経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

狭い道にも幅はある

2010年08月02日 | 経済
 二番底と財政破綻のどちらを優先して対応すべきか、狭い道(ナローパス)にあるとする議論が出てきている。今日の平田さんの核心などもそうなのだが、そう指摘するだけでは政策にならない。「どうするか」まで行かないところに、日本の弱さがある。

 さて、今年度予算は、補正後の前年度予算に比較して10兆円も少ないのだから、景気対策は次々に剥落してゆくことになる。さらに、景気回復によってGDPが急速に伸び、企業収益も復活しているのだから、来年度は5兆円程度の税収増があってもおかしくない。これも景気にはマイナス要因に働く。

 つまり、今年度後半から来年度にかけて、財政によるブレーキが強く景気にかかることになる。むろん、輸出、設備投資、消費といった民需が、これをものともしないほど強ければ、何の問題もないが、まったく楽観できない。むしろ、欧米の景気停滞の影響を心配すべき局面だろう。

 今日の平田さんの「核心」の最もまずい点は、「税収が37兆円なのに92兆円も使う今年度予算はすでに積極財政」とするところで、この論理なら、来年度を50兆円の超緊縮予算にしても、まだ「積極財政」ということになる。経済に対して積極か否かは、足元からのプラスマイナスで計るべきもので、財政赤字があれば常に積極というのでは政策を誤る。

 現在のマクロ政策上の本当の論点は、放っておけば、強いブレーキになる財政を、景気の先行きのリスクを検討して、どの程度、中立に持っていくかである。その対象として、今年度予算の1兆円の予備費を使わずにデフレ要因にするのか、来年度予算を成長率以下の伸びに抑えて更にブレーキを強めても良いのかという議論へと進む。

 財政破綻は、その裏面になる。つまり、1兆円の予備費を使うと破綻するのか、来年度予算を成長率並みに1.3兆円伸ばして破綻するのか、といった議論である。筆者は、長期金利の低下と円高の様相からしても、この程度は、まったく問題ないと判断する。

 今日の土居先生の経済教室のポイントは、「法人税減税は景気にプラス」といった雑駁な議論はダメで、課税ベースなどの実態に即して効果を判断すべしというものと受け取ったが、マクロ政策も大まかな方向性だけの議論では十分とは言えないのである。

(今日の日経)
 電気自動車・電池に重点・本社調査。増資ラッシュ新銀行規制。部品大国危うし、海外生産進む。日銀新制度の1号は東洋紡。核心・二番底と財政破綻・平田育夫。インド、中国南進にくさび。製造業景況感、中国7月低下、新規落ち込む。患部に超音波でtPAの効果。大和ハウス、指導役を若手から中堅に。電子書籍化は作家に主導権?、経済教室・法人税の落とし穴・土居丈朗。 
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