突然、和製ポップスです。この曲、ビートルズ・フリークの作曲家が作った曲だと言うことが直ぐ解ります。勿論、Beatlesの盗作ではなく、Beatlesからの引用をちりばめ、換骨奪胎、良くできた格好いい曲だと痛感します。Youtubeでは
http://www.youtube.com/watch?v=XRVShbxb87Q&feature=related
其れでは解説。
1.Intro.でキーンというハウリングの音が入ります。これは、Beatlesの”I feel fine"を彷彿とさせます。ジョン・レノンのギターがハウッたとのことですが、格好いいのでそのまま使ったそうな。また、イントロ部分でのサイドギターがⅠsus4-Ⅰを二回繰り返していますが、これもどっかからの引用。(”I once hada a girl,or should I say ,she once had me~”
2.歌の最初の部分のコード進行は、Ⅰ-Ⅶ♭-Ⅵminor-Ⅱ。この極端なコードの変化は、Beatles初期のコード進行に良くあります。Ⅶ♭をよく使っているのも、そうです。
3.”そういうことにしておけば”の後に入るリードギターのオブリガート、これもどっかで聴いたような。
5.その後、”Day Tripper"のIntoro.を変形させたメロディーが入ります。
6.間奏では、ジョン・レノンのハーモニカ風の演奏。それに、”Please please me”のIntro.のメロディーが。その後も”Twist and shout"(これは、Beatles のオリジナルではありませんが、よく売れた曲です。この歌をジョンが歌うと、声がかすれてしまうので、いつも最後に歌ったそうな。”
7.エンディングでは”Yeah,yeah,yeah"とあります。又、最後のコードはⅠ6(ドミソラ)、これらは”Sher loves you"からのアイデアです。
2.についてですが、この当時、こういったコード進行は殆ど無かったように思います。Beatlesの初期の作品は、今までにあまりなかったコード進行を使った曲がいくつかあり、其れが、荒々しさ、ダイナミックな感じ、新鮮な感じを曲に与えたのです。ジャズでは、Ⅶ♭-Ⅵminorと言うコード進行は、ジャズ、スタンダードではⅤminor7-Ⅵminorとするのがふつうです。Ⅴminor7-Ⅵminorと、スムースなコードの変化をねらったのに対して、Ⅴminor7のルート音Gを取り去り、Ⅶ♭という3和音にしたので、より乱暴で、荒々しく、本能的で新鮮な表現になったと思います。初期のBeatlesのコード進行における貢献はやはり大きかったと考えています。その当時、ポップスではあまりなかった新鮮なコード進行、ジャズでは、稚拙と考えられ、取り上げられなかったコード進行をBeatlesは演奏していたのです。この曲には、そういう、如何にもBeatlesのコード進行を思わせるところが他にもありますが、私自身、ジャズに入ってから、Beatlesは卒業したので、今思いつく点はこの程度です。とはいえ、この曲を聴くたびに、パフィーの、上手と言うより、若い、荒っぽい歌い方と相まって、良いパーフォーマンス、未だに好きな和製ポップスの筆頭です。
ゲイジツでは、どんどん、複雑化、高度化していく事のみが重要なのでは無く、むしろ単純化して、インパクトを強める、と言うこともあるように思います。そして、複雑化のみを追求していくと、本筋を外れることもある。人間の感覚を前提にした芸術では、特にジャズ、ポップスなどでは、複雑化と共に、逆に単純化も重要な要素であると思っています。