【ジャズのスタンダードナンバーから童謡まで15曲を熱演】
19日、奈良市の東大寺総合文化センター(金鐘ホール)で、「小川理子トリオ」によるジャズ演奏会が開かれた。ピアノ・ボーカル小川理子(みちこ)、ウッドベース小林真人、ギター田辺充邦。小川はパナソニック経営陣の唯一の女性役員で、音楽活動との二足のわらじで注目を集めている。これまでに14枚のCDをリリースし、2003年発表のアルバムは英国ジャズ専門誌の評論家投票で第1位に輝くなど実力も折り紙付きだ。この日は小川の弾き語りを中心にデューク・エリントンのスタンダードナンバーやジョージ・ガーシュインの作品など15曲を披露した。(写真は「ムジークフェスタなら」のHPから拝借)
オープニング曲はデュークの「サテン・ドール」だった。5月の連休には中南米を旅しブラジルでボサノバをたくさん聴いたという。そこで続く「ティー・フォー・トゥー(二人でお茶を)」はボサノバ調にアレンジしての演奏。そしてガーシュインの「アイ・ガット・リズム」。〝ハーレムストライド奏法〟(1920年代にNYハーレムで流行)と呼ばれる小川の巧みなピアノタッチとソフトで滑らかな歌声が耳に心地いい。
米国映画「カサブランカ」のテーマ曲として知られる「アズ・タイム・ゴーズ・バイ(時の過ぎゆくままに)」の後は、童謡「赤い靴」や小川の父親が70歳のときに作曲したという「マイ・ファザーズ・ラヴ・ソング」など。「赤い靴」は小川が母のおなかの中で聴いたと信じている曲で、幼い頃にはこの歌を聴くたびに涙を流していたそうだ。小川はその体験から「胎教というものを絶対的に信じている」とも話していた。
後半にも小川が大好きというガーシュインの作品を2曲演奏した。「ス・ワンダフル」と「サマーマイム」。チャップリンが無声映画「モダン・タイムス」のために作曲した「スマイル」やデュークの「A列車で行こう」なども披露した。締めの1曲として選んだのは「ヒンダスタン」。舞台の背後にはスポットを浴びた仏様のレリーフ。仏教のルーツはインド。ということから、この曲に決めたという。
アンコールは予定していなかったそうだが、鳴り止まない拍手に促されて演奏したのは「スウィングしなけりゃ意味がない」だった。「A列車で行こう」と並ぶデュークの代表曲。小川の「デュワッ、デュワッ」という軽やかな歌声が今も頭の中を駆け巡る。会場の入り口には小川が中心になって開発した「テクニクス」の高級オーディオ機器がデモ展示され、休憩時や公演後に多くの人がその音色に耳を傾けていた。