日本裁判官ネットワークブログ
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いよいよ私の裁判官としての13回目かつ最後(まもなく定年退官のため)の引っ越し準備が大詰めにきました。来週から2・3週間はブログの書き込みもできなくなりそうです。

 瑞祥さんも書かれていたように,いろいろな土地の風土や歴史に触れられることは転勤のひとつの大きな魅力ですし,仕事の内容や一緒に仕事をする職員が変わることは一種の緊張感を伴うとはいえ,新たな意欲を生み出すものでもあります。

 また裁判官が同じ裁判所で長く仕事をすることは,その土地特有の事件や人物像に迫ることができるという長所がありますが,やはり土地の人や弁護士との交際が深まるにつれ,癒着を疑われかねない事情も増えるという悩みがつきまといます。
 私もある支部に4年勤務した際の最終年は,道を歩いていて事件当事者から突然挨拶されたり,飲み屋で元刑事被告人と遭遇したりすることが多くなった気がしました。

そのため,裁判官が3年から5年の周期で全国を転勤するのはやむを得ないと考えていましたが,だんだん引っ越しが苦痛となってきたのも事実です。
 引っ越し作業そのものが肉体的に苦痛ということや,転勤費用が引っ越しの実費に達しないことがほとんどであることなどの目先のマイナス面のほか,せっかく親しくなった地元の人との別れを繰り返すことは,裁判官の生活者としての姿を薄くしますし,特に子供が転校することをいやがるなどした場合には,やはりひるんでしまいます。

 単身赴任者が増加しているのもそのような事情からと思います。
 しかし単身赴任中に健康を害した裁判官も少ないとはいえません。

ドイツの裁判所では希望しない限り,転居をともなう転勤はなく,その代わり数年ごとに民事・刑事・家庭と仕事を代わり,または近隣の裁判所に転勤し,特に転居してでも大裁判所や上級審で働きたい人はそのようなポストが空いたときに応募し,複数の応募には選考委員会が適任者を選抜する,という制度という風に聞いたことがあります。

 日本も癒着を防ぎ,かつ無理な引越を避ける裁判官の転勤制度はないのかを真剣に考える時期に来ているのではないかと考えるのですが,いかがでしょうか。「花」

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