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少し明るくなってきた空をみると、次第に低くたれ込めた雲が浮かびあがってくる。今日も曇りだろう。でも、曇りの日も嫌いじゃない。何かが起こりそうな気配、予感がある。
子供の頃、山の上の学校へ登ってゆく途中、みあげた先に空だけが覗く階段があった。快晴には何も感じないのだが、ときおり灰色の薄い雲の層が、幾重にも重なって流れるようにみえる日もある。そんなときは、階段を登ったその先に、いつもとは違う風景が広がっているような気がしたものだ。
涼を採るため、少し開けていた窓を押し開くと、ひんやりした空気とともに、濃い緑の香りが流れ込んでくる。ヨーロッパの方で、「月は夜露のもたらし手である。ゆえに、植物は夜に育つ」という民間伝承があるのを思い出す。明け方、ぼくと同じような経験をした人々が、これまで本当にたくさんいたということだろう。
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……ふと気づくと、空もみるみる明るくなってきている。思ったより晴れるかも知れない。