インド新聞 08/25/2011 07:41 AM .
今、インドの新聞やテレビは、汚職防止組織(ロクパル)の設立を求めて断食を続ける社会活動家アンナ・ハザレ氏のニュースで持ち切りである。インド各地でハザレ氏を支持する集会が開かれ、社会階層を越えた多数の人々が支持を表明している。マハトマ・カンディーがイギリス植民地支配に対抗する手段として用いた断食により汚職根絶を訴えるハザレ氏は、「現代のガンディー」ともいわれている。
ハザレ氏の人気はとどまるところを知らないが、それでもハザレ氏やその運動には批判の声もある。これらは今のところ少数意見に過ぎないが、ハザレ氏の運動を客観的に位置付けるには役立つはずであり、ここにまとめた。
(1)議会制民主主義の否定
議会による法律制定の手続きに従わず、断食により自分たちが提案している法律の実現を試みるのは議会制民主主義の否定であるとする意見で、政府の基本的立場。ハザレ氏への対応について政府を激しく批判しているインド人民党(BJP)や共産党マルクス主義派(CPI-M)も、この点については同意見であり、ハザレ氏側の法案をそのまま受け入れることはできないとしている。
(2)ヒンドゥー教寄り
デリーにあるモスク、ジャマー・マスジドのイマーム(宗教指導者)であるサイード・アフマド・ブハリ氏は、ハザレ氏の運動は反イスラム的であり、イスラム教徒は運動を支持しないように説いている。ブハリ氏は「バンデー・マータラム」(インドの愛国歌)や「母なるインド万歳」などの掛け声を用いるハザレ氏の運動をヒンドゥー教寄りとして批判するとともに、運動の資金が民族義勇団(RSS)などのヒンドゥー至上主義団体から出ているのではないかとの疑念を呈している。
ブハリ氏の意見は、あまりに狭量であるとして、他のイスラム教徒指導者からも批判を受けた。しかし、ハザレ氏の運動とヒンドゥー至上主義団体とのつながりを不安視する人は少なくない。
(3)上流階層による運動
ブッカー賞受賞作家のアルンダティ・ロイ氏は、22日付「ザ・ヒンドゥー」紙に「私はアンナ氏になりたくない」という記事を発表した。ロイ氏は、ハザレ氏の運動は、農民の自殺、先住民族の抑圧、開発による住民の強制立ち退きなど、社会の下層に位置する人々の問題を無視したものであると批判した。ロイ氏は、ハザレ氏が過去に2002年グジャラート州でのイスラム教徒虐殺事件への関与を疑われているナレンドラ・モディ州首相の開発モデルを称賛したことがあるほか、ハザレ氏の側近グループのメンバーのほとんどが多国籍企業などから資金を受け取っていると指摘している。
何事にも必ず反対意見がでてくるのがインド社会であり、国民の広い支持を受けているハザレ氏の運動ですら例外ではない。これからもこうした反対意見が相次ぎ、運動の足元を崩してしまう可能性すらある。しかし、ハザレ氏の運動もインド社会の「反対意見の表明の自由」に依拠している部分が大きい。多様な意見が許される風潮はインド社会の弱みであると同時に、強みにもなっている。
http://indonews.jp/2011/08/post-5007.html
今、インドの新聞やテレビは、汚職防止組織(ロクパル)の設立を求めて断食を続ける社会活動家アンナ・ハザレ氏のニュースで持ち切りである。インド各地でハザレ氏を支持する集会が開かれ、社会階層を越えた多数の人々が支持を表明している。マハトマ・カンディーがイギリス植民地支配に対抗する手段として用いた断食により汚職根絶を訴えるハザレ氏は、「現代のガンディー」ともいわれている。
ハザレ氏の人気はとどまるところを知らないが、それでもハザレ氏やその運動には批判の声もある。これらは今のところ少数意見に過ぎないが、ハザレ氏の運動を客観的に位置付けるには役立つはずであり、ここにまとめた。
(1)議会制民主主義の否定
議会による法律制定の手続きに従わず、断食により自分たちが提案している法律の実現を試みるのは議会制民主主義の否定であるとする意見で、政府の基本的立場。ハザレ氏への対応について政府を激しく批判しているインド人民党(BJP)や共産党マルクス主義派(CPI-M)も、この点については同意見であり、ハザレ氏側の法案をそのまま受け入れることはできないとしている。
(2)ヒンドゥー教寄り
デリーにあるモスク、ジャマー・マスジドのイマーム(宗教指導者)であるサイード・アフマド・ブハリ氏は、ハザレ氏の運動は反イスラム的であり、イスラム教徒は運動を支持しないように説いている。ブハリ氏は「バンデー・マータラム」(インドの愛国歌)や「母なるインド万歳」などの掛け声を用いるハザレ氏の運動をヒンドゥー教寄りとして批判するとともに、運動の資金が民族義勇団(RSS)などのヒンドゥー至上主義団体から出ているのではないかとの疑念を呈している。
ブハリ氏の意見は、あまりに狭量であるとして、他のイスラム教徒指導者からも批判を受けた。しかし、ハザレ氏の運動とヒンドゥー至上主義団体とのつながりを不安視する人は少なくない。
(3)上流階層による運動
ブッカー賞受賞作家のアルンダティ・ロイ氏は、22日付「ザ・ヒンドゥー」紙に「私はアンナ氏になりたくない」という記事を発表した。ロイ氏は、ハザレ氏の運動は、農民の自殺、先住民族の抑圧、開発による住民の強制立ち退きなど、社会の下層に位置する人々の問題を無視したものであると批判した。ロイ氏は、ハザレ氏が過去に2002年グジャラート州でのイスラム教徒虐殺事件への関与を疑われているナレンドラ・モディ州首相の開発モデルを称賛したことがあるほか、ハザレ氏の側近グループのメンバーのほとんどが多国籍企業などから資金を受け取っていると指摘している。
何事にも必ず反対意見がでてくるのがインド社会であり、国民の広い支持を受けているハザレ氏の運動ですら例外ではない。これからもこうした反対意見が相次ぎ、運動の足元を崩してしまう可能性すらある。しかし、ハザレ氏の運動もインド社会の「反対意見の表明の自由」に依拠している部分が大きい。多様な意見が許される風潮はインド社会の弱みであると同時に、強みにもなっている。
http://indonews.jp/2011/08/post-5007.html