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花ごよみ

映画、本、写真など・

火花  又吉 直樹

2015-12-26 | 本 ま、や行(作家)

火花

図書館で60人ぐらい順番を待って
やっと読めました。

お笑い芸人、二人。
徳永と天才肌の先輩の神谷。

面倒な男を自ら装っているような徳永。
彼の思いそのまま他人からは
面倒な男と認識されていた。

神谷は周囲の人とは異なっていた。
徳永に対し神谷は独自の目で
向き合ってくれた。

物語の主人公である徳永は
自分の発言が人を傷つけることを
恐れる繊細な心の持ち主。
彼は面白い人間でいるより
せこくない人間と見られたい人。

それに対し神谷は表現に全く制限がない。
周囲にこびることもない。

そんな人間になりたかった徳永は
拒絶しながらも神谷に憧れてしまう。

徳永が感じるのと同じく、
神谷の送るメールの文末の真意など、
才能を超えた彼の心は想像しにくいです。
読んでいる者にとっても
理解しにくいところがありました。
神谷の最後の行為も謎です。

心の葛藤と焦燥感。
淡々とした語りの中ににじみ出る
ものさびしさがありました。





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リバース  湊かなえ

2015-12-06 | 本 ま、や行(作家)

リバース

ゼミの仲間達との旅行中に、
交通事故によって亡くなってしまった友人。

「唯一の闇を、告白する時がきた。」と帯に。
本を読み始めるとその闇がすぐに示されます。

ある日告発文を受け取った深瀬。
それは事故当時一緒にいた
仲間達にも届いていた。

事務機会社勤務のあまり目立たない
平凡なサラリーマンの主人公深瀬。

深瀬は事故で亡くなった広沢について
もっと深く知りたいと願い
ゼミ仲間を一人ずつ訪ねて行く。
そして久しぶりに皆が集合することになる。

自分の心の中に秘めていた
学生時代の出来事。
その事件を分かち合うゼミ仲間達。
事件の真相を明るみに
出そうとしているのは誰か?

不安定な自分、他の人とは異なる自分、
間違ったことはしていないはずの自分。
広瀬のことを一番の友達と思っていたのは
単なる独りよがりだったのか?

物語は一応予測範囲の展開で終了。
…かと思ったら、最後はええっ!!でした。
遣りきれないラストになってしまいました。
   



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絶唱  湊かなえ

2015-09-05 | 本 ま、や行(作家)

絶唱

連作短編になっています。
トンガと阪神淡路震災が
それぞれの物語に絡んできます。

現実から逃避、
不確かな心の中を再確認。

自分という者を見極めたくて、
トンガに訪れた主人公達。

トンガの人達の優しさが、
震災によって心に苦悩を負った
彼女たちを包み込みます。

「楽園」
双子の一人雪絵が震災で亡くなるが
母は毬絵を亡くなった雪絵として育てる。
毬恵は毬恵として生きていくため
トンガにやってくる。

「約束」
トンガを訪れた国際ボランティア隊の女性。
彼女は友人を震災で亡くしていた。

「太陽」
震災ボランティアのトンガ人セミシを探しに
娘、花恋とトンガへ旅行にやってきた
シングルマザーの杏子。
泊まったホテルの経営者の
尚美の亡くなった夫が
セミシだと分かる。

「絶唱」
阪神淡路大震災から20年。
作者自身の体験かと思わせる物語。
ヒリヒリと痛みをもった心の傷口。
主人公の絶唱でした。




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過ぎ去りし王国の城  宮部みゆき

2015-09-03 | 本 ま、や行(作家)

過ぎ去りし王国の城

銀行から中世ヨーロッパの
美しい古城のスケッチを
持ち帰った主人公尾垣真。

絵には秘密があり、
アバターを描くことによって
その絵の中に入ることができることを知る

中学3年生の真は、絵が上手だが
ハブられている同級生の珠美に
アバターを描いてもらうことを依頼。

珠美はいろいろ複雑な事情をもつ少女。
それでもに不幸とも思える環境に
逆らわず平然と生きている感じ。
逆境に立ち向かう強さを感じる少女。

古城を探索するうち
パクさんという人物と出会う。

そして塔の中に閉じ込められた
少女がいることを発見。

十年前の失踪事件との関係を知る。
尾垣真と珠美とパクさん、
三人はある行動を起こす。

とても読みやすい物語。

ファンタジックだけではなく、
いじめやネグレクトなど
現実世界の問題も浮き上がらせます。






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悲嘆の門  宮部みゆき 

2015-06-26 | 本 ま、や行(作家)
 
悲嘆の門(上) 悲嘆の門(下)

主人公はネットパトロールの
アルバイトをしている
大学生の孝太郎。

現実に起こる事件を追う孝太郎。

廃ビルの屋上で
夜ごと動くというガーゴイルの像。
孝太郎はバイト仲間失踪を追い
ガーゴイル像に行き着く。

元刑事の都築は、別方向から
ビルの上のガーゴイル像の
真相を追いかける。

元刑事の都築と孝太郎が出会う。

ホームレス達が行方不明。
バイト仲間の失踪。
彼達は一体どこにいったのか?

ミステリアスな女子高生も登場。

守護戦士ガラは
人の心の中の渇望が満杯になると、
姿を現すもの。

孝太郎の左目は言葉を感じる。
でもその言葉は存在しない。


孝太郎の心の移り変わりが
うまく描かれています。
予想不可能な展開にドキドキ。

長編といっても読みやすいです。
ガラの住む世界にも自然な流れで
入り込むことができました。
ラストはうまく収まった感じ。

図書館で2冊同時に
借りることができました。

返却期限が迫ってきたので
後編は一日で読むことに
なってしまいました。







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パラダイス・ロスト  柳 広司

2015-06-15 | 本 ま、や行(作家)

パラダイス・ロスト (角川文庫)

「ジョーカー・ゲーム」シリーズ第3弾。

ひっそりとした雰囲気の中で、
命を懸けたD機関のスパイ達がうごめく。

「誤算」
ドイツ占領下のパリが舞台。
 一時的に記憶障害に陥った
島野という名の留学生が、
捕らえられそうになるが、
フランスの青年達に助けられる。
記憶を失っていても体はD機関。

「失楽園」
舞台はシンガポール
国より守りたいのは恋人という「悪魔の誘惑」
人としての心をも利用するD機関。

 「追跡」
英国タイムズ紙極東特派員の記者が
結城の過去に迫る。
結城中佐の隠されていた正体が
暴かれてしまうのかとハラハラ。
でもやっぱり…

とても興味深い内容。
とにかく結城中佐って
近寄りがたい存在。

「暗号名ケルベロス」
暗号解読機エニグマを巡っての事件。
ハワイ沖の豪華客船の、
船上での出来事。
気になるラスト。
人間っぽいスパイに好感。

テンポが良くってスケール感も…
それに今回は人間味もあってよかったです。

スパイ養成組織“D機関”を作った結城中佐。
優れた才能を持った人間を統括する人物。
映画に出演していた
結城中佐役の伊勢谷友介は
やっぱりぴったりです。





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その鏡は嘘をつく   薬丸岳

2015-04-19 | 本 ま、や行(作家)

その鏡は嘘をつく

痴漢容疑を受け自殺した、
大学病院のエリート医師須賀。

その死に他殺の疑いを持った
志藤検事は再捜査を依頼。

それとは別に夏目刑事は、
失踪した医学部予備校生幹夫を
幹夫の親戚の沙紀と捜査。

予備校の教師、峰岸彩子と元予備校生の園部が
医師須賀に対し冤罪を企てていた。

そして医学部予備校生幹夫の疑わしげな行動。

検事の目と刑事の目、
それぞれが事件を追う。

方向性の異なる夏目刑事の捜査、
志藤検事の捜査が一つになったとき
事件の真相が見えてくる。

医者の家族が自分たちの子供である
予備校生にプレッシャーを加える。

加害者、被害者ともあまり
共感は出来ませんでした。

医師須賀の行為も不思議だし、
志藤検事の人間性も不透明。

犯罪の動機も納得しがたいです。

登場人物が多く、
それぞれの角度で事件を追います。
そして何度も覆る証言、
面白いことは間違いないですが
なんだかしっくりこないことが
多くあったのも確かです。






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豆の上で眠る   湊かなえ

2015-03-21 | 本 ま、や行(作家)

豆の上で眠る

小学3年生の姉が誘拐され、
そして行方不明。

2年後に帰って来た姉は
本物なのか?

妹である結衣子は、
違和感から抜け出せない。
そんな疑問を抱き続けているのは
自分だけなのか?
まとわりついた疑念から
解放されない状態が続く。


姉がいなくなった時点で、
妹の結衣子は小学1年生。
2年間会っていなくても、
本物かどうかは分かるでしょう。

同じく祖母も両親も…
なんか不思議な気がします。

真実を明かさない理由は?
なぜ痩せていたのか?
疑問が残りました。

物語は過去の回想、現在と
交互に進行していきます。

母親の姉を探し出すための、
病的かと思えるほどの行為。
事細かな描写は引きこまれます。

姉も妹も家族も心の不協和音を
持ち続けたままでは苦しいだろうな。

「本ものって、何ですか」
本ものは結衣子にとっては
幻想でしかなかった。
家族の絆ってなんなのでしょう。
すっきりしない気持ちは残ります。





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悟浄出立 万城目学

2015-02-27 | 本 ま、や行(作家)

悟浄出立
中国の有名な古典を題材にした
短編集になっています。

中国古典をモチーフに、
その古典に登場する
「脇役」だった人に焦点を当て
それぞれの古典の中の登場人物の抱える
悩みや鬱屈した心情が書かれています。

中国古典の世界を味わうことが出来ました。

「悟浄出立」
表題作になっている作品です。
西遊記の沙悟浄の葛藤。
これはいつもの万城目さんっぽい作品。

「趙雲西航」
三国志の趙雲の望郷の想い。

「法家孤憤」  
始皇帝の暗殺を謀った男、
荊軻と読み方が同じの京科。
二人の出会い。

「虞姫寂静」
虞美人の命を懸けた舞。
潔さに胸が打たれました。

「父司馬遷」
司馬遷のことはネット検索しながら
読みました。
失望の中にいた父は
書くことを勧める娘の愛に救われます。

遠い昔の物語が、
作者によって蘇ります。
それぞれが切なさを伴い、
哀しみが余韻として残る、
静かでしっとりとした
物語になっていました。




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満願  米澤穂信

2015-02-20 | 本 ま、や行(作家)

満願

6話の短編になっています。

6つの事件に隠された謎。
結末に明かされる、
心の闇と冷酷さ、
濃密でずっしりと
読み応えのある話でした。

「夜警」
交番勤務の警官
拳銃が好きということだけで
警官になった男 

「死人宿」
温泉宿での自殺者
主人公の謎めいた心の動き

「柘榴」
娘の心の危うさ

「万灯」
企業戦士の緊迫感

「満願」
刑期を終えた妻、
いったい動機は?

「関守」
不気味で怖ーい話。

六つの話とも、
自らの願望と自己保身のため、
犯罪を起こしてしまった人たち。

その犯罪に対し、
どうして悪いのかを
本人はあまり自覚していなさそうなのが、
ほんと恐ろしくてゾッとします。




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