く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<いこま国際音楽祭> 言葉の壁を乗り越える〝音楽の力〟!

2012年11月05日 | 音楽

【世界の一流演奏家と地元の子どもたちが感動の共演】

 世界的なピアニスト、韓伽倻(ハン・カヤ)が音楽監督を務める「いこま国際音楽祭」が10月29日~11月4日、奈良県生駒市の「たけまるホール」で開かれた。今年で3回目。4日のファイナル・コンサートでは、世界初演の東日本大震災レクイエム曲「果てしない問いかけ」(徳山美奈子作曲)に地元の小学生が合唱と朗読で参加、フルートやトランペットのソリストの演奏では全国トップレベルの実力を持つ小中学生のブラスバンドが共演し、会場を埋め尽くした観客の万雷の拍手を浴びた。

         

 韓伽倻(写真㊨)は桐朋学園大学卒業後ドイツに渡り、内外のコンクールで上位入賞を重ねた。現在は演奏活動の傍ら国際コンクールの審査員も務め、1999年からはドイツ・カールスルーエ国立音楽大学教授として後進の指導に当たっている。「いこま国際音楽祭」では生駒に実家があるという縁もあって、2010年の平城遷都1300年祭記念として開かれた第1回から音楽監督を務めている。音楽祭は「飛び立て生駒から世界へ 世界から生駒へ」をモットーに掲げる。

 今年もドイツからカールスルーエ音大教授陣を中心に世界で活躍する演奏家が参加し、マスタークラスの公開レッスンや地元小学校での授業「世界はともだち 音楽塾」などを通じて交流。2日のガラコンサートでは生誕150年のドビュッシーに、3日はブラームスに焦点を当ててプログラムを構成した。

 最終日4日の「果てしない問いかけ」には外国人演奏家たちに小学生約50人や和太鼓奏者2人も加わった。作曲した徳山は東京芸大・ベルリン芸大卒で、1997年度ウィーン国際作曲コンクール1位。今回は親友の7歳当時の日記「生きてるって何だろう」を基に作曲したという。「なぜ、という問いかけを体で感じていただけたら、うれしく思う」(演奏前の徳山の挨拶)。約15分の曲で、ピアノの同音連打の響きと児童の「生きてるって何だろう」「死ぬって何だろう」と繰り返す合唱・朗読、雷鳴のような太鼓の轟きが印象的だった。

 休憩後の後半にはまず女性フルーティストのレナーテ・グライス-アーミンが中学生のブラスバンドの伴奏でドップラーの「ハンガリー田園幻想曲」を演奏、続いてトランペットのラインホルト・フリードリヒがジャン-バティスト・アーバンの「ヴェニスの謝肉祭による主題と変奏曲」を吹いた。ダブル・トリプルタンギングなど超絶技巧の演奏技術はさすが当代随一のトランペット奏者。最後にクラリネットのヴォルフガング・マイヤーは女子小学生たちのサクソホンなどの伴奏に乗って、ベニーグッドマン作曲の「クラリナーデ」など3曲を軽快に演奏した。

 生駒は吹奏楽が盛んな地として知られる。生駒中学の吹奏楽部は1998年以来、全日本吹奏楽コンクールで金賞8回という全国屈指の実力校。小学校でも桜ケ丘、俵口両校が全日本小学校バンドフェスティバルの常連校になっている。世界一流のクラシック演奏家との共演でも、ものおじすることなく実力のほどを遺憾なく発揮して観客をうならせた。

 この日は大震災での被災木材で作られたバイオリンも披露され、ニコラス・チュマチェンコが「夕焼け小焼け」を演奏してくれた。チュマチェンコはこれまでにルドルフ・ケンペ、サバリッシュ、ズービン・メータら名指揮者とも共演している名バイオリニスト。その被災バイオリンは復興支援リレーとして「世界の1000人のバイオリニストが引き継ぐ」キャンペーンで各地を巡っている。そうした由来もあってか、まさに琴線に触れる優しい響きだった。

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