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花ごよみ

映画、本、写真など・

冷血 上・下  高村薫

2013-05-28 | 本 さ、た行(作家)

冷血(上) 冷血(下)

高村薫の作品ではおなじみの、
合田雄一郎警部が出てきますが、
今までのシリーズとは、
少し違った感じ。

上巻は読み進めるのがつらく
もう止めようかと思いましたが
我慢して下巻も読みました。

犯人逮捕後の様子が、
書かれている下巻は、
上巻よりも読みやすく
なんとか読了することができました。

でも、とにかく長い。

理由なき犯罪。
説明不可能な残虐な行為。

考えることを放棄し、
反省というものを持ち合わせていない
空っぽの身体と心。

人間として理解したいと願い、
二人の犯罪者の過去を追いかけ、
犯罪の理由を執拗に探ろうとする合田。

合田の犯人を見る目に、
人としての深い心が、
感じ取られます。

それにしても重くて、
むなしい物語でした。



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カラマーゾフの妹 高野 史緒

2013-03-14 | 本 さ、た行(作家)

カラマーゾフの妹

この小説は、今放送されているTVドラマ、
「カラマーゾフの兄弟」
見ていたので読み易かったです。
ちょうどいいタイミングでした。

TVドラマでは
長男ミーチャに相当する満を斎藤工、
次男イワンに相当する勲を市原隼人、
三男アリョーシャは林遣都が、
涼という配役名で演じています。 
ミーチャ‥満、イワン‥勲、
アリョーシャ‥涼、
名前を似せています。
カラマーゾフとはロシア語で、
黒く塗るという意味、
ドラマではこの家族の姓は黒沢。

本では名前を愛称と本名、
例えばアリョーシャをアレクセイとも。
場面によって違う名で書かれていたので、
慣れるまで登場人物について、
書かれているページを
幾度も見直す羽目に。

この小説は文豪ドストエフスキーの
『カラマーゾフの兄弟』の、
続編として書かれています。
ドストエフスキーを「前任者」としているんです。

13年前の事件の真相とは?
そして13年後に新たな事件が起こる。

未解決に終わった事件を解決し
謎を推理、証明し、
この事件に終止符を打ちます。

テレビの最終はまだですが
やっぱり彼だったんだという感じ。
一人で納得しています。
テレビでは違っているかもしれないですが…

ドラマと小説、
同じ結末に至るとは限らないし、
ましてこの小説では
原作から派生し、
作者独自の推察をしたものなので。

原作は未読ですが前任者が書いた、
原作についての解説があるし、
テレビも見ているので
難なく読むことができました。
カラマーゾフの3兄弟、
それぞれの俳優の顔が浮かんできます。

多重人格、ホームズ、ロケット、
コンピューター、ミサイルが出てきたり、
SF風味も加味されていて、
原作者というか、
前任者もびっくりの展開。

アリョーシャの本当の顔、
彼の結末は驚きです。

2012年の江戸川乱歩賞受賞作。

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ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ  辻村 深月

2013-03-04 | 本 さ、た行(作家)


ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。 (講談社文庫)

女同士の捻れた友情、
母親との心の隔たり。

事件を起こし、
その後、行方不明になってしまった、
幼なじみのチエミ。

彼女についての手がかりを得るため、
フリーライターであるみずほが
チエミの学生時代の友人達に会い
チエミについての話を
聞いていきます。

みずほとチエミ。
対照的とも見える二人の人生。

チエミが逃亡しなければならなかった訳、
不思議なタイトルのゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ、
ラストになってこの数字の意味が
明らかになります。
そして救いがあります。

女同士の嫉妬、羨望、対比…
みずほ、チエミそれに他の登場人物も
あまり共感は得られず
読んでいてイライラします。
こんな人たちとは
一定の距離を置きたい感じです。

女性の心の裏面をあらわにしていて
結構リアルで重い内容でした。




コメント (2)
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ウィンター・ホリデー 坂木 司

2013-02-18 | 本 さ、た行(作家)


ウィンター・ホリデー

ワーキングホリデーの続編。

今回は冬休みを中にして
11月から3月くらいの期間のお話。

クリスマス、お正月、バレンタインデーと、
イベントがたくさんある冬のこの季節。

この物語、前回の登場人物である
ナナちゃん、ジャスミン、雪夜を含め、
こぶちゃんはじめハチさん便で働く人たちも
みんないい人ばかりなので
安心して読めます。

主人公である元ヤンキー、
元ホストだった大和の言葉で、
書かれていて
軽くてくだけた雰囲気が
なんとなく心地よく、
読み進めることができました。

大和とまるで主婦のような
しっかりしすぎている進とのふれあい。

二人の関係が近づいたり離れたり…
ぎこちない二人が愛しいです。

ナナちゃんも一歩前に踏み出します。
ジャスミンの温かさが、
優しく心に響きます。
アルバイト大東くんもいい雰囲気。

母親である由紀子さんも今回登場。
大和、進、由紀子さんとの関係も
気になるところです。
この先の決着はあるのかな?


コメント (4)
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身の上話  佐藤 正午

2013-02-01 | 本 さ、た行(作家)


身の上話 (光文社文庫)

主人公は地方の書店員ミチル。

放心状態が持続している女の子。

同僚に頼まれ買った宝くじ。
宝くじは当選、賞金は2億円。

彼女の起こす行動は思いつき。
ころころ転がるミチルの人生。

どこまで彼女の人生は
悪化の途をたどるのか。
この物語、着地点が予測不能。


歯医者に行くから始まり
不倫相手を見送り、
そのまま東京へ。

居候させてもらった後輩、
そしてその彼女の
あり得ないアクション。
この二人の異常さも強烈!!
最後にも驚きが待っています。

もう以前の状況には
立ち戻ることが出来ない事態に。
彼女の立場はどんどん
悪くなって行きます。

何も考えず、
成り行きに流された先に、
待ち構えているのは、
思いもつかない展開。

読み始めたら止められません。
面白かったです。

NHKでドラマ化されもう始まっています。
一応録画だけはしていますが、
ドラマはまだ見ていません。



コメント (5)
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ワーキング・ホリデー 坂木 司

2012-11-16 | 本 さ、た行(作家)


ワーキング・ホリデー (文春文庫)

主人公は元ヤンキーで、
現在はホストの沖田大和。

大和と息子の進、夏休み限定の、
親子の心の交流を描いています。


小学生の進が、
大和の息子として突然出現。

その息子はしっかり者で、
家事までこなす、
大和にとっては、
勿体ないほどいい息子。

おいしい料理を作る、
所帯じみた小学生と、
どちらが親か分からないような、
子供みたいな父親。

思いがけず息子と暮らすことになった大和は
宅配便ドライバーに転身。

でも使うのは
「ハニービー・キャリー」というリヤカー。

友人達の助けを借りながら、
大和は成長、
だんだん父親らしくなっていきます。

運送会社の人達、ホスト仲間の雪夜、
オーナーのジャスミン、客のナナ…
本に出てくる登場人物は、
みんな魅力的で心優しいいい人。
魅力たっぷりの人物なんです。

物語の展開もいい感じで、
後半は一気読み。

ほのぼの感のある物語で、
少しほろっとしたり、
クスッと笑えたり…
読んでいて楽しかったです。

11月17日に映画公開です。
映画化されると知って
買ってあった本を読みました。

公式サイトは→こちらです。


コメント (6)
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誘拐児 翔田 寛

2012-11-01 | 本 さ、た行(作家)


誘拐児 (講談社文庫)

事件の端緒は昭和21年の誘拐事件。

身代金受け渡し場所となった闇市。
犯人確保には失敗。
誘拐された児童はその後、
帰ってこなかった。

15年後となる昭和36年に、
事件はまた動きだす。

昭和21年の事件と、
昭和36年の事件、
二つの事件が交差する。

二組の刑事、主人公、恋人が、
事件に関する人々を追い求めて
過去と現在(といっても昭和36年)を
行き来します。

時代背景も目に浮かんできます。

先を読み進めるのが、
こわいような展開。

ラスト近くには事件の繋がりが
解明されます。

心打たれる母の愛に、
救いがありましたが
でもやはり誘拐された子が、
違う人生を生きていたらと
思ってしまいました。

第54回(2008年) 江戸川乱歩賞受賞





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終の信託  朔 立木

2012-09-24 | 本 さ、た行(作家)


終の信託 (光文社文庫)

「終の信託」「よっくんは今」の
二編で構成された小説。

元々のタイトルは「命の終わりを決めるとき」。

「終の信託」は周防監督によって、
映画化されるということで読みました。

「終の信託」
18年来、自分の担当した患者である
重症の喘息患者、江木秦三に
「最期を、長引かせないで」と依頼され、
安楽死するように操作し、
罪に問われた呼吸器科の医師・折井綾乃。

信頼される医師と患者の関係から、
深い心の絆を結ぶようになった、
折井綾乃と江木秦三。

最期を楽にと患者に願いを託された
彼女が、罪を負うことになる。

安楽死、尊厳死、
彼女の行為は罪なのか?
深刻なテーマについて
書かれています。

検事と被疑者。
裁く側と裁かれる側、
どちらも不完全な人間
でも罪を犯した側は裁かれる。
真実を伝えても採用されなければ
事件の本質は闇に葬られてしまう。

「よっくんは今」
悲しみを流し去るために
愛した人の命を断ってしまった万里。

この本の作者は現役の弁護士で
実在の事件をもとにしたということです。

心の動きが細かく描かれていて
どうしようもなくやりきれない思いになります。
重い物語でした。
それにしてもこの終わり方は…?

判決の結果が書かれていないので
宙ぶらりんな気持ちになってしまいます。









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鍵のない夢を見る 辻村 深月

2012-08-31 | 本 さ、た行(作家)


鍵のない夢を見る

5篇の短編集。

ささやかな夢を叶える鍵を求めて
5人の女は岐路に立たされる…帯より

タイトルは「仁志野町の泥棒」
「石蕗南地区の放火」
「美弥谷団地の逃亡者」
「芹葉大学の夢と殺人」
「君本家の誘拐」


聞いたことのあるような事件もあります。
全編に渡って
主人公と関係のある男たちも
はっきりとした悪者とは言えなくても
現実にいそうでこわい。

ごく普通の人間が落ちていく。

読後感もいいとは言えませが
読み応えのある小説でした

人の心の闇を照らし出し
人間の不信感が漂ってくるようで
こわくなってしまいます。
心理描写が的確でした。
気持ちに同調する部分もあって
そのリアルさに切ない気分に
なってしまいます。

直木賞受賞作品


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ツナグ  辻村 深月

2012-07-27 | 本 さ、た行(作家)

ツナグ

亡くなってしまった人間に、
「ツナグ」という、
少年を使者として、
たった一度、
一人だけに会うことができる。

「アイドルの心得」
「長男の心得」
「親友の心得」
「待ち人の心得」
「使者の心得」
4つの連作短編になっていて、
5話の「使者の心得」で、
締めくくっています。

使者はまず依頼人の希望する人に確認、
そして亡くなった人の承諾を得て、
依頼人に会わせる。

会いたい人はそれぞれ、アイドル、
ガンで亡くなった母、
喧嘩別れした友
7年前に失踪した婚約者。

ほんのりとした優しさを感じる
ストーリーの中にあって
「親友の心得」だけは
一瞬の悪意と、
重く深い後悔を描いた
他の短編とは少し、
異なった性質の物語でした。

7年前に失踪した恋人を待つ
「待ち人の心得」は、
心が揺さぶられて涙腺決壊。
本を読んでの涙ボロボロは
最近では珍しい出来事。
涙がじわっと来るというのは
結構よくありますが…

主人公である使者「ツナグ」、
本当の名は歩美という人物は、
優しく、魅力のある高校生です。

コメント (2)
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