経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

経済低迷は新聞の責任

2010年08月20日 | 経済
 日経は、昨日の社説で微妙にポジジョンを変え、「財政面からの景気てこ入れ」を当然視する言い振りになった。率直に言って、日経は、今の局面で、どのような経済政策が必要かの定見を持たずに、政府の動きに引きずられている。これでは、政府の対策の遅れを批判することはできない。

 他紙を眺めてみると、読売の社説は明確で、4-6月期のGDP速報が出た後の8月17日に、財政出動を求め、公共事業や予備費を超えた対策にも言及した。読売は、それ以前にもエコカー補助金の延長を主張していたから、終始一貫している。現下は需要不足にあり、手を抜ける状況にないという明確な認識を持っている。他方、保守系でも、産経は、19日の社説で、国債増発に明確に反対し、財政出動も絞るべしとする。こちらは、金融緩和と為替介入に重点を置く主張である。

 朝日の17日社説は、財政出動には触れず、新規雇用のてこ入れ、企業の投資促進、規制緩和を求めている。意外にも、保守的な対応策にとどまり、危機感も感じられない。毎日は、17日社説で「短期的な変動に動揺して追加の景気対策に走るのは賢明ではない」とまで言う。需要刺激策の打ち切りを主張する一方、企業の設備投資を求める内容は、正直、経済に疎いとしか言いようがない。

 さて、景気というのは、設備投資の動向次第である。その設備投資は、需要を見ながらなされている。需要が決定的に重要なのは、経営者は、その動きにリスクを感じていて、利益水準の見込みより、遥かに強い影響を受けるからである。現実と教科書の最大の違いは、ここにある。

 したがって、経済政策の第一の目標は、需要を安定させることになる。未だ消費が十分に伸びてない段階で早々に需要支持策を撤退させてはならないし、円高で外需の失速が懸念されるなら、その分を補わなければならない。そうしているうちに、自律的に設備投資は回復してくるものなのだ。

 日本経済の低迷は、こういう経済政策の基本がなっていないことによる。それは、一義的には財政当局の責任ではあるが、社説という「世論」においても、その責任は、免れないだろう。記者ならば、どんな経営者でも良いから、聞いてみたらよい。「売上げの先行きに不安があっても、低金利なら設備投資ができるはずですよね」と。

(今日の日経)
 経済対策原案、環境軸に内需・雇用増。シャープ液晶パネル減産。円、米指標悪化で高値。トウモロコシ中国純輸出国に。社説・経済軽視し権力闘争。経済対策やっと始動。米先頭部隊イラク撤収。港湾・高速の新規事業再開。追加緩和、市場期待一段と。雇用創出米国の苦闘、建設・金融の縮小続く。中国、韓国国債買い拡大。GMスピード再建。超長期国債に短期買い。経済教室・太陽光発電の全量購入を・松村敏弘。
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