く~にゃん雑記帳

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<ハマユウ(浜木綿)> 万葉集に柿本人麻呂の歌1首「み熊野の浦の浜木綿……」

2012年08月08日 | 花の四季

【宮崎県の県花、「ハマオモト」の別名も】

 ヒガンバナ科の常緑の暖地性海浜植物。太い茎の先端に十数個の白い花を傘状につける。6枚の細い花弁が反り返って咲く様は白いヒガンバナにそっくり。その花は芳香を放ち、特に日没後、甘い香りを漂わせる。光沢のある葉が年中青々してオモトに似ていることから「浜万年青(ハマオモト)」の別名も。関東以西の海岸で見られ、分布の北限は年平均気温15度の等温線とほぼ一致、「ハマオモト線」とも呼ばれている。ただ地球温暖化のせいか、北限は少しずつ北上しているという。

 夏の海辺を彩る涼しげな花として古くから親しまれ、万葉集にも柿本人麻呂が詠んだ歌1首が掲載されている。「み熊野の浦の浜木綿 百重(ももへ)なす 心は思へど ただに逢はぬかも」。葉が幾重にも重なる熊野海岸のハマユウのように、あなたのことを深く深く思っているのに、直接会えないことが残念でならない――。熊野地方は今でもハマユウの自生地として知られる。その一つ、和歌山県新宮市の孔島(くしま)には万葉学者・犬養孝揮毫のこの歌碑が立つ。三重県志摩市の和具大島の大群落も有名だ。

 ハマユウは宮崎県の県花。日南海岸の堀切峠やこどものくになど県内各所で見られる。ハマユウは宮崎の物産や観光などの代名詞にもなっている。豚は「系統豚ハマユウ」、その肉は「宮崎ハマユウポーク」、鶏は「はまゆうどり」、宮崎カーフェリーは「はまゆう」、高速バスは「はまゆう号」(宮崎~鹿児島)、農協は「JAはまゆう」、宮崎交通の観光バスガイドのOBの集まりは「はまゆう会」……。延岡市には滞在型レジャー施設「浜木綿村」もある。まさに県内〝ハマユウ尽くし〟である。

 ハマユウを「市の花」に制定している市町村も多い。新宮市のほか山口県下関市、高知県室戸市、静岡県沼津市、神奈川県横須賀市、三浦市……。愛媛県宇和島市の沖の島や静岡県下田市の田牛(とうじ)海岸、福岡県芦屋町の夏井ケ浜の群生地は、県の天然記念物に指定されている。下関市の角島、佐賀県唐津市の神集島(かしわじま)のように市町村の天然記念物になっている所も多い。ただ全国的に見ると、海岸の埋め立てや護岸工事でハマユウの生息域は減少傾向。それだけに手厚い保全活動が欠かせない。宇和島の沖の島(無人島)では30年以上も前から市内の中学生たちが砂浜の清掃や葉を食べるハマオモトヨトウ虫の駆除、苗の植樹などを続けているそうだ。

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