経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

被害を知らずに復興はない

2011年04月15日 | 経済
 社会保障一体改革の会議といい、大震災の復興構想会議といい、議論することと言えば、増税論ですか。増税も結構だが、実質成長率が2%超、物価上昇率が1%にはならないと、とても経済とは整合させられないよ。そこまで景気が回復するのは2年先だろう。どうして、そんなことも分からないのかね。

 今、議論が必要なのは、2年先の増税論より、復興の柱となる制度の考案だろう。ありていに言えば、おカネの流し方である。例えば、漁業再建には、漁協を主体に共同化を進め、そこに国が出資し、漁船や養殖施設を整えさせる必要がある。その際、資源管理の観点から、漁獲量を制限する一方、漁業権を委ねた高齢の漁師には年金を出すといった仕組みもいる。

 水産加工や地場産業については、貸し工場を国費で建設して入居させ、共同の冷蔵倉庫を整備するなどして、従来以上の効率化と衛生化を図らねばならない。それを可能とする公共投資なり、出資の制度がどうしても必要である。こういう構想を掲げて、財政当局と相談せずに持って来いと言えば、農水省や自治体は、いくらでも案を作ってくれるはずだ。これを基に、短期長期のファイナンス(財源)を考えるというのが、本当の政治主導である。

 地震から1か月が経っているのに、未だに積み上げの被害額がまとまって出て来ないのはどうしたことか。復興を構想するのに、被害規模の説明も求めないのは、あり得ないことだ。いいかね、戦略を立てるときには、問題の大きさの把握が第一なんだよ。日本のトップリーダーには、こういう「いろは」から教えなくてはならんのかな。

 バラバラに出てきている被害額の算定額は、宮城県算定の2.1兆円、岩手県算定の農林水産業と商工業の0.6兆円、農水省の算定額1.2兆円、国交省の算定額1.5兆円である。また、住宅被害のオーダーは、全壊5万戸で1戸1千万円なら、0.5兆円程度にしかならない。これから膨らむにしても、さしあたり、阪神大震災の10兆円程度か、その1.5倍までを想定しておくのが妥当ではないか。

 おそらく、被害規模の数字が地震直後の内閣府のマクロ的推計の16~25兆円から更新されないのは、意図的なものだろう。なぜなら、阪神大震災レベルなら、増税は不要という結論にしかならないからだ。財政再建につなげる大規模な増税には、阪神の何倍もの途方もない被害という「ストーリー」が必要になる。単に無知なのか、情報操作によるのかは知らないが、まあ、ひどい話だね。

 今日の日経社説は、震災ショックの景気への悪影響が見え始めたのに、相変わらず、バラマキを削り、経済にデフレをかけろとの「素晴らしい」主張だ。その中で、被害額が最大25兆円であり、2次、3次補正が必要としている。完全に踊らされているわけである。報道機関が基礎になる情報も確かめないでどうするね。大本営発表しか聞かないのか。いや、日経もディスインフォメーション活動に励んでいるということか?

 復興構想会議で、もう一つ重要なのは、ダメージコントロールである。電力不足による経済への悪影響を減らすため、節電の方策を提案することも必要だ。その点、昨日の新潟県の社会実験は非常に重要なものだった。実際に節電を試し、17%の削減に成功したわけだから。本当は、政府がこういうことをしないといけない。

 新潟県は、中越地震の経験を活かし、今回の震災でもすばやく支援に動いているし、柏崎原発を抱えるせいか、節電への対応も迅速である。地方分権の時代らしいと言うべきだろうか。あるいは、今の霞ヶ関には、もはや、前向きの企画をするだけの余力は失われているのかもしれない。

 民間では、セブンイレブンが、LEDなどを5000店舗に導入し、25%の節電を達成すると発表したことは驚きだった。それだけの資材を確保できることが驚きであり、おそらく、震災前から計画してのだとは思うが、一流企業における、先を読んだ準備の怠りの無さに敬服する次第だ。復興「税」構想会議では、せめて、新潟県やセブンの「横展開」をするぐらいの提案はしてもらいたいものである。

(今日の日経)
 原発賠償へ保険機構案、東電負担立て替え。復興構想会議、震災復興税を盛る。国際不均衡一段と。社説・バラマキもっと削れる。農業被害0.85兆円。銀行・証券、平日に休業日。ギリシャ国債利回り急上昇。中東革命・成長に急ブレーキ。外貨準備、中国3兆ドル突破。セブン・5000店にLED照明を夏までに。マンション販売に陰り。小売り震災の影響限定的。経済教室・連帯の証し、消費税上げで・田近栄治。

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