経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

アベノミクス・コロナ前の惨状

2020年03月01日 | 経済(主なもの)
 金曜に1月の経済指標の第一陣が公表された。新型肺炎の影響が本格化する前にもかかわらず、消費増税による損傷によって、相当に厳しい結果である。つくづく、「嵐の前に雨戸を開け放つ」のが、この国は得意なのだと思う。戦力を考えない「先手の財政再建」は、対策の「総動員」に糊塗されて、大失敗になろうとしている。すべてはコロナウイルスのせいで済まされるだろうが、「先手」だの、「総動員」だのが叫ばれるようになったら、本質を見失っていると疑うべきである。

………
 1月の鉱工業指数の出荷は、前月比-0.2にとどまり、水準は10-12月期の平均を下回った。7-9月期の前期比が-0.0で駆け込みが見られず、10-12月期の前期比が-5.1もの崩壊だったのに、1月が更にその下という惨状である。消費財は、1月の前期比が+1.1でも、7-9月期が-0.7、10-12月期が-5.9だったから、酷さは変わらない。また、設備投資の動向を示す資本財出荷(除く輸送機械)は、10-12期に-6.6も落ちたのに、1月の前期比が+0.4に止まる。

 出荷の低迷を受け、1月の鉱工業指数の在庫は、前月比+1.6となり、7か月ぶりに最高水準を更新した。これが今後の生産の足を引っ張ることになろう。そして、更に拙いのは、1月の建設財の出荷が前期比-2.3にもなり、水準を大きく切り下げていることだ。しかも、1月の住宅着工は、前月比-3.9万戸と一段の下げとなり、8年ぶりの低水準まで転落して、いまだ底が見えない。消費、設備投資、住宅と、民需は総崩れなのである。

 1月の商業動態の小売業は、前月比+0.6と、プラスではあるものの、10-12月期の前期比が-6.9にもなっていたことを踏まえれば、死んだネコの跳ね返り程度の戻りである。消費に関しては、次の金曜の家計調査などの公表を待ちたいが、この有様では、GDPの家計消費は、前期比で若干のプラスでしかないだろう。駆け込みの反動減の大幅なマイナス成長後、戻ることなくゼロ成長という見通しどおりである。

 今回の経済指標で特筆すべきは、景気悪化が雇用に及んだことだろう。1月の労働力調査では、男性雇用者の横バイ状態が続く中、順調に伸びていた女性雇用者が前月比-21万人と大きく減少した。また、一進一退を保っていた新規求人倍率も、1月は前月比-0.40と低下した。産業別に見ると、新規求人数の前年比の減少は、卸小売や宿泊飲食で大きく、建設や医療福祉を含むほとんどの業種に及ぶ。(注:求人票変更による特殊要因がある)

(図)


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 以上は、新型肺炎の影響が本格化する前の1月の状況である。2,3月には、輸出やインバウンドの減少や感染拡大防止のための自粛によって、経済にも大きな影響が出る。もともと、消費増税によって、ゼロ成長に転落していたところへ、コロナショックに見舞われ、マイナス成長へと引き込まれる。不運ではあるが、リスクイベントは、いつも在り得るものだから、成長を見失って、緊縮ばかりしていたら、いずれ出くわすことになる。それでも、日本人は、優しいので、意図が正しければ、結果責任は問わず、悲劇として美しく描いてくれるだろう。


(今日までの日経)
 日米欧、時価総額1割減 コロナ・ショック世界揺らす。保護者の休業手当補助。雇用に変調の兆し「景気緩やか回復」揺らぐ。全国小中高に休校要請 首相、来月2日から。


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