非常に面白い本を読みました。それは小説ではありません。
「ダイヤモンドは超音速で地底を移動する」(入舩徹男 著 メディアファクトリー新書)です。
著者は愛媛大学地球深部ダイナミクス研究センター教授・センター長です。内容は天然ダイヤモンドの話から地質学的な地底世界の話へ、さらにヒメダイヤという新しい人造ダイヤモンドの話へと非常に分かり易く書かれておりました。
この本を読んで、天然ダイヤモンドの理解を深められますし、興味深い地底世界の最新情報を得られました。そして、最も興奮したのはヒメダイヤを使ったこれからの研究への期待でした。
著者の研究手法は超高圧装置です。その装置はアンビルという超硬合金でできた立方体を8個立方体に組み合わせ、立方体の角は正三角形に切り落とし、中心部に正八面体の空洞が出来ています。その空洞に試料などをいれた圧力媒体を加圧するという仕組みです。
その装置を使い、地球内部でいえば下部マントルの真ん中にあたる地下2000kmの圧力まで再現できるようになったそうです。さらにダイヤモンドアンビル装置を使えば地球の内核を含めた地球内部をほぼ完全にカバーできるそうです。さらにさらに、著者が造りだした「ナノ多結晶ダイヤモンド」である「世界最硬」のヒメダイヤを使えば、先日発見されたような地球の質量の数倍の大きさの地球型惑星(スーパーアース)の内部までも再現できるそうです。
夢のような話です。地球以外の惑星内の高温高圧環境をも人工的に作りだす事が可能なのです。
著者の夢はそのヒメダイヤ合成の手法を使い、ヒメダイヤを超える硬さの新物質を生み出す事だそうです。その新物質を使ったさらなる高温高圧も可能になっていくのでしょう!
鉱物は温度と圧力でその性質は変り、違う鉱物になります。ヒメダイヤやそれを超える物質を使った人造鉱物の登場は現実の事になりそうです。
人類は新しい元素を造り、新しい鉱物を造っていく存在になりました。この事も物質の進化の一過程なのかも知れません。
余談ですが、この本にはヒメダイヤを加工することでできた、世界初となる「真球のダイヤモンド」も出て来ます。それは「丸いダイヤ」です。欲しいと思いました。