く~にゃん雑記帳

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<横山大観展> 初期の「小春日」「無我」から最晩年の「山川悠遠」まで

2012年08月18日 | 美術

【足立美術館の大観コレクションから41点を精選】

 ジェイアール京都伊勢丹の美術館「えき」で「横山大観展」(9月2日まで)が始まった。国内随一の足立美術館(島根県安来市)の大観コレクションの中から、出世作の「無我」から、大観芸術の集大成といわれる海・山二十題のうち「海潮四題・秋」と「霊峰四趣・夏」、最晩年の「山川悠遠」まで41点を展示、気品にあふれた大観の画歴を年代を追って展観できる構成になっている。

   

 最初に展示されていたのは「牧童」「無我」「小春日」など20~30歳代の作品。このうち「小春日」の雅号だけが「秀麿」(本名)になっていた。25歳の時の作品なので「大観」を使い始める前だったのだろう。「那智之瀧」は墨の濃淡で滝のしぶきを表現し、今にも滝の音が聞こえそうな感じ。京都・愛宕神社の秋の参道を俯瞰した「愛宕路」は楓の紅葉と緑の赤松があざやかなコントラストを織り成す。真ん中の少し下にはつがいの山鳥。「冬の夕(ゆうべ)」(上の写真)は雪をかぶった椿の花の赤と仲良く寄り添う雀の姿が印象的だ。

   

 二つ折れの屏風が対になった「春風秋雨」は、桜の花に金泥のぼかしで春の嵐を表し、楓の上に金泥を斜めにさっと刷いて秋雨を表していた。春図の下には愛らしいタンポポが3つ。「麗日」は砂浜に土筆やタンポポ、大きなハサミを持つカニを描いたもので、何とも微笑ましい構図。「霊峰四趣・夏」(上の写真)は72歳、昭和15年の作品で、雲の間から少し雪が残る青い富士が姿を見せる。この作品を含む山・海二十題は1点当たり2万5000円という当時としては破格の値が付き、大観はその全額50万円を陸・海軍省に寄付したという。陸軍省と海軍省はその恩に報いるため戦闘機など4機を「大観号」と命名したそうだ。

 大観は東京美術学校(現東京芸大)入学以来、岡倉天心を師と仰いだ。「国粋主義者」とも称された岡倉の影響もあってか、大観の作品には日本の象徴である富士山を描いたものが多い。「神国日本」は昭和17年、74歳の時の作品。悠然とそびえる富士の左奥から真っ赤な朝日が昇る。これに「不二霊峰」「海上日出」などの作品が続き、最後に89歳の時病床で描いた「山川悠遠」が展示されていた。岩に打ち寄せる波と群れ飛ぶカモメ(?)。この後描いた「不二」が大観の絶筆となり、翌年の1958年2月26日、89年3カ月余の生涯を閉じた。

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