く~にゃん雑記帳

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<山口華楊展> 動物画・花鳥画で日本画壇に新風吹き込む

2012年11月20日 | 美術

【京都国立近代美術館で回顧展開催中】

 動物画や花鳥画で日本画壇に新風を吹き込んだ日本画家、山口華楊(1899~1984年)。その回顧展(12月16日まで)が京都国立近代美術館で開かれている。父方は曽祖父の代から友禅染の職人、母方は絵の具商。華楊は幼い頃から粘土や筆で動物を写すことを好んだという。尋常小学校卒業と同時に竹内栖鳳、谷竹堂の弟子だった西村五雲に入門、1916年の時に第10回文展に入選するなど早くから非凡な才能を発揮した。

 

 会場を入ると正面に代表作3点。左に「獅子」、右に「虎」、中央に「樹」。「虎」(写真㊧)は悠然と寝そべって斜め前方を凝視し、「樹」は老樹の幹が地上にどっしり根を張る。いずれも存在感が際立つ。華楊は動物や花、鳥を多く描いたが、老木も好んで描いた。「角とぐ鹿」(写真㊨)は1918年、19歳の時の作品。「耕牛」は茶色の牛が水田の中で顔だけこちらに向けてじろり。その重量感が伝わってくる。

 「黒豹」(写真㊧)は華楊の動物画の到達点ともいえる代表作の1つ。55歳の時の作品で第10回日展に出展した。真っ黒な2匹の豹のうち1匹は寝そべり、もう1匹はこちらに向かってゆっくり歩を進める。その眼光の鋭さに吸い寄せられる。寝そべった豹の体の一部は画面からはみ出す。その構図の妙。

        

 華楊は虎やライオンなどもよく描いた。京都の動物園に通って写生したのだろうか。ライオンは会場正面の「獅子」のほか同じタイトルの「獅子」や「凝視」、虎も子どもの虎を描いた同じタイトルの「虎児」2点も出展されていた。「仔馬」は黒と茶の子馬が寄り添う構図で、1955年度日本芸術院賞受賞作品。動きの少ない動物画が多い中で、若い雌鹿2頭がジャンプし疾走する「飛火野」や雄鹿2頭が角をからみ合わせた「深秋」は躍動感に満ちていた。

 「木精(こだま)」は地上をうねる巨木の根元に止まったミミズク(?)が顔を180度回転させてこちらをじっと凝視する構図。この巨木は京都・北野天満宮にある樹齢400年のケヤキがモデルという。物音1つしない森閑とした中で、悠久の時の流れと力強い生命力を感じさせる作品だ。赤い花が咲き誇る椿の木に1羽のウグイスが止まった「春盡(はるづくし)」、黒猫が緑陰で休む「青柿」(上の写真㊨)、3羽の丹頂鶴が雄飛する「丹頂の里」なども印象に残った。

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