く~にゃん雑記帳

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<平城宮跡資料館> 秋期特別展「地下の正倉院展」

2021年10月23日 | 考古・歴史

【今年のテーマは「木簡を科学するⅡ」】

 奈良文化財研究所の平城宮跡資料館(奈良市)で秋恒例の特別展「地下の正倉院展」が開かれている。2007年の第1回から数えて15回目。今回は2014年の「木簡を科学する」の第2弾として「木簡を科学するⅡ」をテーマに掲げる。木簡は文字資料としてその解読に注目が集まりがちだが、モノ(木製品・木質遺物)としての側面から最新の分析・調査の成果を紹介する。会期は11月7日まで。

 奈文研が保管する木簡は「長屋王家木簡」など平城宮・平城京出土の木簡を中心に30万点近くに上る。1000年以上の時を経て出土した木簡は乾燥に弱く脆い。その保護のため同資料館で常設展示する木簡もほとんどがレプリカで、この特別展は一般客が実物を目にできる数少ない機会になっている。今展は「木簡の年輪を測る」「木簡を複製する」など5章で構成。前後期合わせて45点の木簡を展示する。この中には「長門国からのワカメの荷札」など国宝と重要文化財各3点も含まれる。

 木簡は材の切断面から柾目材と板目材に分かれ、年輪と直行する方向に切り出された柾目材には緻密な年輪が横方向に多く走る。年輪には土地の気候に応じた年輪曲線が刻まれており、その詳細な分析は産地や同一材の推定などにつながる。そのため奈文研では年輪年代分析に力を注いでおり、実際にその成果が表れてきた。柾目材の薄い削屑9片が同じ材から削り取られていたことが分かったり、他の削屑5片も同一材と判明して文字の解読につながったりしているそうだ。

 「木簡を複製する」のコーナーには3セットの本物と複製のレプリカが隣り合わせで並ぶ。複製の手法は①書家が材に直接文字を書く(写真)②古色加工などを施した材に木簡の写真を直接焼き付ける③文字を熱転写用紙で材に印刷する――と、3セットとも異なる。ただ、「実物」「レプリカ」の表示がなければ、どちらが本物か判断に迷うものも。現状では熱転写による手法が墨の濃淡や滲みなども含め最も実物の再現度が高いという。

 木簡には再利用のため墨書した表面を削り取った削屑が多く含まれる。それらの薄いペラペラの削屑の保管方法は? かつては薄いガラス板に挟んだり、伸縮性のあるフィルムに挟んだりしていた。ただ、少しの揺れで削屑が動くことがあり、フィルムの経年劣化といった懸念材料もあった。このため今は劣化の恐れが少ない無酸中性紙の薄葉紙を使って独自に開発した専用容器で保管している。容器は厚さ1.2cmという薄型。薄葉紙を数十枚重ねたクッションの上に削屑を10点ほどまとめて置き、その上に薄葉紙を1枚かぶせ蓋を閉めて固定。この容器を20箱ずつケースに納め保管しているそうだ。


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