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花ごよみ

映画、本、写真など・

羊と鋼の森  宮下 奈都

2016-09-16 | 本 な、は行(作家)

羊と鋼の森

森で育てられた主人公。
ピアノの調律に魅了され
調律師として、生きていくことを
選んだ一人の青年。

彼の心の成長、調律師としての成長を
靜かで美しい文体で描いています。

彼のピアノに対する情熱が伝わってきます。

描写の美しさ、音、香りの表現、
作者ならではの素敵な文章で綴られていて
澄み切った空気の中に
佇んでいるような感覚になります。
巧みな表現が様々な所に点在しています。

際だった事件も起こらないし、
ハラハラするところもないけど
はるか遠くにある森の中に静かに佇み
人の優しさを感じ取るような作品。
心が浄化されるような、
ひとときを過ごせました。







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暗幕のゲルニカ   原田マハ

2016-08-11 | 本 な、は行(作家)

暗幕のゲルニカ

兵器よりも人間の心を
切り裂く一枚の絵〈ゲルニカ〉。

スペインのゲルニカ空爆を知った
ピカソは「ゲルニカ」を描いて
戦争の意義を問いかけた。 

反戦のシンボル、
ピカソの〈ゲルニカ〉を
中心とした展覧会を企画する
キュレーターの瑤子。

瑤子は芸術の巨人、ピカソを
生涯かけて追いかけ
寄り添っていこうとする。

小説の舞台は〈ゲルニカ〉が描かれた頃の
1930年代のパリと
200年の始め頃のニューヨーク。


過去と現代、時代を超えてピカソと遥子、
二人の熱い心が伝わります。

世紀の問題作〈ゲルニカ〉が描かれた頃の
フランス、スペインの様子や、
時代背景が本を読むことによって
分かってきます。

また〈ゲルニカ〉の制作過程や
ピカソの心の内を知ることができました。

戦争という現実のすさまじさを描いた
反戦の記念的な大作〈ゲルニカ〉。

ピカソは絵筆を用いて戦いました。
戦争の愚かさを訴え
平和を願うという
メッセージ性をもった物語でした。





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微笑む人 貫井徳郎

2016-07-22 | 本 な、は行(作家)

微笑む人 (実業之日本社文庫)

他人を理解するのは不可能なのに
不安を閉じ込めたくて
他人を理解したふりをして
自分が納得できるストーリーに仕立て上げる。

人の心の中なんて他人には分からないといった
ことを言いたいのかな。

ミステリーなのにどうしてきっちりとした
ラストではないのかと不満が残りました。

分かりやすいストーリーだったら
読者を安心させることができるのに
宙ぶらりんのまま置いて行かれた様な
なんとも割り切れない
気持ちが残ってしまいました。

理解不能な犯罪、
そこがこの小説が狙っているところのようですが
すっきりとした気分にはなれません。

一体真実はどこにあるのか、
決着が付かないので
後を引くもやっとした不安感が続きます。






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人魚の眠る家  東野圭吾

2016-04-25 | 本 な、は行(作家)

人魚の眠る家

離婚するつもりだった夫婦。
娘がプールで溺れ脳死状態に。
夫婦は医師から選択を求められる。

脳死判定、子供の臓器移植の
日本における状況等、
深くて重い内容の作品でした。

生死の判断、意思決定は
当事者にだけしかできないというのが
親にとってはあまりにも過酷。

母である薫子の狂おしいまでの行為に
心が痛みます。
第三者から見ると狂気に見えても、
自己満足、自己愛にすぎない行為だとしても
誰も口にだしては問いただせない状態。

薫子の選択が
正しいのか正しくないのか
答えはきっと見つけられないでしょう。





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スクラップ・アンド・ビルド  羽田 圭介

2016-02-03 | 本 な、は行(作家)

スクラップ・アンド・ビルド

芥川賞受賞作

介護がテーマの小説。

主に主人公と祖父の会話で、
成り立っています。

祖父は生きているのが辛く
早う死にたかと繰り返し言います。

主人公の孫の健斗は
祖父の願いを手助けするため、
計画を立て行動をおこします。

介護状態の老人気持ち。
医療の進歩による長寿社会。

介護される者と、
介護するもの双方の気持ちは
理解できても答えの出ない現実。

この小説、表面上は重くはなくても
尊厳死や延命治療などを
描いていて結構深いです。

誰にでも必ず老いはやって来て
死からは逃れられない。

可笑しさの底に言いしれぬ
悲しみの存在が横たわっていて
何とも言えない
やりきれなさが漂っていました。



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ラプラスの魔女  東野圭吾

2015-12-26 | 本 な、は行(作家)

ラプラスの魔女

2つの温泉地で起こった硫化水素事故。

検証にあたった研究者の青江は
その事故のあった現場で円華を目撃。

円華の持つ不思議な力。
彼女の起こす奇跡は計算上の事象。

非現実的なストーリーも
ありえそうに思えてきます。

本の中に書かれていた
「人間社会を集合体で見るとその挙動は
物理法則に当てはめて
予測できる」というのも納得。

登場人物は多いです。

でも読みやすく短時間で
読み終えることができました。


脳に欠陥を抱えた残虐な凶悪犯。
脳のメカニズムが異常な
先天的な愛情の欠落者である人物の登場。

散り散りだった謎が,
読み進むにつれ関連性がでてきて
繋がっていきます。

未来が見える能力を持つ円華
未来は知らない方がいいのかな。


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マスカレード・イブ    東野圭吾

2015-09-13 | 本 な、は行(作家)

マスカレード・イブ (集英社文庫)

マスカレード・ホテル』の
ホテルマン山岸尚美と刑事の新田浩介が
出会う前の物語。

「マスカレード」シリーズの2作目。
短編集になっています。

「それぞれの仮面」
ここでは山岸尚美の元彼が登場。
動揺を胸に納め難題の依頼に
山岸は毅然と立ち向かう。

「ルーキー登場」
新田刑事のするどい洞察力が事件を暴く。

「仮面と覆面」
宿泊客の仮面を守り通す
山岸尚美のホテルマンとしての立場。

「マスカレード・イブ」
表題作。
山岸尚美と新田浩介、
二人の活躍はありますが
まだ出会っていません。

ホテルマンという宿泊客の秘密を守る仕事と
犯人の秘密を暴くのが仕事の刑事。
相反する互いの活躍を
面白く読むことができました。
推理の展開もよくできていました。
そして読みやすかったです。







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[映]アムリタ   野崎 まど

2015-09-03 | 本 な、は行(作家)

[映]アムリタ (メディアワークス文庫 の 1-1)

得体がつかめない主人公
天才、最原最早。
彼女が作った映画、
その理由とは。

可愛い最原最早が不穏な道へと導きます。
彼女の作る映画には何かか隠されている。

映画製作に参加した二見遭一。
その監督は天才最原最早の作品だった。
そして映画は完成する。

人格の再現、
人格の変化を起こす映画。
元の人格を犠牲にして
人間の連続を停止。
怖い…。

一体この物語はどういう方向に行くのか
気になって読み進めて行きました。
先が見えない怖さ。

自主映画を作る芸大生達の軽い青春小説かな
と思い読み始めたのに
ミステリアスな方向に向かっていきます。

読みやすい小説でした。
でもなんか気持ち悪い物語です。

はじめの印象とは全く異なる物語に
なっていました。






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テミスの剣  中山七里

2015-05-29 | 本 な、は行(作家)

テミスの剣

渡瀬が逮捕した楠木、
死刑が確定したが
楠木は獄中で自ら死を選ぶ。

五年後に真犯人が発覚。
楠木は無実だった。

冤罪を明白にするため、
立ちはだかる警察組織の壁に、
阻まれながらも
渡瀬は真犯人を見いだす。
そして冤罪だったことが明白になる。

犯人とされた青年はもうすでに
この世にはいないという、
償うことの出来ない過ち。

背負ってしまった過去の重荷は
一生かかっても、
永遠に解放されることはない。

贖罪の奏鳴曲にも登場し
御子柴弁護士に向き合っていた、
渡瀬警部の過去が語られ
彼の過去を知ることができ、
今の彼の捜査法に至った理由を
伺い知ることができました。

警察組織の隠蔽、偽装…
権力を持った人間が
正義感というものを
持ち合わせていなかったら
ほんとうに怖いです。

中山七里=『どんでん返しの帝王』
この本も最後にはやっぱり
どんでん返しがありました。






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フォルトゥナの瞳 百田尚樹

2015-03-28 | 本 な、は行(作家)

フォルトゥナの瞳

他人の未来の死が、
見えてしまう瞳を持つ主人公。

彼に課せられた運命は
あまりにも残酷。
見知らぬ人の運命を変えると、
自分の体に負担がかかってしまう。

見えなければ気にならないのに…
心優しい主人公は
見て見ぬふりなんて出来ない。

大事故を予見してしまってからは、
深い苦悩から抜け出せない。

主人公の心の揺れが切ないです。

素朴で純真な彼にとって
選択肢は限られています。

結末を知りたい気持ちを
グッと我慢して読みました。
なんとかいい方向に
向かって欲しいと願いながら…
読み進めていくのが怖かったです。

最後のエピローグにはびっくり。
この物語の救いなのか、
それとも彼女は弱くてずるい女なのか…
虚しさが後々まで
残ってしまう物語でした。




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