はいうまでもなく、かの供犠論研のメンバー。岡部さんは武田比呂男さんと同じく、平野仁啓さんのお弟子さんでもあります。以前、シャーマニズムの研究会〈ふの会〉でご指導をいただいていました。歴史学の閉鎖性を批判しつつ、無意識下ではその方法を擁護していた私のアイデンティティを、完全に?打ち砕いた研究会です。かなり苦しかったですが、強く印象に残ってもいます(何度目かの飲み会のとき、「エコロジーも究極的には人類の生存を優先する欺瞞に突き当たる。苦しいね」と仰っていたのを想い出します)。緊張しますが、これからますます面白くなりそうです。

写真は、3月に購入した睡虎地秦簡の史料集。これに載る「日書」甲種に書かれた災禍への処方箋のひとつ、「髪を解く」が樹木伐採と関係するんですよね。
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萬斎、転落?

2006-05-04 22:36:52 | 劇場の虎韜
GWといえど、世間様のように浮かれてはいられません。6・7日(土・日)には、古代文学会シンポの打ち合わせと勉強会。来週11日(木)には、J大学のコミュニティー・カレッジで平将門の話をすることになっているのに、その準備もまったくできていない。校正に入ろうとしている『日本災害史』は、出版社から「ヴィジュアルに配慮して分かりやすくしたい」とのお達しで、写真・図表を用意しなければならない始末。遊べる日などまったくない状態。しかし昨日の3日(水)は、かねてからの予定どおり、野村万作・萬斎親子の狂言を観に、練馬文化センター(リニューアルのこけら落とし公演)まで足を運んだのでした。いつものようにチケットを手配していただいた、野口華世さんとお姉さんに感謝します。

さて、妻をせかしながら、湘南新宿ライン・西武池袋線を乗り継ぎ練馬駅に到着。文化センターは駅の真ん前で、間違えようもありません。近くのマックで簡単に食事を済ませ(妻はビッグマック。私はフィレオフィッシュしか食べるものがありません)、ぎりぎりで着席。野口さんもほとんど同時の到着で、お姉さんひとり、誰も現れないのでしばらく心細い思いをなさっていたようです。

本日の番組は、万作氏による「三番叟」と萬斎氏の太郎冠者による「鬮罪人」。卜占と木鎮めを専門にする(?)私にとって、こけら落としで「鬮」関係というのは、何ともご縁を感じる舞台です(ちなみに、こけら落としは、山の神や木霊の力の宿る木屑=コケラを払い、建物を人間のものにする祭儀。「鬮」字は、亀甲を焼いた罅から吉凶を占う亀卜に由来します)。
まずは「三番叟」。これを初演すれば狂言役者として一人前という舞楽。若くして「三番叟」を演じたことを武器にしたがるどこぞの宗家を意識してか、萬斎氏の解説は、これが神になり代わる神事であることを強調。20年前の練馬文化センター開館時にも、練馬在住であった万作氏が祝いの三番叟を舞ったとか。こちらも襟を正して鑑賞。みごとな気迫の舞、笛と鼓の音色に圧倒されましたが、踏み鳴らす律動のあまりの心地よさに、何となく眠気が……。不謹慎でしたが、これもご利益ということで(?)赦していただきましょう。
次は「鬮罪人」。祇園祭にいかなる山車を出すかをめぐる相談で、太郎冠者が、地獄の鬼が罪人を責め立てるかたちを提案。くじ引きで鬼を演じることになった太郎冠者は、同じく罪人をする羽目になった厳しい主人に、日頃の鬱憤をぶつけるという内容。町衆を演じる野村家一門の役者陣、息がピッタリ合って、「集団芸の面白さ」をよく出していました。シテの萬斎氏はというと、ひとり派手に飛び跳ねて面白いのですが、全体と調和しておらず、何となく力んでいる感じがしました。勢い余って、危うく能舞台から落ちそうになる場面も……。個人的には大好きな俳優さんなのですが、狂言については、最近少々批判的な眼でみてしまいます。がんばれ!

観劇終了後は、近くの喫茶店「カフェ・ド・パリ」でお茶。本格的な喫茶店なのですが、内装がどうも怪しい。夜9時を過ぎると、キャバレーに早変わりするのではないかという派手さ。おぎやはぎの矢作のような男性店員の、すばやいがぞんざいな対応(注文の受け答え、カップの置き方、お冷やの注ぎ方など)も妙な雰囲気。誰か、夜に行って確かめてください!
帰り際、池袋でリブロとジュンク堂に寄り道。妻は、野村育世さんの新刊で、目次に名前まで書かれて!批判されている(つまり、妻の論文を批判する章が設けられているわけ)のをみて大ショック。私も、自分が準備中の論文とだぶる文章が、最近刊行されたことを発見。鬱憤晴らしに、野口さんと3人で「光麺」池袋東口店へ。おいしいラーメンをいただいて、麺と一緒に気分もほぐしたのでした。
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寸言2

2006-05-04 19:29:16 | 議論の豹韜
先の赤川さんの話、わりとみて驚いた人が多かったみたいですね。幾つかトラックバックもいただきました。ありがとうございます(この赤川さんの主張は、ネット上でテクスト化されていましたので、正確にはそちらを)。
それにしても「視点・論点」、明け方にみることが多いのですが、時々眠気もぶっとぶ話を聞けることがあって個人的にウケています。3月末にも猪口孝さんが、「親が娘に期待することに関する国際アンケート」を資料に、日本と他国の相違について語っていたのが凄かった。日本では、「しっかりした技術を持って自立せよ」的な期待が少なく、「みんなに可愛がられる人になれ」的な期待が大きいとのこと。その現状を、家父長制的規制の残存云々で片付けるのではなく、裕福な日本/貧乏な他国の経済的格差に収斂してしまう内容の凄さ。しかし、いちばん感動(?)したのは番組の結びで、「……というような結果を考慮して、これからの女子教育を組み立てていっていただければ、私は幸せです」。……奥様もきっとお幸せでしょう。
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寸言

2006-05-02 07:53:56 | 議論の豹韜
徹夜でゼミの準備をしていて、息抜きにテレビの電源を入れると、NHK「視点・論点」に東大の赤川学さんが出ていました。いわずと知れた構築主義系社会学者ですが、「少子化社会 私の提言」というタイトルで語っていることとは、「高齢者の年金を削って財源を確保し、公平で選択の自由のある、美しい滅びのかたちを目指しましょう」! いや、赤川さん的には普通なんでしょうけど、NHK的にはどうなのよ?
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