日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

ママがプールを洗う日

2005-12-16 06:58:00 | 読書生活
こんな人を食ったようなタイトルの短編小説集だが
実は自分にとっては大学時代から何度も読み返している
バイブルみたいな書物。何がいいかって、実際よく
分からないんだけれど。確かにスポーツライターとして
名高い山際淳司の翻訳はこなれていてツボを抑えている
んだけれど、それ以外に何か文学的価値が高いとか、
斬新なスタイルとか、そんなことはない。

どちらかというと、途中からからパラパラ読んで、
最後まで行かないうちに読みやめてしまったり、
何ページも飛ばしてよんだり、そんな読み方ばかりしている。

舞台はアメリカ。決して貧乏でもない、でも裕福でもない
すごい不幸でもない、でも現状に満足しきれていない
ミドルクラスの子供や若者が主人公。
ある短編の中で主人公が自問する。

たまに僕は間違った育ち方をしたんじゃないかと
思うんだよ。幸福に育ちすぎたのさ
~「夏・ポートランド」より

虚無感や浮遊感があちこちにあふれている短編小説が
ぎっしりつまっている。それぞれが自分なりに悩んだり
するんだけれど、その存在のつかみどころのなさゆえ
中途半端な風景しか人生に描けない。
多分僕自身、中途半端な人間だし、中途半端なことしか
やってきていないから惹かれるんだろうか、この本に。

何もかもが違って見えるわ、とジョーンは思う。
酔っ払っていて、あたりは暗く、風が吹いていて、
人生に変化が訪れようとしているときには。すべてが
違って見えるのだ。彼女はとにかく町に戻って、
もう一度やりなおしたかった。
               ~「結婚と異教徒」より


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