経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

キシノミクス・正常化へ向う消費と回復への課題

2022年06月05日 | 経済(主なもの)
 2月初めのピーク時には2万人を超えていた東京都のコロナ感染の確認数は、足下では2千人台まで下がり、行動制限がかからなくなったことで、消費の正常化が進んでいる。原油高・資源高に伴う物価高はあるものの、この勢いを保って、コロナ前水準を回復し、さらには、10%消費増税前の水準への回復に進みたいものである。それには、いかに税収増による緊縮を緩和するかという課題もある。

………
 4月の商業動態・小売業は、前月比+0.8の103.5と、前月の+1.7に続いての増加となった。この水準は、10%消費増税前の2019年前半を上回るものだ。もっとも、これは名目であり、CPIの財で除すと95.1となって、コロナ前水準を下回ってしまう。4月の中身を見ると、百貨店や衣服が伸びていて、コロナの収束に伴い、外出が活発になったことがうかがえる。他方、燃料は、若干ながら低下した。

 消費者態度指数は、4月に前月比+0.2と6か月ぶりにプラスへ変わり、消費の復活を示唆していたが、5月に入って+1.1と加速した。とりわけ、雇用環境は、4月の+1.3に続き、5月が+2.9と、大きく伸長している。水準としても、コロナ前にもう一息のところまで来た。雇用環境が明るくなると、委縮していた消費性向の上昇にも結びつくので、5,6月での一段の消費回復に期待したい。

 雇用に関しては、4月の労働力調査の完全失業率は2.5%へと低下し、こちらもコロナ前の水準にあと一歩となった。雇用者は前月比+31万人と大きめの増加である。特に、女性の増加が多く、2782万人はコロナ前のピークを超えるレベルだ。新規求人倍率も、求職数の増加を求人数の増加が上回る形で、前月比+0.03の2.19倍へ上昇した。ただし、水準としては、コロナ前が2.39倍だったから、まだ開きがある。

 他方、鉱工業生産は、4月は前月比-1.3となり、停滞の様相である。資本財(除く輸送機械)は、前月比-0.9となり、1-3月期の水準から大きく下げた。消費財は、4月は+0.8となったものの、前月の減が大きく、1-3月期の水準を下回る。建設財だけは、低い水準からではあるが、前月比+4.3と2か月連続の伸びだった。5,6月の鉱工業生産の予測は、極端に高くなっているが、生産に制約があるため、実現性には乏しい。

(図)


………
 2021年度の税収は、7.5兆円もの大幅な増収が見込まれ、2022年度も、順調なら、更に3.3兆円の増収が予想される。2か年で10兆円も財政収支が改善されることになり、このデフレ圧力をいかにかわすかが財政運営上の重要な課題になる。なすがままに緊縮したり、需要に結びつきにくい産業政策で空回りするようでは、消費の回復にブレーキがかかってしまう。その意味で、実効ある再分配を行う新しい資本主義が本当に求められている。

 アベノミクスは、端的に言えば、金融緩和と緊縮財政の組合せで、財政出動はイメージに過ぎない。緊縮で消費を抑圧したために、成長が高まらず、売上げは鈍く、物価も低迷し、賃金も伸び悩んだ。景気回復の局面で急激になりがちな緊縮を、いかに緩めるかが経済戦略の要であり、そのための再分配の設計こそが肝となる。キシノミクスが目指す「成長と分配の循環」において、財政が堰き止めていては話にならない。かつての池田勇人は、その点を注意していたことも申し添えておこう。

 折しも、2021年の出生率は1.30まで低下してしまった。非正規の女性への育児休業給付もない現状では、少子化対策も、人への投資もあるまい。少子化は、若者を収奪した結果である。当面の利益のために社会を壊してしまうのが剥き出しの資本主義なら、新自由主義の処方箋にすがるのをやめ、社会への分配を、持続には不可欠な投資と捉え直すことが新しい資本主義ではないのかね。


(今日までの日経)
 出生率6年連続低下 昨年1.30、最低に迫る 少子化対策、空回り 出生数最少。社説・少子化の厳しい現実に目を背けるな。政府は少子化非常事態宣言を 若者支援急務。スマホ・PC在宅特需に陰り。老いる米国 働かない1億人。台湾での新卒エンジニアの年俸約6.8万米ドル。迫るスタグフレーション・M・ウルフ。


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