今回の萩は天国と地獄を見たような感じだった。
目標は新記録達成。前半は飛ばして仙崎(143km)を2時前に通り、宗頭に明るいうちに到着する。宗頭では眠らずに行く、というのが計画だった。
スタートしてすぐ、とても足が軽かったのでフルの感じで走ってしまった。あっという間に第1グループを抜き、前方に誰もいなくなった。まさか私が1位ではなかろうと思っていたが、いくら走っても前方には人影がない(本当は2位)。やり過ぎたかとも思ったが、とても気持ちがよかった。10kmあたりで後方から福地さんに抜かれ、小野木さんなどのスピードランナーの集団にも次々に抜かれた。
昨年、Kさんが同じようにスタート直後飛ばし、後半足を痛めた。その時私はKさんに言った「そんなに飛ばしたら後半ケガしますよ」。まったく同じことをしている。人間調子に乗ると注意事項は忘れるもんだ。おかげで仙崎には昨年より1時間半も早く着いた。こうなると、もうイケイケムード。
大きな落とし穴が待っているとも知らず・・イヤ知っていたはずだった。
私はいつも仙崎(160kmあたり)でめまい、嘔気、全身倦怠が起こり何回かリタイヤしている。今回もそれに注意していたはずなのに、イケイケムードで忘れて予定と違うことをしていた。案の定、鯨墓に着く手前から急にめまい、吐き気、足の痛みが起こってきた。
5分前まで元気に走っていたのに、この急変は何だろうと思ったが、気づくのが遅かった。トイレに何回も入り、水も飲んだが逆に気分が悪くなる一方。
やっとの事で仙崎に帰ってきたが、新記録のことはもうすでに頭にはなかった。まだ明るかったので、先のことは宗頭に行って決めようと思った。
宗頭でも止めようと考えたが、時間がたっぷりありすぎるし、スタート前に「60時間眠らずに行く」と公言した以上、止めるわけにいかない。足のまめの治療をして仮眠せずに宗頭を後にした。
すぐに睡魔が襲ってきてふらふらしてきた。山道はガードレールがないため落ちては危ないと思い誰か来るのを待った。数十分して選手がきたので後をついて行った。
萩市内に入ったら眠さが半端でなくなった。立ったまま寝るようになった。「早く虎ヶ崎まで行ってそこで休もう」と思って歩くのだが、すぐにまぶたが閉じる。さらに悪いことに虎ヶ崎に行っている夢を見るものだから、いま本当に歩いているのか夢をみているだけなのかの区別がつかなくなった。
歩いていると思っているとただ立って寝ているだけということが頻繁に起こった。おそらく、同じ場所に1時間近くいた可能性もある。
やっと虎ヶ崎に着いて倒れるように畳の上で寝た。このときはもう完踏は考えていなかった。
・・・・周りが明るくなって、人の話声で目が覚めた・・・・周りを見るとナント一緒に来た仲間が全員いるではないか。また夢かと思った。
みんなここまでリタイヤせずに来ていると思い、何が何でも自分も完踏しなければと気力をふるって立ち上がった。めまいがまだ取れていなかったが、走れないのでみんなより先にスタートすることにした。
笠山の先でてれっとの旗が見えた。ナントそこにはさっき会った仲間全員がいるではないか。話を聞くとみんなリタイヤしたそうだ。なぜさっき虎ヶ崎でそれを言わなかったのだろう?おそらく、言えば「じゃ、俺も止めるわ」と私が言うと思って気遣ってくれたのかもしれない。
しかし、ここまで来たらもう完踏するしかない。足は相変わらず痛いが、時間は十分ある。ゆっくり行きましょう。初心にもどって。
途中で内藤さん、有働さん、伊知地さん、みどりちゃんの140kmの選手に会い、かれらの元気な姿を見ていたら、しだいに気力が戻ってきた。
いつ足が動かなくなるか心配しながら歩いていたが、往還道が終わった残り3km地点で完踏できると確信した。
最後の200mのビクトリーロードは何故かいつも足が痛くても走れる。今回のゴールは応援も多く、いつもより感動した。
今回は後半は地獄のような苦しみを体験しましたが、前半は天国のように楽しいマラソンができました。ゴールもできましたので、自分に合格点をやりましょう。
反省:仙崎・宗頭で休憩・仮眠をとること(60時間寝ないとか無理!)。
笠山の例の道は明るくなってから通ること(夜ジャングルを行くようなもの、かえって遅くなる)。
ライトは超強烈にしておくこと(山中は道を間違える危険あり)。
打ち上げでライトの話をしていたら「今度からこっちライトにしよう」ともう参加表明している人もいれば、逆に「今回を最後にしたい」という人もいました。
私も今のところ次回参加する気持ちはありませんが、1年経つとどうでしょう・・・・また懲りずにエントリーしてるかも。