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花ごよみ

映画、本、写真など・

山女日記  湊 かなえ

2015-02-15 | 本 ま、や行(作家)
 
山女日記

7つの連作短編小説になっています。
登場人物のリンクもあります。

山を目指す女性を描いていています。

『妙高山』デパート勤務の律子と由美。
『火打山』バブリーな美津子。
『槍ヶ岳』律子の先輩の牧野。
『利尻山』医者の妻となった姉と希美
『白馬岳』希美と姉が姉の子供の七花と登山
『金時山』律子の同僚舞。
『トンガリロ』帽子デザイナー柚月。
短編毎に少しづつのつながりを
持たせています。

それぞれの山に登ることによって
美しい景色の中に身を置き、
自分を見直し、
悩みに対しての答えを探っていく。

達成感から心の変化、
覚悟も生まれてきます。

女性の心理の複雑さ、
切なさもあります。

登山の効能、
すばらしさが描かれています。

そして一歩前へ、
光の差す方向へと進み出す。

湊さんいつもの毒はなく
物足りなさも感じてしまいますが…







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リカーシブル 米澤 穂信

2014-12-11 | 本 ま、や行(作家)

リカーシブル

父親の不正発覚によって
引っ越してきた家族。
ママと姉と弟。

その町で起きる謎めいた数々の事件。

不安定な環境、厳しい現実に身を置く
中1の主人公、ハルカ。

転校先で色々気を遣い、
家庭では父親の再婚相手なので
血のつながりのない母と弟。

閉塞感のある地方の町の偏狭的な人々。

予知能力を感じさせる弟の言動。
タマナヒメの伝承、
不気味さをまとう空気感。

不穏な中にあっても健気なハルカ。

弟サトルとの交わりもほほえましい。

謎が解き明かされても
重苦しい感じがつきまといます。

世渡り上手で、周囲に気を配る、
しっかりもののハルカ。

でも、なんといっても、
まだまだ中学1年生。
ハルカの将来に不安が残りました。





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ジョーカー・ゲーム  柳広司

2014-10-11 | 本 ま、や行(作家)
 
ジョーカー・ゲーム (角川文庫)

昭和の初期、D機関という
諜報員養成所に関する
ミステリー・スパイ小説。

ハイレベルな能力を駆使して
活動するスパイ達の作戦、
行動が描かれています。

ずっと前に買って、
読んでいなかったこの本、
映画化を知ってやっと読む気になりました。

[ジョーカー・ゲーム]親日派の外国人のスパイ容疑。

[幽霊-ゴースト]D機関卒業生がイギリス総領事館公邸を調査。

[ロビンソン]英国諜報機関に捕らえられたD機関卒業生の脱出。

[魔都]舞台は上海、派遣憲兵隊大尉を調査。

[XX-ダブル・クロス]二重スパイと密室殺人の真実。

・・・という風に短編集の形をとっています。

一度登場した人物は
それ以降の登場はなく、
主役が各編ごとに変わっていきます。

唯一、陸軍の中での、
スパイ養成機関の設立者であって
スパイ養成機関=D機関を司る
結城中佐と言う人物だけは、
各編に登場があります。

「死ぬな、殺すな、とらわれるな」という
スパイとしての確固たる信条を持つ
結城中佐の存在が、
暗闇にきらりと一筋の
光を放っていてかこいい!!




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ペテロの葬列  宮部みゆき

2014-09-05 | 本 ま、や行(作家)

ペテロの葬列

今多コンツェルン会長室直属
グループ広報室に勤める
杉村三郎が主人公のシリーズ。
『誰か』『名もなき毒』に続く3作目。

杉村三郎が巻き込まれた、
ある老人によるバスジャック。
彼を入れ乗客等6人が人質となる。

老人は拳銃を所持していた。
犯人死亡、全員救出で事件は
解決のように思えたのだが
そこからが始まりだった。

後日もう亡くなってしまった
犯人から慰謝料が届く。
慰謝料を受け取るか受け取らないか。
人質それぞれの心の葛藤と動揺。
事件の真実とは?

今、小泉孝太郎主演で
テレビドラマで放映中の原作。

図書館で長い期間待たされ
ドラマ開始と同時に借ることができました。
そしてドラマが終わる前に
読み終えました。

今までの事件の経緯が
ぼやけてしまうような
思いも寄らなかったラストにびっくり!!
ドラマも同じ結末なのかな。

人間の心の闇を描いたこのシリーズ。
これからも続いて欲しいです。
続くとしたら次回は
杉村探偵のような感じが…

このままで終わると
悲しいまま終わってしまいます。
   







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女のいない男たち  村上春樹

2014-08-26 | 本 ま、や行(作家)
 

女のいない男たち

それぞれが繋がりをもたない
6編の短編からなっています。

女性に対しなんらかの、
喪失感を得てしまった男。
すべて男性が主人公

「ドライブ・マイ・カー」
主人公は舞台俳優、
妻を亡くした舞台俳優である男と、
女性ドライバーの話。

「イエスタデイ」
田園調布出身なのに関西弁を話す男、
彼の友人で芦屋出身なのに標準語を話す僕。

「独立器官」
主人公は女を愛してしまった整形外科医。
女性には生まれつき具わった、
嘘をつくための独立した器官がある。

「シェエラザード」
男に十代の頃の物語
(空き巣狙いの時代)を語る女。

「木野」
妻の不貞から離婚、
バーを営む男の話。

「女のいない男たち」
かつての恋人の夫からの電話。

うわべは読みやすいのに、
深さがあって
どこか現実感がない物語。

独特の空気感が漂う
いつもの村上春樹らしい諦観と
不安感が漂う短編集でした。




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一兆円の身代金  八木圭一

2014-08-21 | 本 ま、や行(作家)

 一千兆円の身代金

元副総理の孫が誘拐される。

政府に突きつけられたのは、
身代金として、
財政赤字と同額の1085兆円を要求。
あるいは財政危機の責任を反省、
国民への謝罪、再建案の提示。

犯行声明が報道機関へ。

前代未聞の要求に、政府、
捜査陣、マスコミは騒然。

捜査陣はあるブログの存在に行き着く。

一兆円の身代金という、
魅力的なタイトル。

でもなんだかタイトル程、
緊迫感はあまり感じられず
リラックスして読むことができました。

現在の借金漬けの体質、
政治問題が動機になっています。
ミステリーというよりは作者の怒り、
国の未来を憂えるという
作品自体から発する
主張みたいなものが読み取れます。

物語はそれぞれの登場人物の視点で
進んでいく構成になっています。

読みやすくストーリーの構成も
よくできています。

誘拐の結末は改題前のタイトル、
応募時のタイトルで
予測がつくので、
選考過程が書かれた巻末を
先に読んでしまうと分かってしまいます。

第12回『このミステリーがすごい!』大賞・
大賞受賞2作品のうち1作。

大賞受賞のもう1作、
梶永正史作
『警視庁捜査二課・郷間彩香 特命指揮官』も
読んでみようかな。





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人生相談   真梨幸子

2014-08-11 | 本 ま、や行(作家)
 
人生相談。

新聞に連載されている「よろず相談室」に寄せられた
色々な内容の相談。

「居候に悩んでいます」 
「しつこいお客に困っています」
「隣の人がうるさくて、ノイローゼになりそうです」 
「セクハラに時効はありますか?」
「大金を拾いました。どうしたらいいでしょうか」 
「西城秀樹が好きでたまりません」
「口座からお金を勝手に引き出されました」 
「占いは当たりますか?」 

短編連作になっています。
それぞれの人生相談が複雑に絡んでいて
終盤で一つにまとまっていく
ストーリーになっています。

タイトルにもなっている「人生相談」
この人生相談にある事件が潜んでいます。
そして登場する人物が交錯、
時系列も前後し
複雑な展開を見せます。

登場人物も多く、
そして日にちをかけ、
のんびりゆっくり読んでいたので
訳が分からなくなってしまいました。
前のページをめくり、
読み直す羽目に。
この物語は一気読みがお勧め。

それぞれの人物と事件が
込み入った係わり合いをもつ構成、
作者独特の発想からなる、
こんな小説も新鮮でまたいいものです。







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約束の海 山崎豊子

2014-06-15 | 本 ま、や行(作家)

約束の海

 
作者が死去されたことによって
未完のまま終わってしまった作品です。

自衛隊というものの使命、
国民の自衛隊を見る目など
いろいろ考えさせられる、
ストーリーになっていて
この作品だけでは十分とは言えないですが
かなりの読みごたえはありました。

でもやっぱり主人公である花巻の、
これから先が知りたいし、
頼子さんとの恋の行方も
気になってしまいます。

彼の進化していく過程を、
本の中で確かめたかったです。

第二部、第三部と続くはずだった物語。

約束の海その後を読むと
花巻の苦脳が拡大していくのが予測できます。

巻末には第二部、
第三部の構成の紹介があります。
まだまだ大きな展開が
構想されていました。
壮大な物語になるだろう予想がつきます。

完結を見ないまま終了してしまい
本当に残念です。
  






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母性  湊かなえ

2014-05-02 | 本 ま、や行(作家)

母性

この物語は、
「母性について」「母の手記」「娘の回想」と
3つに区分された構成になっています。

各章とも登場人物の独白で綴られています。

母親が書いた
『愛能う限り娘を大切に育てた』という手記と
娘の回想。

母と娘の心が交わらない。

母親と娘、
二人の見方や考え方の、
食い違っているところが
明らかになるように描かれています。

特に母親の心の歪みに
腹立たしいと同時に、
心が痛みます。

テーマである母性が、
ねじ曲がり変質してしまっているのです。
育てた娘との心の隔絶が、
痛々しい。

愛を受けて育ったとしても
子供にその愛が受け継がれてはいかない。

愛という言葉を使いたがるのは、
愛されていない証拠。
誰からも愛されていないと感じてしまった娘。

祖母の命と引き換えに助かった娘。
祖母の最期の願い『愛能う限り』
娘を大切に育てて欲しいという
思いに従って娘を育てたつもりの母。

親子にかかわらず、
人の心の中って、
外からは計り知れないものがあって
難しいものがあります。

ま、救いのあるラストで、
一応ほっとしました。





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聖なる怠け者の冒険  森見 登美彦 

2014-03-09 | 本 ま、や行(作家)


聖なる怠け者の冒険

舞台は京都
時は祇園祭宵山土曜日。
そこで展開される
ばかばかしいドタバタ劇。

怠けるためには、
なんでもするという主人公、
大和田君はどんな場面でも
怠け者を貫き通す。

そしてこれもまた
怠け者の浦本探偵。

究極の方向音痴の玉川さん。

計画をたて、
充実した土曜日にするための行動を起こす
恩田先輩と桃木さん。
このカップルの行動も
こんな人っているなあって感じで、
ほのぼのとしてまたいいです。

アルパカそっくりの五代目。

善行の活動日誌、
資料が活力の源の
黒マントのぽんぽこ仮面。

登場人物がみんな個性的で
愛すべき人物です。

そんな登場人物達が、
時と地点を移行しながら、
縦横に絡み合う、
濃密な一日の出来事を描いています。

くだらない事にも一生懸命、
どこか可愛いくて
ほほえましいのです。

そして怠け者の心の中を
よく見抜いています。

宵山の雰囲気もあって、
奇怪で不思議な世界に、
迷い込んだような感覚です。
どこへたどりつくのか不安でしたが
なんとか最後は
うまく収まっていました。

北白川ラジウム温泉、
検索してみました。
なんかいいところみたい、
行ってみたくなります。

何がなんだか
よく分からないままに
楽しめる物語でした。



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