今日は「磁鉄鉱」です。磁鉄鉱も何度か登場しておりますが、タイトル登場は初めてです。
小学生頃の理科で習った磁石は不思議の塊でした。磁石の不思議な力には子供ながら夢中になった記憶があります。その後、電磁気力の理解や地球は磁石である事、等々、磁性の理解は自然を理解する事の基本的で重要な要素になっています。磁性は現代テクノロジーでも重要な要素でもあります。磁性の利用なくして現代文明は成り立ちません。また、磁性流体を使ったアート作品等は非常に美しく、現代芸術の分野等でも磁性の現象は利用されるようにもなっております。
そのような磁性を持った鉱物の代表が磁鉄鉱です。
実は磁性を持った鉱物は幾つかあるものの、磁石と強く反応する鉱物は意外と少ないのです。磁鉄鉱以外で主な鉱物は、自然鉄、自然ニッケル、マグヘマイト、ヤコブス鉱、等、鉄とニッケルを主成分としている一部の鉱物だけです。黄鉄鉱や赤鉄鉱は磁石にくっつきません。名前に鉄が付いていても必ずしも磁石に付くわけではありません。
磁鉄鉱の魅力はそのような強磁性と、それとは別にその結晶形です。
ブラジル ミナスジェライス州 セロ 産 磁鉄鉱(Magnetite)
これは美しい正三角形から成る正八面体の単結晶です。人工的に作られたかのような印象を受けてしまいますが、これは天然です。
オーストラリア Tinnietharra 産 磁鉄鉱(Magnetite)
これも美しい正八面体の単結晶です。母岩に付いているところがいいです。
Kovdor,Kola Peninsura,Russia 産 磁鉄鉱(Magnetite)
これは母岩に多くの単結晶が埋まっています。多くは欠けていますが、それらのベースは正八面体だったであろうと思われるような美しい正八面体の形をしたものも埋まっています。
磁鉄鉱の結晶系は等軸晶系なので正八面体の形をとりやすく、磁鉄鉱の標本には大小の正八面体結晶が数多く存在します。
そう言えば、砂鉄は磁鉄鉱なので、ルーペや顕微鏡で観察すると小さな正八面体結晶を数多く見る事ができるそうです。
砂鉄は、たたら製鉄で日本刀に姿を変えました。磁鉄鉱は鉄の重要な鉱石鉱物でもあります。
先日、何かのTV番組で世界の一流シェフが愛用する堺打刃物が紹介されていました。砂鉄から造られる包丁は美術工芸品の日本刀と同じ価値があり、その番組に出て来たシェフのコレクションが紹介されていました。そのシェフの最も大切な包丁も登場しましたが、その包丁は一度も使われた事がありません。そこには「用の美」を超えた極められた美意識が宿っているようでした。
風化して砂鉄となった磁鉄鉱は、人によって再度、美しく甦っていました。
磁鉄鉱は天然のままでも、人の技によっても、その美しい姿を見せてくれるようです。