ようこそ石の華へ

鉱物の部屋へのいざない

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コンピュータ・シミュレーション

2013-06-23 18:11:21 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「コンピュータ・シミュレーション」です。

今朝のWebニュースで「氷から水、きっかけ解明=結晶構造崩壊を計算」という記事が気になりました。氷の結晶構造が崩壊し、溶けて水になるきっかけをコンピュータのシミュレーションで解明したと英科学雑誌ネイチャーに発表した、という内容です。

私は以前、名古屋大学の公開講座で水から氷に凍るシミュレーションの映像を見た事があります。今回の研究はその逆の現象です。水の固体-液体の間の相転移をとりあつかったコンピュータ・シミュレーションはコンピュータテクノロジーの進化と共に進化していっているようです。将来の量子コンピュータが実現されるような時代にはコンピュータ・シミュレーションによる科学的新発見が続出するような気がします。

コンピュータによる分子シミュレーションは分子スケールでの現象をまじかに見る事ができる研究手法だと思います。そのようなコンピュータ・シミュレーションで中谷宇吉郎が研究したチンダル象がどのように出来ていくのか見てみたいものです。

コンピュータ・シミュレーションでは空間と時間とを顕微鏡的な拡大で描像できます。分子スケールの結晶化過程は直には見る事ができませんので、科学研究には理論・実験とともに重要な役割を担っていると言えます。

いつか鉱物結晶の成長過程もコンピュータ・シミュレーションで見てみたいものです。

そうそう、「鉱物結晶図鑑」の野呂輝雄さんの結晶描画ソフト「Quartz.exe」も結晶形態に特化したコンピュータ・シミュレーションと言えます。こちらに関しては後日、話題にしたいと思っております。

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新湯の玉滴石産地

2013-06-22 12:46:27 | 日記・エッセイ・コラム

昨日の夕方、石川県鉱物同好会の会員でもある富山県のMさんからメールが入りました。その内容は新湯の玉滴石産地が国天然記念物指定になったという事でした。

今回の天然記念物指定は玉滴石そのものではなく産地の指定という事のようです。確かに新湯は希少な玉滴石の国内有数の産出地です。私はもう既に天然記念物になっているものと思っていましたので、意外な感じがしました。

新湯は現在進行形で玉滴石を形成している所と思っていましたが、どうも既に生成が止まっている、という話もあります。そうであれば、天然記念物になって然るべき、だとも思います。それはかけがえのない貴重な天然の物です。守っていく必要性があると思います。

新湯の玉滴石は有名で、開店当時、店にはその標本が二つありましたが、既に両方とも売れてしまいました。今後は新たな標本が流通しなくなりますので、その貴重性は高まると思います。今後は過去に採集されたもののみが流通する事になりますので、その標本価値もさらに高まるのでしょう。

今回の天然記念物指定を記念して富山市科学博物館ではロビー展「天然記念物 玉滴石のヒミツ」を今日から1ヵ月間展示するようです。日本でもっとも美しいとされる新湯産玉滴石、この機会に見に行くのも一興だと思います。

そういえば、富士山の世界遺産登録も本日の予定です。

天然記念物、世界遺産、ジオパーク、等々、自然は人に因って忙しくなっています。

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中谷宇吉郎の絵

2013-06-20 16:12:04 | 日記・エッセイ・コラム

昨日は定休日で外出するつもりでしたが、朝から大雨だったので、外出を止めて、かねてからの課題であった自宅の部屋の整理をしました。人生、長くなると、地層と同じように多くのものが累積します。昨日はTVでちょうど「断捨離」のやましたひでこさんも出ていましたので、それに刺激され重い腰を動かしました。その結果、「断捨離」とまでは言えないものの少し整理をしました。そして、その過程で面白いものを再発見しました。

私は気になった新聞記事の切り抜きをする習慣があったのですが、昨日、偶然に古い新聞記事の切り抜きが出て来ました。それは「中谷宇吉郎画集」というタイトルの記事(朝日新聞?1979年9月25日)で樋口敬二氏の「日記から」という記事です。その内容は中谷宇吉郎の絵画展に行った事と樋口敬二氏の持参した鮎の絵が画集への集録がきまった、という事が書いてありました。

私はこの記事を切り抜いた事は完全に忘れていました。

そして、時間を置いて起きた不思議なシンクロニシティを感じました。

それはどんなシンクロニシティかというと、つい先日、「中谷宇吉郎の森羅万象帖」(LIXIL出版)を購入し、INAXライブミュージアムでの巡回展の事を知ったばかりでした。そして、その本に載っていた鯖の絵と鯵の絵が記憶に残っていました。そこへ鮎の絵の記事です。折しも鮎の解禁のタイミングです。

まだあります。「中谷宇吉郎の森羅万象帖」の鯖と鯵の絵の隣のページにはご長男の後ろ姿「敬宇」という作品のモノクロ写真が載っていました。その絵のカラー写真はつい先日、北陸中日新聞(6月7日朝刊文化面)に載っており、私は思わず切り抜いていました。どうも7月9日まで加賀市の「中谷宇吉郎雪の科学館」で油絵の企画展を行っているようなのです。この「敬宇」という作品はカラーで見るとモノクロ写真では分からない素晴らしさが伝わって来ました。中谷宇吉郎の多彩な一面をうかがい知る事が出来る貴重な一枚だと思います。

そうそう、この「中谷宇吉郎の森羅万象帖」も素晴らしい一冊です。特にウィルソン霧箱を使ったイオンの放電写真の美しさには目を奪われました。雪の結晶の研究の原点はここにあったのかとも思ってしまいました。また、チンダル像の写真からは水晶の蝕像現象を連想してしまいました。私はちょうど次回の新聞連載に遊泉寺銅山の蝕像紫水晶を登場させようと思っていたところでした。

INAXライブミュージアムでの巡回展は6月22日(土)からですが、愛知県常滑市は遠くて行けません。「中谷宇吉郎画集」は購入しようと思いましたが、高値がついている古書です。加賀市の「中谷宇吉郎雪の科学館」なら近くなので行けそうです。(会期が6月25日から7月9日に延期されたそうです。私にとっては来週が最後のチャンスです。)この機会に中谷宇吉郎の絵を見に行きたいと思っています。

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平行六面体のように見える黄鉄鉱

2013-06-18 13:42:29 | 日記・エッセイ・コラム

今日は「平行六面体のように見える黄鉄鉱」です。

このブログの「鉱物結晶図鑑」のコメントの続編となります。

先日、輪島のYさんから秩父鉱山産の黄鉄鉱が送られてきました。

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秩父鉱山産黄鉄鉱(Pyrite)

この写真がその黄鉄鉱です。私は初めて見ました。不思議な黄鉄鉱だと思います。それは稲妻型というか、しめ縄の四手型というか、面白い形をしています。これは黄鉄鉱の平行六面体のように見える結晶の平行連晶といってよいものだと思います。

鉱物の結晶は結晶成長時の温度や密度などの条件によって結晶面の現れる度合いが異なったり、場合によってはある結晶面が消滅したりする事があります。可能な結晶面は決まっていますが、状況によってその現れ方が異なり、その組み合わせによって多様な形が現れ、その結果、外形が変化します。このような平行六面体に見える結晶もそのような外形変化のひとつだと思います。ただ、このような平行連晶は非常に珍しいものだと思います。

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産地不明 黄鉄鉱(Pyrite)

これは私が鉱物コレクションを始めた初期(約18年前)に入手した黄鉄鉱です。産地不明ですが、もしかすると中国産だったかも知れません。

これは、一見、平行六面体結晶に見えますが、どうも、それらしく見える違うものです。ただ、黄鉄鉱の外形変化の一種で、それが貫入双晶のようになっている事が面白いと思います。

外形変化といい、平行連晶といい、貫入双晶といい、黄鉄鉱のバリエーションは非常に面白い現象です。規則正しい結晶世界の中の多様性、鉱物の魅力は飽きがきません。

いつか、そのような結晶形態の変化から、その結晶生成時の条件が読み取れ、さらに結晶成長に費やした時間や産地情報をも読み取れる時代が来るような気がします。その頃には、鉱物標本は本当の意味での標本と成り得るのだと思います。

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インターメディアテク

2013-06-16 12:57:36 | 日記・エッセイ・コラム

6月8日(土)はミネラルマーケット、新宿ショーに行った後、東京駅に向かいました。

目的は先日TVで見たインターメディアテクに行く為です。インターメディアテクは東京駅前JPタワー内旧東京中央郵便局舎2・3階にある東京大学の学術コレクションを常設展示してある博物館です。

非常に期待して行きました。そして、行ってみて正直、違和感を感じてしまいました。

その違和感は何から来るのだろう?と約1週間、時間を置いて考えてみました。

展示されているものは東京大学の学術文化財です。そして、それらは全て本物です。そこには私の好きな鉱物標本があったり、木製結晶模型もありました。それにもかかわらず、それほど感動しなかったのです。それはなぜでしょうか?

その事を自問自答してみます。

ひとつは場所の問題かも知れません。そこは東京駅前の新しい商業施設の中にありました。そこは確かに賑わっていて人もたくさんいました。ただ、博物館に賑わいは似合いません。博物館の持つイメージはひっそりとした秘密の場所というイメージです。

展示方法は19世紀的な博物学のイメージを模していましたが、展示されているものが本物にもかかわらず、そのような展示方法が、返って模造品のような印象を助長しているのかも知れません。

そこで見た若林鉱物標本(若林弥一郎は金沢出身)にもそれほど感動しませんでした。私は「芸術新潮」(1995 11 特集 東京大学のコレクションは凄いぞ!」に載っていた標本棚の写真は見た事がありましたが、実物を見るのは初めてでした。それにもかかわらず、それは自分とは関係のないもので、ただそこに無関係に存在しているような気がしてしまったのです。

展示されていた数学オブジェも奇妙でした。それらはある種の美しさを持っていると思いますが、そのような空間に存在している事自体が奇妙です。たとえば、東京理科大学近代科学資料館に展示してある木製多面体模型はその出来ばえといい、その存在そのものが多くの意味を持っていて見ていて感動してしまいます。それに比べ、謎の数学オブジェの存在は何も物語ってきません。感動しないのです。

その理由を考えてみました。そして、はたと思いました。

そこにある標本は死んでいる。

動物の骨や剥製が死んでいるのは当たり前の事なのですが、鉱物標本からも同じような印象を受けてしまいました。それはどういう事かというと、そこには標本としての意味は無くなっており、さらに流動性も無いという事です。ミネラルマーケットと新宿ショーの直後に来たからかも知れませんが、それらを買う事はできません。その標本はただ見るだけの存在で、自分との関係性が薄いのです。それらは触れる事も許されない高価な美術品のような存在なのです。自分との関係性が薄いものには感情移入できません。そういう事なのです。

自分との関係性、これは重要な事です。

日本の鉱物マニアが国産鉱物を好むのも、そのような理由からかも知れません。

例えば、火星の水晶を手に取ることができる時代が来たとします。最初はその物珍しさの為に高値が付く事になるでしょうが、それが当たり前になるような時代には、我々地球人はやはり地球の水晶の方を愛でるようになっていくでしょう。

インターメディアテクにあるものは、ある特定の意図を持って構成された、ブランドをもったものたちばかりでした。

自分とは関係ないものには違和感を感じざるを得ないのです。

私は短時間で切り上げ、東京駅で列車の予約変更をして、早めに金沢に帰りました。

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