今日は「美」です。
昨日の夕方、外国人のカップルがいらっしゃいました。どうも石に興味のあるのは女性の方で、店に置いてある鉱物を手に取ったりして興味深そうに見ていました。男性の方はスマホの画面を見たりしていました。その女性は棚に置いてある鉱物を指し示しながら、何か男性に話かけていました。もしかすると買って欲しいとネダッテいたのかも知れません。男性はそれほど興味がなかったようです。しばらくしてそのカップルは出て行きました。その際、女性は「beautiful」とおっしゃって出てゆきました。
ブラジル産 紫水晶・方解石(Amethyst/Calcite)
鉱物ショップをやっていて、面白いのは店に入ってくるお客さんたちの反応です。鉱物に特に強い興味を示すのはお子さんが多いようです。それは男の子も女の子も同じです。それから外国人です。外国人と言っても欧米系の外国人です。台湾からの観光客も多いのですが、ほとんどが団体旅行の人々で店に入ってくる人は少数派です。欧米系の外国人は個人旅行の方々が多く、鉱物に対する文化が定着しているのか、実際に購入される方もいらっしゃいます。対して、ほとんど興味を示さないのが、男性のビジネスマンとおばさんたちです。男性ビジネスマンは余裕がないのでしょう。おばさんたちはアクセサリーには興味を示しますが、鉱物原石にはほとんど無関心です。それから老人も少ないです。大半のご老人の方々にとっては鉱物は無縁のものだろうと思います。ただ、老人の中にも少数ながら強い興味を示す方もいらっしゃいます。昨日もアンモナイトの化石を数点購入された方がいらっしゃいました。お話を伺うと既に幾つかの化石をお持ちという事で、それらはどうもその昔、The Nature Companyで購入されたそうです。(その第一号店は金沢だったらしい。)
今日は「美」です。
「石の華」の商品は鉱物結晶ですが、実は売っているのは鉱物結晶の「美」なのだと思います。昨日の外国人の女性の言葉「beautiful」がそれを物語っています。
ただ、「美」という概念は非常に難しい概念だと思います。「美」は非常に興味深い概念なのですが、それはある意味、哲学的な概念でもあり、その理解にはそれこそ真剣に「美学」という学問を学ぶ必要があるのでしょう。「美」というテーマはブログ的なテーマではないのかも知れません。
先日、『「美しい顔」とはどんな顔か 自然物から人工物まで、美しい形を科学する』(牟田 淳 著 DOJIN 選書)という本を読みました。その本を読むと、相対主義的な立場を取りつつも、比率、シンメトリー、自然は最小を好む、機能性、等が美しさの要素である事を理学系な視点から書いてありました。既に知っている事が多かったものの、黄金比や白銀比についてのアンケート調査結果が紹介してあったりして、「美」という概念を概念からだけに留まらず、実証的に論じてありました。「美」は決して文系的なものだけではないのです。
鉱物の「美」に対しても、もちろん理学的なアプローチが必要です。
もしかすると鉱物の「美」を理解するには文系・理系を超えた「鉱物美学」なるものが必要なのかも知れません。