経済を良くするって、どうすれば

経済政策と社会保障を考えるコラム


 *人は死せるがゆえに不合理、これを癒すは連帯の志

脈動と経済政策

2010年08月01日 | 経済(主なもの)
 サロー先生に言わせると、「景気対策が世界で最も下手な国賞」があれば、間違いなく日本が取るそうで、輸出依存が続くようなら、失われた30年もあるらしい。先生は、中国の成長率は本当は3%だとか、相変わらずの怪気炎ぶりだ。前者は現実になりそうだが、後者は資源の爆食が幻とすれば、地球温暖化にも希望が持てるというものだ。

 さて、7月の日経の記事で、最も知的興奮を覚えたのは、脈動させることによって、効率的にパイプラインに通水させる技術である。圧力を一定に保つより良いというのは、とても意外だ。プラントエンジニアならともかく、これを聞いて喜ぶ経済学者は、そうはいないのではないか。

 おそらく、定圧で通水する場合は、途中で渦が発達し、これが効率を下げるのだろう。渦と言うと、フラクタルを連想させる。定圧の下で、小さな渦が次第に大きくなって壊れるというのを繰り返していて、エネルギーをロスしているように思う。

 経済で似たような現象というと、投資が投資を呼んで景気が過熱して壊れるというものがある。リスクに強く影響され、投資が金利よりも需要に従うものだとすると、こうした現象が起こるわけである。

 そこで、脈動式の通水法を経済に当てはめてみると、投資が投資を呼び始めたところで、1%だけ消費税を上げて小さなショックを与え、渦が大きくなるのを予防してしまう。そうすると、長い目で見た経済成長の経路を効率的に進めることにならないか。

 本コラムでは、景気動向を条件にして、1%ずつ消費税を上げることを提案しているが、これは、高齢化の下で、将来的に強い需要超過の圧力がかかるであろう日本経済には、理論的にも有効と言えるかもしれない。現実的なものは、理論的でもあるのだ。

 まあ、輸出依存で、内需を緊縮財政で抜くのが得意な日本の経済政策の下では、最先端の政策や理論など考えても意味がないのかも知れない。サロー先生のおっしゃるところのケインズ政策にすら届いておらず、それ以前の時代の健全財政至上主義なのだから。

 上場企業の経常益が危機前の9割となれば、10兆円も落ち込んだ法人税の大幅な回復が見込まれる。健全財政至上主義でも、こういう情報は目に入らないようだ。何にも目をくれず、ひたすら予算を前年同にするだけという知恵のなさ。サロー先生から、ありがたい賞でもいただくことにしよう。

(今日の日経)
 上場企業4-6月経常益、危機前の9割。人口3年ぶり減、自然減最多。欧州の資産査定の後も銀行間取引金利の上昇続く。風見鶏・海洋摩擦三戦への備え。ミセスワタナベの夜9時・清水功哉。ASEAN株上昇鮮明。レスターサロー・世界を語る。悪循環に陥った法曹養成。ニッポンこの20年、じわり衰退危機感薄く。読書・ホワイトハウスフェロー。
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