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花ごよみ

映画、本、写真など・

誤断  堂場 瞬一

2015-06-26 | 本 さ、た行(作家)

誤断

槙田の勤務している長原製薬の製品が、
連続して起きている死亡転落事故に、
関連しているという疑惑。

副社長から命を受け、
秘密裡に調査を開始した槙田。

長原製薬は経営不振のため、
外資企業と合併交渉中、
不祥事は避けなければならない。

槇田は見舞金という形で、
被害者家族の口とじを依頼される。

そのうち過去に起こした、
公害事件が再び問題となる。

新たな被害者の現状と
40年前の公害事件との結びつき。

槙田は被害者のためにではなく、
自分の上司の命令のまま立ち回っていた。

人命を守ることが
使命のはずの製薬会社の行状。

自社の生き残りのため
画策する役員たち。


次第に自分の行動に疑問を抱く槙田。
良心と会社との板挟みに苦悩します。

堂場瞬一の作品ですが、
いつもの警察小説ではありません。

企業の隠蔽と、
それに関わってしまった人達の、
心の動きを書いています。

隠蔽体質、公害問題、偽装工作
最近も相次ぐ医療機関の事故など
起こりえる、あるいは
今も起きているテーマを描いていて
現実感のある物語でした。







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盲目的な恋と友情 辻村 深月

2015-06-15 | 本 さ、た行(作家)

盲目的な恋と友情

辻村作品によくあるどろどろ感が
今回もありました。

ダメ男からどうしても
離れられない女、蘭花。

美しい女、蘭花に対し
コンプレックスを抱く留利絵。

一章の終わりで驚いたのに、
二章の終わりでまたまたまたびっくり!!

ほんとタイトル通り、
盲目的な恋と盲目的な友情の二人。
衝撃的なラストでした。

恋の方はまだあり得るかなと思っても
友情の方はあれほど執着するなんて…

この二人、
思い込みが強すぎてこわい!!

蘭花も留利絵も変っ!!
普通じゃないです。
共感、理解はできなかったです。






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春の庭  柴崎 友香

2014-12-21 | 本 さ、た行(作家)

春の庭

東京世田谷区が舞台。
太郎と、写真集『春の庭』に
撮された家屋に魅了された
女性が主な登場人物。

時の経過がゆるやかな風に乗って
流れていきます。

登場人物達それぞれの関係、
交流、日常が
ありありと描かれています。

風景描写はきれいなのになんだか
消滅するものに対しての寂寥感か、
灰色の薄雲に覆われたような
すっきりしない空気が漂います。

読みやすいけれど、
心が動かされるなんてことは全くなくて、
結局何も起こることなく、
淡々と話が進んでいきます。

住んでいるアパートの隣の、
気になる「水色の洋館」。

そこに以前住んでいた人が
残した庭、お風呂…
それを撮した写真集「春の庭」。

写真集に写された家、内装が
気になっているけど
普通そんなに
心が惹かれるものなのかな?







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太陽の坐る場所   辻村深月

2014-11-17 | 本 さ、た行(作家)
 
 
太陽の坐る場所 (文春文庫)

高校卒業から10年後の同窓会。
過去の高校時代の出来事。
そして現在。

複数の同級生の視点によって書かれています。

登場人物達は過去のクラスにおける
位置、地位などを
今も心の中に内在させています。

現在もまた仕事に対する序列、
都会へ出たものと、
田舎に残ったものとのわだかまり、
そんな意識を心の中に抱え込んでいる。

女優になったキョウコという
欠席を続ける同級生を
同窓会に参加させようとするが…

高校時代の出来事がきっかけなのか
キョウコに関わっていくにつれ
一人また一人と
連絡を絶っていく同級生達。

同級生達の心の動き、
心の中の描写は
やっぱり作者独特のものがあります。

人間の本性、醜さ、嫉妬深さが満杯、
これだけドロドロとした心情を
見せつけられると
なんだか怖いです。


もう終わっている地区もありますが
映画化されています。




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紙の月   角田 光代

2014-10-23 | 本 さ、た行(作家)
 
紙の月

銀行で契約社員としてパート勤務している
梅澤梨花が主人公。

彼女がじわりじわりと転げ落ちていき
約1億円を横領。

家庭では夫の言葉に違和感を持ち
その言葉の真意を聞くことはできない
そんな話し合わない夫婦。

明日に要るお金をそろえるために、
繰り返し偽の定期預金証書を作る。
顧客のお金に手をつけていきます。

金額を示す数字は意味のない数字。
枯れることのない湧き水のようなお金
何に対し支払っているのかももう不明。

歪んでしまった金銭感覚。

図書館の返却期限が迫っているのと、
ラストが気になるのとで
ページをめくる速度が加速します。

一線を飛び越え、
急速に破滅へと至る過程の
梅澤梨花の精神状態の描写がリアル。

お金に対する何ともいえない恐怖感、
いつ発覚するのかというハラハラ感もあって
印象に残る小説になりそうです。







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検察側の罪人  雫井脩介

2014-08-07 | 本 さ、た行(作家)
 

検察側の罪人

東京地検のベテラン検事、最上。
同じ刑事部に、教官時代の教え子、沖野が配属。
ある日起こった事件、
最上は、その容疑者の名前に気づく。
時効となった事件の重要参考人の名前だった。
その男が今回の事件の犯人としたら、
今度こそ法の裁きをと最上は決意。
しかし沖野がその捜査に疑問を感じてしまう。

先が気になり、
落ち着いて読めなくて
ページを先読みしながら読みました。

沖野の心を考えると本当に辛いです。
沖野の深い苦渋、やるせなさ、
それに比べてやり遂げた感がある最上。

ただ沖野を検察から
去らせてしまったことだけが痛恨の極みで
他には何も悔いることはないって…
最上の行為にはそこまでするかという感じで
納得はいかないです。
あまりにも短絡すぎ。

最上の弁護を願い出たのに
救ってもらいたかったのは、
自分だったと気づく沖野。

ラストの沖野の咆哮には
もらい泣きというかそんな
気分になってしまいました。

人権弁護士の軽薄さ、
松倉の卑劣さ。
なにが正しいのか分からなくなります。

沖野は予想通りの結果になったのに
少しも心が晴れることにはならなかった。
何も報われなかった現実。
むなしい気持ちが残りました。







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島はぼくらと  辻村深月

2014-03-29 | 本 さ、た行(作家)

島はぼくらと

瀬戸内海に浮かぶ島、
冴島に住む高校生。
朱里、衣香、新、源樹。

彼等4人は本土の高校へフェリーで通学。
島には高校がないのです。

島に住むゆえの閉塞感、
うわさ話や医者問題、それに古いしきたり…
様々な問題、背景を抱えながら
濁りのない目で現実を直視する彼等。

島で生まれ育った人、
シングルマザー受け入れで島にきた人。
立場の異なる人との交流や、
島に住む人々の思いやり、
優しさに支えられた心のふれあいを通し
男女各2名の心の成長と絆を描いています。

4人のかけがえのない友情は
これから生きていく上での
心の支えになるでしょう。

高校を卒業すると
多くの子供は島を出て行きます。
島を離れる人
事情を抱えてやってくる人、
「いってらっしゃい」「おかえり」
島だからこその別れと出会いの言葉が
大きな意味を持つようになってくるのです。

島の空気、海の色、
美しいロケーションが浮かんできます。
明るい未来を予想できるラストでした。






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All You Need Is Kill  桜坂洋

2014-01-31 | 本 さ、た行(作家)


All You Need Is Kill (集英社スーパーダッシュ文庫)

時を繰り返すループものの
SFアクション。

戦う相手は異星人で、
ギタイという巨大生物。

死に面した主人公の意識が戻ると
出撃前日の朝に戻っていた。

そして幾度も同じ戦場で戦いを
繰り返すという無限のループに放たれる。
逃れられない悪夢のようなループ。

激戦の中、敵を倒すため、
ループする度に鍛え上げられ
新兵だったキリヤ・ケイジは
熟練兵になっていく。

ループが158回に達した時、
ループの真実を知ることとなり…
キリヤ・ケイジは
この作品のヒロイン
リタ・ヴラタスキ(戦場の牝犬)と再会。

主人公キリヤ・ケイジの
心の動きと
行動が描かれています。

映画化されるようです。
この作品は日本が舞台で、
主人公も若い日本人。
なのに主演はトム・クルーズ。
一体どんな映画になるんでしょう。

戦闘ものは苦手な分野でしたが
読み進めるにつれ
引き込まれていきました。
ラストの切なさが
心に残る作品でした。




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春を背負って  笹本 稜平

2013-08-27 | 本 さ、た行(作家)

春を背負って
『春を背負って、花泥棒、野晒し、
小屋仕舞い、疑似好天、荷揚げ日和』
これら6編の連作短編集。
山岳小説です。

父の亡き後、脱サラをして、
山小屋を継いだ亨。

その父の友人で、
ホームレスのゴロさん。

山にきて生きる希望を、
なんとか見いだした美由紀。

美しく厳しい、
山の自然の中、
亨、ゴロさん、美由紀、
この3人が登山者達と出会い、
心のふれあいを経て
お互いに心の傷を癒し再生を得る。


話がうまく行き過ぎな感も
なきにしもあらずですが
懸命な生き様と、
温かい人情に心が和らぎます。

6つの短編の中では、
下界では夫が危篤なのに
雪山に閉じ込められてしまい、
下山がままならない『擬似好天』が
印象に残りました。
夫妻の絆と切なさに
じんときました。








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歓喜の仔 天童 荒太

2013-06-14 | 本 さ、た行(作家)

歓喜の仔 上巻 歓喜の仔 下巻

暗闇の中、
生き続けて行かなければならない。
それも子供達だけで。

高校を辞めた17歳の長男、誠、
母の介護を引き受けた、
小学6年生の次男、正二、
末っ子でまだ幼稚園児の香。

子供達にとっては過酷な状況の中、
重いものを背負い、
心に深いキズを受けた兄妹達。

それでも逃げ場のない悲惨さ。

タイトルにある「歓喜」は子供達に
巡ってくるのか?
「歓喜」という言葉に望みを託し、
読み続けました。

未来に少しばかりでも
希望を見いだすことができるのか?

妄想の中でのリートの話は
読みにくいので、
この部分は流し読み。

悪に手を染めても、
純粋で澄んだ心を失わない、
結構したたかな兄妹たち。

絶望のまま終わってしまうことなく
最後に家族が結束し、
兄妹達に救いがあって良かった。

すこしでも兄妹達にとって、
心穏やかな生活を
送ることができますように。
状況が改善されたとは、
言えないままでも
明るい光の射す方向へ
一歩ずつ歩み出して欲しい。




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