仮 定 さ れ た 有 機 交 流 電 燈

歴史・文化・環境をめぐる学術的話題から、映画やゲームについての無節操な評論まで、心象スケッチを連ねてゆきます。

上智大学文学部主催・ジャパノロジーシンポジウム「開かれたジャパノロジーの可能性」

2017-03-04 00:00:00 | ※ 告知/参加予定
東日本大震災以降の日本の政治・経済・社会・文化のありようをみると、かつて真剣に議論されていた地方分権の強化、道州制、首都移転などの問題提起は影を潜め、中央化・画一化が急激に進行している。グローバリゼーションの概念は空回りし、内向きに閉じたなかでの幻想の平穏、まやかしの幸福感が蔓延しつつある。メディアは国権を批判することを止め、テレビには自画自賛の「日本礼讃」番組が横行している。人々は〈日本〉に関心を持ち、〈伝統〉に目覚めたかのようにみえるが、それはステレオタイプの虚構の再生産でしかない。1933年、国際連盟脱退後の日本社会には、「勤勉な日本人」「世界に冠たる日本文化」「世界で活躍する日本の偉人たち」といった言葉が溢れたが、それは帝国日本の国際的孤立を隠蔽する言説に過ぎなかった。福島や沖縄を切り捨てて他者に目を閉じ、ヘイトスピーチ的攻撃性が蔓延する現在も、その時代と類似する危機的な情況にあるのではないか。
上智大学のジャパノロジーでは、これまで、ステレオタイプの〈日本〉を相対化し、新しく多様な〈日本〉を再発見し、創造することを目指して、各種シンポジウムの開催やカリキュラム構築を行ってきた。その方向性は、現代と切り結ぶ人文の学として、未だ有効性を保ちえているだろうか。本シンポジウムでは、教育イノベーション・プログラム「比較日本文化研究(ジャパノロジー)における領域横断型人文学プログラムの開発」の3年間を振り返って成果と課題をまとめ、現代社会を批判的に捉えるジャパノロジーの可能性を、教育と研究の両面からあらためて問うこととしたい。具体的には、本学教員がこれまでの取り組みを具体的に振り返り(大塚報告)、留学生の観点からみたジャパノロジーへの関心や現実を俯瞰したうえで(山内報告)、招聘報告者の山崎雅弘氏、野田研一氏により、ジャパノロジーの歴史が孕む問題性、未来が内包する可能性を提示していただき、意見交換を行う。
日本研究に関心を持つあらゆる人々に、議論の輪に加わっていただきたい。

【報告者】
大塚寿郎(上智大学文学部長、英文学科) / 山崎雅弘(文筆家、近現代戦史研究家) / 山内弘一(上智大学大学院文化交渉学専攻主任、史学科) / 野田研一(立教大学名誉教授、アメリカ文学・環境文学研究)

【ディスカッサント】
長尾直茂(上智大学文学部国文学科) / 寺田俊郎(同哲学科) / ドゥッペル・メヒティルド(同ドイツ文学科) / シュワルツ・ロール(同フランス文学科) / 北條勝貴(同史学科)

【タイム・スケジュール】
13:00  開場
13:30  開会挨拶・趣旨説明
13:40  報告① 大塚寿郎
     「上智大学文学部ジャパノロジーコースの成果と課題」
14:00  報告② 山崎雅弘
     「政治に従属した戦前の日本研究とその反省」
14:20  報告③ 山内弘一
     「中国人留学生(大学院)の研究テーマとジャパノロジー」
14:40  報告④ 野田研一
     「〈異化〉の思考運動としてのジャパノロジー」
15:00  休憩
15:15  パネルディスカッション
     「研究・教育のツールとしてのジャパノロジー」
16:15  閉会挨拶

※ 当日は北門が閉鎖されていますので、正門よりお入り下さい。
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