かぶれの世界(新)

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不信任を突きつけられたEU

2010-05-16 23:35:53 | 国際・政治

ーロに分裂の危機」とショッキングな書き出しの記事を、昨日の日本経済新聞(Web)は伝えた。今朝は又、同紙は一面トップで「欧州経済、負の連鎖」と伝えた。ギリシャ問題は約90兆円の金融支援の仕組みを作り、欧州中央銀行がギリシャなど問題国債の買い入れまで対策を打ったのに、市場の不安が治まっていないという真に深刻な状況らしい。

救済を決定したら決定したで、「危機を国家の財政から景気や金融システムに移しただけ、緊縮財政をとれば今度は実体経済が傷む」と市場は見做したという。何をやっても不安が治まらない、それが今の欧州の現状のようだ。つまり、EUのあり方そのものに対する信任が揺らいでいるヤバイ状況にある。そこまできたか、と言うのが私の印象である。

以前から欧州の構造的問題が気になっていた。今回正にその構造問題を試すテストを受けているが、どうも上手くないようだ。「金融政策は一本化されているが、財政政策は各国に委ねられるEUの仕組みでは、今回のような一刻を争う危機は乗り越えられない」とみられ始めた。何度対策を決めても、対策に対する信用がイマイチでは効果が半減する。

顕在化したEUの構造問題

渋るメルケル独首相に対して、サルコジ仏大統領が机を叩いてユーロ圏離脱まで言ってギリシャ支援を纏めたという。これが表面化したことで、投資家はEUの自己解決能力に不安を倍増させることになったらしい。ギリシャ国民の(身勝手な)反発をみれば、国内向けのジェスチャーをやってみたい気持ちは分かるが賢い振る舞いではなかった。

これを見た市場のメッセージは明らかだ。与えられた選択肢は、欧州全体としての金融政策と財政政策の連携を強めるか、もしくは冒頭のようにユーロを分裂させて国毎の政策の自由度と機動性を高めるか。競争力や財政規律の異なる国を一つの通貨圏に入れた現在の矛盾(日本経済新聞)、この構造的な問題を避けて、市場を説得し危機を回避することは容易ではない。

問題の性質が「ギリシャ問題」から「EU問題」に変わったことが明確になった市場のメッセージであった。政治は国民の支持を得てやるもの、市場からの信任を一々気にしてもしょうがない、という声はさすがに聞かない。というのも、結局のところそれは実体経済に効いてくるからだ。このところの「市場の失敗」をあげつらった直後、この「政府の失敗」を見て何と言うか。必ずしも同じ状況ではないが、ヤーギンの言葉「信任の均衡」(市場対国家1998)を結びに代えて終りにしよう。■

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60年目の農地解放

2010-05-15 18:18:13 | 日記・エッセイ・コラム

隣の集落から春祭りに招かれたと、先月「田舎暮し雑感」で紹介した。曽祖父が集会所に土地を融通したことを忘れないで、今でも招待されるのだそうだ。地区長によると戦前は実家のある集落に地主が住み、招いてくれた集落は小作が住んでいた。だが、それは少なくとも70年以上前のことだ。それにしても未だに敬意を払ってくれるとは随分記憶力が良い人達だ。

うちに残っている古い文書を調べると江戸末期から明治頃の活動を想像させるものが残っている。最近、文書以外にも曽祖父の存在を感じさせることがあった。

小作とか年貢というと凄く昔の言葉のように感じるが、この言葉はまだ生きている。近所のオジサンが未だに毎年「年貢」なるものを収めに来る。戦後の農地解放後も所有権は私が相続しているが耕作権は他所の農家にあるもので、今でも耕作料(年貢)を収めてもらっているわけだ。田舎道の角にある三角地で、農地としては殆ど値打ちがない。

そのオジサンから、母が入院し自分も年をとったので、老人二人が生きている間に小作の畑を売るか買うかしたい、と申し出があった。今まで母に申し出ていたが、言葉の行き違いや誤解があってうまくいかなかったが、今回私が病院の母に聞き転売していいと確認した。オジサンの申し出は平方mあたり1万円弱で、知人に聞けば相場以下らしいが了解した。

先月中頃、二人で市役所の農業委員会に出かけ申請した。農地の売買は許可制であることを事前に確認していた。担当によると、昨年農地転売が買い取る側の審査を厳しくやるよう見直されたそうで、売主の私は本人確認の謄本の写しを提出する程度で終った。後はオジサンが基本的に農業を真面目にやっているかどうかを問い合わせる質問が続いた。

1時間程度で手続きが終りその日は帰った。先月末に委員会で審査され、今週月曜日に許可された旨連絡をうけた。直ぐにオジサンと市役所に出向き書類を受け取り、その足で市内の代書屋に出向き契約と不動産所有移転の登記に必要な書類作成を依頼した。印鑑証明を送ってくれるよう東京の自宅に依頼していたので、最終的に支払いを受け手続きが終るのは来週になる予定だ。

この機会に初めて実家の宅地と農地や山林の登記書をしみじみと見た。登記書は曽祖父の名前から始まり、早死にした祖父の名前がどこにも出てこない。曽祖父時代の土地が時代を経て堤防や道路に収容され、切り刻まれて農地としては極めて小さい数百平方mの小さな土地が沢山あった。そこに江戸末期から現代までの歴史を感じた。

先立って、県法務局の支局に行き地図を確認したが、現在状況と一致してない部分が多い。存在しない三角地もある。今50-60年ぶりの「国調(国土調査、国勢調査とは違う)」中だそうで、まだ実態とは相当に異なる。蛇足だが、にもかかわらず固定資産税が正確に来るのは実に不思議だ。

市役所から来た固定資産税の通知を調べると、この細切れ不動産の固定資産税は数百円、山林だともっと安く数十円という通知が来ていた。今まで調べたことも無かったが、土目が変わると通常の農地サイズでも固定資産税は一気に跳ね上がる。農地を木材置き場用に地目変更したものは300倍の税金がかかることがわかった。

気になって貯木場として貸している製材所に問い合わせると、昨日社長と子息が来られて最近仕事が激減したが製材業を続ける意思を確認させてもらった。住宅市場が不振で、売り上げがピーク時の2割に減少し、社員の8割を辞めてもらい何とか繋いでいるという。

これでは、値上げをお願いするどころではない。偶然にも私が勤めた同じ会社の研究所に勤めていたと分かった子息との話に向かうしかなかった。日本でも名の知れたハイテック研究所の研究者が林業や製材業に関るのも悪くは無い。ということで今年は現状維持、来年は見直すことで終った。曽祖父もこういう展開は予想もしなかったろう。■

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金融規制の底流

2010-05-13 18:22:03 | 国際・政治

通風で外出を控えているうちに食料が無くなって来た。昼食に買い置きのペペロンチーニを食べた。あと残っているのは冷凍うどんとかインスタント・ラーメンばかり。やむを得ず痛い足を引きずりながら食料を仕入れ、家に帰りパソコンを開くとNYタイムズのニュース速報が届いていた。

早速開いてみると、NY州司法長官がゴールドマン・サックス(GS)、モルガン・スタンレー、UBS、シティなど世界の8主要銀行の捜査を開始したと言うものだった。お馴染みS&P、フィッチ、ムーディズの格付機関にインチキ情報を与え例のサブプライムを含む金融商品に高格付けを得たという。その役割を担ったのが銀行・格付機関間を転職する人達で、その例としてユカワ氏の名前が挙がっていた。もしかしたら、今後名前の知れた日本人(もしくは日系人)になるかもしれない。

先日、SEC(証券取引委員会)が、ヘッジファンドが値下がりを待って利益を売るという、顧客に不利な情報を隠して金融商品を売りつけたという不公正取引の疑いでGSを訴えた。それに引き続き司法省が同社を詐欺容疑で捜査中というニュースを聞いて、ショックが走った。

民事だけではなく、刑事罰にあたる詐欺容疑が世界最大の投資銀行にかかった。リーマンショックで息絶え絶えになった他のメガバンクを尻目に好業績を続け、名実ともに世界最大の投資銀行が、これまた世界最強の米政府のターゲットとなったのだから。いわば基本となる商習慣が詐欺の疑いをかけられたのだから、GSは反発し全面対決になる可能性もあると私は予測した。

その時点で私の見方は、GS訴追は見せしめを狙った一罰百戒的アプローチになる可能性が高いと見た。オバマ政権が推進する金融規制へのウォールストリートの協力を得るための取引材料に使われるだろうと。医療保険制度の改革が成立後、重要懸案事項に力を注ぐのは間違いないと予測したが、それは金融規制であり罰を与えるのが目的ではないだろうと。

その背景には、多額の収益を得てきた投資銀行が一転リーマンショックで危機に瀕したが、税金を投入して救済され早々に業績回復し高額の報酬得ている。その一方で、雇用の回復がなかなか進まず家を失い路頭に放り出された人達が沢山いる状況で、国民の批判が金融機関に向かっている。オバマ大統領がこのタイミングを十分利用しているのは間違いないと。

しかも、それは私の予測したような一罰百戒的なアプローチではなく、不正は一人残らず根こそぎ正すぞという強い姿勢ではないかと、今回のニュースを見て感じた。いずれにしても、銀行と格付機関に人材が行き来する「回転ドア」があるとか「格付裁定」とかいうふざけた慣行は、投資家に対して不誠実であると私も思う。日本の銀行や保険会社の機関投資家のプロの連中も他愛も無く騙された仕掛けが、今年中には明らかになるだろう。■

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通風再々々発

2010-05-10 15:57:08 | 健康・病気

土曜日に左足の親指に痛みを感じた時、筋肉か筋の疲労だと思った。先週、義父の法事に参列した甥の嫁さんと近くのバドミントン・クラブの仲間が共通の知人だと分かり話が弾んだ。踵の痛みが良くなってきたので、彼女との会話の後で練習に参加したいと思った。週末の練習に備えて久しぶりに庭でフットワークをやった翌日に痛みが出たので通風とは思わなかった。

だが、日曜日に痛みが引くどころかむしろ酷くなり、これは御馴染みの通風の痛みだと気が付いた。久しぶりの、誰にも文句を言えない腹立たしい感覚だ。昨夜は患部がフトンや右足に触る度に痛みを感じ何度も目が覚めた。今日は寝不足でいつもより頭が働かない。

この数年間の生活習慣の見直しで通風になり難い体質に改善したと思い油断した。考えてみれば先々週に妹夫婦、先週は家内と続けて田舎に戻ってきて、その間いつもより美味しい食事を食べかなりのアルコールを頂く機会があった。特に気をつけていたビールを初めとする炭酸入りの飲料水も、ついつい飲んでしまった。実に美味かった。だが、直ぐにツケが回ってきた。

結局のところ私もCRIC(危機→対応→改善→慢心→危機の再発)のワナに陥っていた。危機に際して小手先の対応をし、嵐が過ぎ去ると根本的な改革をせず再度危機を迎える、進歩のない日本人を揶揄する言葉だ。普段は政治・経営の「CRICさ」を批判する私も偉そうなことはいえない。これからは粗食に戻し、なるべくアルコールを控える。

今までの経験では痛みのピークは3日目、それから2-3日は痛みが続く。今日は市役所の農業委員会に出向き、その後手続きも含めビッコを引きながら随分歩いた。同行した80歳にもなる近所のオジサンに大丈夫かと心配された。明日は母のいる老人ホームに顔を出す予定だが、この足で長く歩くのは気が重い。■

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藪睨みギリシャ危機

2010-05-08 23:11:54 | 社会・経済

昨日朝6時過ぎ、いつものように寝ぼけ眼でベッドサイドのラジオをつけた。暫くしてNHKが6日のNY証券市場が9%大暴落したと伝えるニュースを聞き、一気に目が覚めた。実はその後値を戻し3.2%の下落で引けたのだが、その時は私も泡を食って何が起きたのだろうと怪しんだ。前日、EUと国際通貨基金(IMF)が約13兆円の緊急融資を決定したニュースを聞き、これでギリシャ危機は当面沈静化するだろうと予測してベッドに就いた。

いつもは7時半ばまでベッドの中でウトウトするのだが、もう寝ていられない。直ぐテレビをつけると、支援を受ける条件としてギリシャ政府が打ち出した緊縮財政に反対するアテネ市内での暴動の状況が繰り返し報じられていた。その時の解説は、国民の激しい反対にあってギリシャ政府の緊急対応に不透明感がでて市場が反応したと言うものだった。EUのたった3%の経済規模の国に13兆円もつぎ込んだのに市場を説得できなかった。何故だろうか。

ここまでが枕で、これから先がギリシャ危機に対するその後の報道についての私の解釈を紹介する。

ギリシャ国民への不快感

最初に、公には報道されないがギリシャ国民に対する強い不快感があると感じる。「稼ぎに合った生活に切り替えろ。外国の税金で今までの良い生活を維持するとは虫が良すぎる。政府が悪いと言うが君達が選んだんだろう。政治は民度の表れと言うじゃないか。」前政権が財政赤字を誤魔化しばら撒いた結果を、ギリシャ国民は権利と勘違いしている。誤魔化しでEU加盟できたが、政権が変わり誤魔化しを正し危機に見舞われると、今度は国民が支援を権利と主張している。

これは支援する側のドイツやフランスなどEU大国民の本音だ。彼らは労働に見合う収入を得て税金を払い、その範囲で社会保障などのサービスを受けている思いがある。だが、ギリシャでは3割が税金を払わない地下経済といわれ、一方で現役時代とそう違わない年金収入など実力以上の社会保障を得ている。実はここにEUの構造的な問題が隠されている。

EUの構造問題が不安を払拭できない

通貨は共通のユーロを使い通貨政策は欧州中央銀行下で統合されているが、財政政策は各国独自で決められ迅速な危機対応が出来ないという問題がある。これは私の「大胆占い」でも何度か指摘してきた構造的な問題である。今回もドイツ政府が支援に積極的でなかったのは広く報じられている。しかも、国によって透明度が異なる。当のギリシャの場合財政赤字13%だったに、昨年まで3%という粉飾決算をしていた。市場が不安を持って当然だ。

かといってギリシャをEUから放り出せるかというとそうも行かない。ギリシャをはじめ南欧諸国に300兆円に投資されており、その半分は独仏の金融機関から出ている(日本経済新聞5/8)。ギリシャを破綻(国債の債務不履行)させると国債を大量に抱える独仏の金融機関の経営問題が表面化し、信用不安が弱いところから順番に将棋倒し的に連鎖する恐れがある。リーマンショックの悪夢の再現だ。

次の獲物

ヘッジファンドはPIIGSといわれる南欧諸国の次の獲物を狙っていると言われる。ギリシャが破綻し、経済規模がはるかに大きいスペインに飛び火すると事態は極めて深刻になる。信用不安が世界に連鎖しリーマンショックの二の舞になる恐れがある。EUはギリシャだけの問題で終らせたいと考えているが、現実的にはEU内で問題解決するのは容易ではない。6日のNY市場の暴落騒ぎは市場が如何に神経質になっているかを示した。

実際に問題が起こるとしたら債務不履行より、それによって銀行の飯の種の現金が無くなり、資金が回らなくなる流動性リスクだとFT(ファイナンシャル・タイムズ)は報じている。欧州の銀行はそもそも資金が十分になく、政府財政の余裕も無い上に国民の救済反対の声は益々高まっている。政府は銀行間貸し出し市場が冷静さを失わないよう、注意深く見守っていく必要がある。

だが、暫くの間神経質な動きが続くとしても、最終的には信用不安の世界連鎖は防げると私は予想する。政府は十分学習した。そうなる必須の条件は、粉飾決算する国がギリシャ以外にないことだ。それにしても、現代のギリシャ人は4000年前の人達と本当に血が繋がっているのだろうか。塩野さんの「ローマ人の物語(1)」を読み返してギリシャ人がどう描かれているか読んでみたが、現代のギリシャ人とどうにも繋がらない。■

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