経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

財政当局の知恵出し

2010年09月20日 | 経済
 内閣改造も終わり、ようやく政策も動き出したようだ。注目すべきは、玄葉政調会長の補正予算に関する発言だ。日経は、「協議は三段構え」と、政治過程として注目しているようだが、経済政策として見ても、なかなか興味深いものだった。

 玄葉会長が提示した財源は三つあり、①今年度予算の国債費不用分、②09年度の決算剰余金(1.6兆円、通常は半額を国債償還)、③今年度税収の上ぶれ分である。これまでの補正予算の論議では、①と②は俎上に乗せられていたが、今まで伏せられてきた③が、いよいよ登場した。規模には言及していないが、ここがポイントだ。

 税収については、リーマンショック前の2007年には51兆円もあったから、景気が順調に回復していけば、増税がなくても、09年度の補正後見通しである36.9兆円と比較して、14兆円程度の増収が見込める。既に、09年度で1.9兆円上ぶれしており、残りが、あと3年で回復するとして、10年度に4兆円程度を見込んでもおかしくはない。

 つまり、野党が主張する4~5兆円の経済対策を丸のみする以上の財源はあるわけである。ここは菅政権を支えるべく、財政当局も知恵を出してきたのだろう。むろん、10年度は「見込み」であるから、大きさをある程度コントロールできる。与野党の協議を見ながら、規模が最小限で済むように数字は作られよう。

 マクロ経済的には、09年度決算剰余金は、10年度へ繰越される公共事業の分もあるので、そのまま需要が追加されるものではないが、10年度の税収上ぶれ分は、新たな需要に結びつく。今年度予算は、前年度補正後より10兆円も少ないのだから、税収上ぶれが4兆円あるとなると、財政だけで14兆円ものデフレ圧力をかけていたことになる。日本経済がデフレで苦しむのも当たり前で、謎でも難問でもない。税収上ぶれ分を経済に還元することは必須であろう。

 ところで、今日の日経のエコノフォーカスは出色の記事だった。森本学、浜岳彦記者の労を多としたい。内容は、非課税制度の導入にも関わらず、企業の海外での稼ぎが日本を潤さず、資金が現地に留まっているというものだ。理由には、企業の現預金残高は203兆円と過去最高であり、国内の将来には期待が持てないことを挙げる。加えて、米国では軽減と国内投資義務付けの組み合わせで成功したことを紹介している。

 経済政策の基本は需要管理であるのに、財政の情報には無頓着であり、その一方、企業の実態を見ずに、法人減税で企業の資金を積み増して成長させることに過大なほど期待したり、超低金利下でも更なる金融緩和に熱心だったりする。今日の日経紙面では、日本の経済政策を巡る言論の問題性が浮き彫りになったように思える。

(今日の日経)
 国保保険料の上限上げ、中所得層は負担減。中国、閣僚級の交流停止。65歳以上の就業率は男28.4%、女13.0%。。時には正義の話をしよう。ASEAN中間層拡大消費に熱気。米消費、新学期商戦、家電は苦戦。三菱化学LED材料量産。新聞配達用電動バイク。働きやすい職場・ソニー首位。帝国ホテル・トイレ掃除のプロ。書籍の電子化代行業続々。経済教室・公務員制度改革の論点・稲継裕昭。理系卒、年収実は文系より高く・西村和雄。
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