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鉱物の部屋へのいざない

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カンラン石

2013-03-22 14:58:34 | 日記・エッセイ・コラム

昨日、パキスタン産のカンラン石の巨晶が売れました。それは透明感のある緑色をした自形結晶の立派なものです。買われた男性も掘り出し物を見つけた、という事でうれしそうでした。

今日は「カンラン石」です。以前に「ペリドット」のタイトルで一度書いておりますが、ペリドットは宝石名で、「カンラン石」としてのタイトルでは初めてです。カンラン石はカンラン岩の主要造岩鉱物で、上部マントルの主要な構成鉱物です。マグネシウムが富むものと鉄が富むものとが規則的に混ざった固溶体でもあります。マグネシウム鉱物の締めくくりとして登場します。

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パキスタン産 カンラン石・磁鉄鉱(Olivine/Magnetite)

上の写真はカンラン石と磁鉄鉱の共生体です。美しい菱形十二面体の形に結晶している磁鉄鉱をつかむように緑色のカンラン石が張り付いています。下の写真はカンラン石のひとつが外れてとれてしまった様子です。とれた断面を見ると磁鉄鉱が出来た後からカンラン石が付いたのではなく、それらは同時に結晶成長した事が分かります。この標本は磁鉄鉱の存在感が強烈なのですが、それにカンラン石が共生している様にユニークさがあり、なんとも言えない愛らしさがあります。

カンラン岩が熱水の作用で再結晶するときに大型の苦土カンラン石結晶ができる事があるそうで、この標本はそのような変成作用と稀な偶然性が同時に起こった結果の産物だと思います。

そう言えば、昨日のブルース石の時に、カンラン岩の蛇紋岩化の初期段階で蛇紋石+鉄ブルース石が生じ、その後、鉄ブルース石が分解して磁鉄鉱が生じるという現象の事を書きましたが、今日のこの標本と何か関係があるのでしょうか?この標本にはブルース石らしきものはないので違うかも知れません。ただ、磁鉄鉱とカンラン石とは密接な関係があるように思います。実際にこのような標本の存在があるという事は無視できません。

カンラン岩は上部マントルの主要構成鉱物だと考えられています。マントルというと当然高温高圧の環境です。カンラン岩は水と反応しやすく変成作用が起きます。どのような変成作用が起きているのかを考えると面白い事に気づきます。そのような変成作用ではマントル内の水の存在も気になります。水は高温高圧状態ではどのような状態なのでしょうか?熱い氷の存在の話を聞いた事があります。高圧状態では水も個体になります。ただ、変成作用には氷のような固体状態よりも液体のような流体である必要性があると思います。水が流体でいられるギリギリの状態でカンラン岩の変成作用が起きているのだろうと思います。実際にはもっともっと複雑な反応が起きているのでしょうが、それは分かりません。

今日はカンラン石から地下で起こりうる未知の変成現象の事を想像してしまいました。

コメント
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