【別名「ヨメナノキ」、注目を集める葉に含まれる希少糖】
ズイナ科(旧分類ユキノシタ科)ズイナ属(イテア属)の落葉低木。学名の「イテア・ヤポニカ」が示すように日本固有種で、本州の近畿南部以西と四国、九州の山地の林縁や沢沿いに分布する。樹高は1~2m。晩春、その年に伸びた新しい枝の先に、長さ10~15cmほどのブラシ状の総状花序を出して小さな白花をたくさん付ける。
属名「イテア」の語源はギリシャ語で柳を意味する「itea」から。葉の形が柳に似て、水辺に生えることに由来するという。ただズイナの葉は先が鋭く尖っているものの長楕円形で、細い柳の葉にはあまり似ていない。別名「ヨメナノキ(嫁菜の木)」。これは野菊の一種ヨメナのように若葉がおひたしや和え物などとして食べられることから。ズイナの「菜」も食用になることを示す。幹や枝の髄の部分は昔、行燈などの灯心に使われたという。
近縁の仲間に北米東部原産の「コバノズイナ」がある。「アメリカズイナ」とも呼ばれ、日本には明治時代の初期に渡ってきた。白い小花がズイナより密に付いて見応えがあり、真っ赤になる秋の鮮やかな紅葉も美しいため人気がある。「ヒイラギズイナ」は葉の鋭い鋸歯がヒイラギに似ていることからの命名で、奄美大島から琉球諸島、台湾にかけて分布する。中国原産の「シナズイナ」もある。
ズイナは葉に「D-プシコース」という希少糖成分を含むことが分かって最近話題を集めている。希少糖はキシリトールなどと同様、自然界にごく僅かしか存在しない糖分。カロリーがほぼゼロのため、生活習慣病の予防・改善やダイエットなどにつながると期待されている。希少糖研究の先進県を自負する香川県では、県農業試験場や香川大学、民間企業などがズイナの組織培養、水耕栽培などに取り組んでいる。今春からは希望する小中学校へ水耕栽培した苗木の配布プロジェクトも始まった。