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花ごよみ

映画、本、写真など・

忍びの国  和田竜

2017-05-07 | 本 ま、や行(作家)

忍びの国 (新潮文庫)

時代は織田信長が、
勢力を持ちつつある戦国の世。
天正伊賀の乱が背景。

個性的な戦国武者達が登場。
多彩な登場人物が
史実を基に描かれています。

無門が手柄を得るため
伊賀者を殺めたことから
織田軍が敵に。

伊賀忍者vs織田信雄軍
戦闘シーンはスリリングで
読み応えがありました。

日常的に裏切りが行われる
非情な忍者社会。
そんな中でも、怠け者だが
忍者としては技量に優れた主人公無門。
彼の愛するお国の前ではダメ亭主でも
お国の存在が人間の心を取り戻します。

お金が一番、忍者としての誇り、
忠誠心など持ち合わせていない伊賀忍者、
イメージ通りではない忍者の世界。
きっと忍者ってこの小説に
書かれている方が正しいのかな。

映画化されるのを知って読みました。
無門は嵐の大野智、
お国は石原さとみが演じます。

初めのうちは退屈でもう読むのを
止めようかなと思いましたが
読み進めていく内にどんどん
引きこまれていきました。







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コンビニ人間   村田 沙耶香

2017-05-06 | 本 ま、や行(作家)

コンビニ人間

主人公の36歳独身の古倉恵子は
「コンビニ」が全て。
「コンビニ」で働くことによって
心の安定を得ていた。
婚活目的のアルバイト白羽と
出会うことによって
変化していくかに見えたが…


「コンビニ」の為の健康。
「コンビニ」が自分にとって
生きていくことの指標。
「コンビニ」ならマニュアル通りにすれば
安心して世界の歯車になって
楽に生きていける。


ただ生き方が不器用なだけ、
人はそれぞれ違っていて当然。
普通とは異なっていてもそれが個性。
周囲の人とは違っていても
彼女は別におかしくない。

自分が人と違っていることを意識し、
人をトレースしてまで
常識的な人間であることを
心がけて上手に生きていこうとする
彼女が痛々しく思えました。
なにも無理することはないのです。




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希望荘  宮部みゆき

2017-03-30 | 本 ま、や行(作家)

希望荘

『誰か Somebody』『名もなき毒』『ペテロの葬列』に続く
杉村三郎シリーズ4作目。

「希望荘」「聖域」「砂男」
「二重身(ドッペルゲンガー)」の4編の短編集。
短編それぞれが繋がっています。
そして結構切なくて重い内容です。

「希望荘」
老人ホームに居た依頼者の父は
罪を犯していたのか、
告白の真偽の調査を依頼。

「聖域」
アパートから貧しかった、
おばあさんが突然消えた。
なのにある所で小ぎれいになった
老婦人を見かけた。
何があったのか調査を依頼される。

「砂男」
仲の良い夫婦だったのに
突然主人が失踪を遂げる。
なぜ主人が駆け落ちしたのか。

「二重身(ドッペルゲンガー)」
大震災が背景。
行方不明のオーナーは
生存しているのかという依頼。

以前TVドラマを見ていた影響で
主人公杉村三郎役の小泉孝太郎の顔が
どうしても浮かんできます。

なんだか力を抜いたような
ふわっとした杉村三郎の性格が
見え隠れします。
そんな雰囲気を持っていても事件を
解決するべく起こす行動、判断力は
やっぱりさすが杉村三郎。

人間の身勝手さ、
覗きたくない心の部分が描かれていますが
杉村三郎の柔和さが
それらを軽減させてくれます。

『ペテロの葬列』では妻と別れてしまい、
あれれと思いましたが、
事務所を起こして私立探偵になる過程の、
通過点だったのかな。
杉村三郎がついに探偵デビューします。

心に癒されることのない、
深い傷を負っていても
マイペースに生きていると言う感じの杉村三郎。

娘の桃子ちゃんとも、
うまくいってるようでよかったです。

「杉村探偵事務所」
これからも続いていく予感。




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楽園(上、下) 宮部みゆき

2017-01-26 | 本 ま、や行(作家)
 
楽園 上 (文春文庫) 楽園 下 (文春文庫)

WOWOWでドラマ化されている途中に
先が知りたくて読み始めました。

主人公前畑滋子は9年前の
「模倣犯」事件を取材していたフリーライター。
彼女はまだ「模倣犯」事件から受けた
ダメージから立ち直ることができないままいた。

「模倣犯」から9年後、
ある女性から
12歳で交通事故で亡くなった
子供が描いた絵を
見て欲しいという依頼を受ける。

その絵には報道される前に描かれた
16年前の事件の絵があった。
その少年は特殊な能力を
持ち合わせていたのか。

超能力ということを
ドラマではどういう風に
収拾させるのかな?
気になります。

16年前の事件とは
家が火事で焼かれた後、
長女を床下に埋めたと
自供した夫婦がいた事件。

夫婦は時効によって罪から免れたが
少年はそれが明るみになる前に
その様子を絵を描いていた。

滋子は16年前の事件を追うことになる。

夫妻の事件に至った
苦しい心の内が切なかったです。

上下巻の長い物語、
描かれる悲しい親子の縁。

ただ重いだけの内容ではなく
ラストには一筋の明るい光が見えて、
少しは救われました。





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ポイズンドーター・ホーリーマザー  湊かなえ

2016-10-29 | 本 ま、や行(作家)

ポイズンドーター・ホーリーマザー

「マイディアレスト」「ベストフレンド」
「罪深き女」「優しい人」
「ポイズンドーター」「ホーリーマザー」
6編の短編からなる作品集。

「マイディアレスト」
母の姉妹の育てられ方に差別を感じた姉。

「ベストフレンド」
漣(さざなみ)大豆生田(まみゅうだ)
直下(そそり)読みにくい名前の3人。
脚本家を目指す3人はライバル。
それぞれが心に嫉妬の感情を抱く。

「罪深き女」
無差別殺人者正幸に対して
思い込み違いをしていた幸奈。

「優しい人」
母親から優しくしろと躾けられた
人に興味がない明日実。

「ポイズンドーター」
女優の藤吉弓香は自分を
コントロールしようとする
母親が原因の頭痛に襲われていた。
娘から見ると母の思いを「毒」と感じていた。
「毒親」をテーマのトーク番組に
出演依頼が届く。

「ホーリーマザー」
「ポイズンドーター」から視点を変えた物語
視点を変えると毒親は聖母だった?

独白形式をとったそれぞれが
湊かなえが得意としている
悪意を感じ取れる作品集です。

登場人物は心の方向が、
自分の内に向いています。
自分の思いが伝わらないところから起こる悲劇。

母娘の関係は何が正解なのか
なかなか探しだせません。
親の心、娘の心、正義とは真実とは何なのか、
不穏な闇の中に閉ざされ
見い出すことはむずかしいです。







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ユートピア   湊かなえ

2016-05-25 | 本 ま、や行(作家)

ユートピア

舞台は海辺の町。
地元民の菜々子、
夫の転勤によってこの町に来た光希。
楽園を作り上げようと
他の地からやって来たすみれ。
これらの女性3人が主人公。

子供の作文から始まった「クララ翼」と
名付けられた活動。
善意の活動がゆがめられていきます。

過去のある事件が
絡み合いながら進んで行きます。

人情が存在すると思った田舎町なのに
煩わしい人間関係、閉塞感、悪意の数々…
会話の内容に心の中の暗闇が
何気なく顔を出したり…

子供だけは健全かなと思っていても
子供でさえ嫉み悪意が存在。

事件の鍵を握る
健吾のことはよく分からないまま
終わってしまいました。

ところで菜々子の義母って
一体何歳なんでしょう。

人間の弱さ、醜さ…
心の動きがよく描かれていて
不安感もたっぷりでした。
   



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Aではない君と  薬丸岳

2016-05-25 | 本 ま、や行(作家)

Aではない君と (講談社文庫)
少年犯罪の加害者となってしまった息子。
当事者になってしまった家族。
父親の戸惑い、反省、そして深い苦悩。
加害者の父親の目から
事件の真実を追及していきます。
とても重苦しいテーマの物語です。

妻とはすでに離婚をしていて
元妻と少年が一緒に暮らしていました。

世間は少年Aとして彼を見ても、
親からすれば愛するわが子。

父親は「付添人」となります。
心を閉ざしていた少年が
父親の尽力によって少しずつ語り始めます。
そして事件の真相にたどり着きます。
息子の犯罪には原因となる事柄が存在。
父親が知った事件の真実。
息子の心が痛々しいです。

たとえどんな理由があろうとも
彼の行為は決して許されることはないのです。
他の解決策を見出すことができなかったのか?
やりきれない気分になります。
それでも少しだけは
救いが見えるラストでした。





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怒り(上)(下) 吉田修一

2016-03-30 | 本 ま、や行(作家)
 
怒り(上) (中公文庫) 怒り(下) (中公文庫)

映画化を知り読みました。

配役は槙洋平-渡辺謙、槙愛子ー宮崎あおい、
田代哲也ー松山ケンイチ(千葉)

藤田優馬-妻夫木聡、大西直人ー綾野剛(東京)

田中信吾ー森山未來、小宮山泉-広瀬すず(波照間)

そして犯人を追う刑事は三浦貴大ということです。


ある事件が起こり犯人は逃走。

その事件を基にして千葉、東京、波照間と
三つの物語は平行しながら進行していきます。

各物語に前歴不明の男が3人登場。
田代と直人と田中があやしい男です。

事件の犯人かもと疑い始める周囲の人達。
その周囲の人達の揺れ動く
心の動きが秀逸です。

犯人の一人を除きみんな弱くて
哀しくて愛しい人達でした。

結局、不明のまま終わってしまった
刑事と交際していた美佳を加えて
前歴が不詳の4人。
その4人の周りにいる人々が、
不安と猜疑心を持ってしまい
悩みながらも結局は
彼らを傷つけることになってしまい、
周りの人達も同じく傷つきます。

心が痛くなる小説でしたが
少しは希望の光が見えてくるのが救いです。
登場人物が多いですが
読みやすい小説でした。






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クリーピー  前川裕

2016-03-16 | 本 ま、や行(作家)

クリーピー (光文社文庫)

主人公は犯罪心理学の教授、高倉。

刑事の野上に一家失踪事件への
考察を依頼される。

その野上は行方不明、
向かいの家の出火。

「あの人は本当のお父さんじゃない」
隣の女子中学生が発した不可解な言葉。
「奇妙な隣人」の真の姿とは。

前半は多くの謎の存在。
後半は結構ドロドロな人間関係。
ラストはどんでん返し。

ぞっと身の毛がよだつような、
気味の悪いという意味を持つ
『クリーピー』のタイトルそのまま、
漂う暗い不安感、
ゾッとするような気味が悪い物語でした。

黒沢清監督で映画化を知り読みました。

西島秀俊が主演、
隣人は香川照之。
MOZUメンバーの二人が出演です。
女子中学生は
ソロモンの偽証でデビューした
藤野涼子が演じます。






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透明カメレオン  道尾秀介

2015-12-28 | 本 ま、や行(作家)

透明カメレオン

主人公は冴えない容姿、
でも魅力的な声を持つ
ラジオパーソナリティーの恭太郎。

いつもの行きつけのバーで
三梶恵という名のる女の子に出会い
彼女の計画に、
バーの常連客たちと協力することに。

魅力的なキャラクターである
「if」という名のバーの常連客、
そしてママ。
明かされる過去は悲劇的。
ヒロインだけがあまり
魅力的ではなかったです。

バーの常連客たち、
うわべは明るく振る舞っていても
それぞれ過去の悲しみを抱えていて
ラジオから流れる恭太郎の声に
救いを見いだしていた。

恭太郎とバーの常連客、
悲しく重い現実を覆い隠して
傷は治りきらなくても
優しさで覆った嘘の世界に
心を委ねるのもまた正解なのかも。

現実に存在しなくても信じることで
そこに存在すると。
透明な世界でも願うことで
それと接することができる。
新しい今を作る。
たとえ嘘でも事実より事実になる。

最後の恭太郎の嘘は
悲しすぎて涙。
恭太郎の周りには
「if」の常連客がいて救われます。
きっと辛い過去を乗り越えて
未来に向って歩いて欲しいです。






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