日々の泡盛(フランス編)

フランス在住、40代サラリーマンのどうってことない日常。

ジョルジュ・ルオーのこと

2014-11-10 22:54:06 | フランス
ルオーの宗教画は実は個人的にはずっと昔から好きだった。
どうしてルオーの絵を知ったのか今となっては覚えていないが、
たぶん、高校の美術の教科書か何かで最初に知ったのかもしれない。
そのあと、一人でフランスに旅行したとき、ポンピドーセンターの
常設展にひっそりと、しかし確かな存在感を示しているルオーの絵や、
実家の近くの石橋美術館に所蔵されていたルオーの「郊外のキリスト」
の絶望的なタッチに昔からあこがれていたかもしれない。

そして、この週末、フランスは連休だったので、一人気が向いて
ランスまでぶらっと行ってみた。実は、僕はランスには一度も行ったことがなくて、
なんだかシャンパーニュとかのブルジョワジーなイメージで
結構この町を敬遠していたのかもしれない。

町自体はやっぱりブルジョワな感じだったのだが、町の中心部の美術館で
戦争をテーマとした企画展をやっていた。この町には戦争の記憶があちこちに残っている。
有名な大聖堂にいけば、独仏戦で破壊された大聖堂の写真展をやっていたし、
この美術館の展示もまさに、第一次大戦の記憶をもとに戦争と絵画、芸術を
これでもかとばかりに展示している。ある絵では戦争で破壊された町の絵画、
そしてあるセクションでは戦場で、まさに最前線にいる兵士たちの絵、といった感じだ。

でも一番、僕の目をひいたのは、このルオーの小さな版画だった。

Au pays de la soif et de la peur

渇きと恐怖の国で

とタイトルが投げやりにつけられている。でも見ているだけで、なんだか
心の中をえぐられるような感覚を覚える。戦争の中で、どんなよりどころも失い、
ただのどの渇きと、人生や世界への恐怖の中でどうすればいいのかわからないまま
船に乗っている人。
せっかく大聖堂でシャガールの
ステンドグラスなんか見てきたんだが。こうやってジョルジュ・ルオーは
僕の知覚に一石を投じるんだな。「郊外のキリスト」もひどい絶望的な絵だったけど、
この絵もひどい。