今日は「染成オーケン石」です。
オーケン石は丸くて兎のシッポのような質感が好まれる人気の高い石です。既に何個かのオーケン石は売れてしまいましたし、店には今でも幾つか残っております。
これはインド産のオーケン石です。インドのデカン高原から産出する玄武岩の晶洞の中に入っているものが有名です。
私はこのオーケン石の色は白いものであると思っていました。
ところが、黄色いオーケン石の写真を見てしまいました。その写真は「教授を魅了した大地の結晶 北川隆司 鉱物コレクション200選」(松原 聰 監修 東海大学出版会)に載っておりました。しかも鉱物の説明の文章に「青や黄を帯びることもある」とありました。
価値観が揺るぎました。私はこれまでにミネラルショー等で色の付いたオーケン石を見た事がありましたが、それを見た瞬間にそれは染色されたものだろう、と思っていました。染められたオーケン石は縁日で売られていた染められたヒヨコのようで、かわいそうだとも思っていました。
それは本物なのか?写真だけでははっきりしません。真偽が定かではないまま、少し時間が過ぎてしまいました。
そして、思わぬところではっきりしました。
今、手もとに「鉱物愛好者(MINERAL LOVER)2009.4」という中国語の雑誌があります。その雑誌の中に黄色と青色のオーケン石の写真が載っておりました。一瞬、そのようなものが存在するのか!とも思ってしまいました。
私は中国語は分かりませんが、中国語の漢字を見ていると、何となくその意味が分かってきます。そのオーケン石のキャプションには「染成」という文字が付いていました。しかもその記事の小見出しは「改色」となっております。そして、その記事の大見出しには「要注意」という漢字が入っています。
それで、はっきりしました。それは「染成オーケン石」なのです。それはやはり染められたものなのです。そういえば、黄色のオーケン石の産地は中国となっておりました。
皮肉な事です。日本語の書物で揺らいだ疑念は、それが中国で染められたもので、その事実を中国語の雑誌で知ってしまいました。
石の世界には怪しいものが多々あります。気をつけましょう!