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ーロに分裂の危機」とショッキングな書き出しの記事を、昨日の日本経済新聞(Web)は伝えた。今朝は又、同紙は一面トップで「欧州経済、負の連鎖」と伝えた。ギリシャ問題は約90兆円の金融支援の仕組みを作り、欧州中央銀行がギリシャなど問題国債の買い入れまで対策を打ったのに、市場の不安が治まっていないという真に深刻な状況らしい。
救済を決定したら決定したで、「危機を国家の財政から景気や金融システムに移しただけ、緊縮財政をとれば今度は実体経済が傷む」と市場は見做したという。何をやっても不安が治まらない、それが今の欧州の現状のようだ。つまり、EUのあり方そのものに対する信任が揺らいでいるヤバイ状況にある。そこまできたか、と言うのが私の印象である。
以前から欧州の構造的問題が気になっていた。今回正にその構造問題を試すテストを受けているが、どうも上手くないようだ。「金融政策は一本化されているが、財政政策は各国に委ねられるEUの仕組みでは、今回のような一刻を争う危機は乗り越えられない」とみられ始めた。何度対策を決めても、対策に対する信用がイマイチでは効果が半減する。
顕在化したEUの構造問題
渋るメルケル独首相に対して、サルコジ仏大統領が机を叩いてユーロ圏離脱まで言ってギリシャ支援を纏めたという。これが表面化したことで、投資家はEUの自己解決能力に不安を倍増させることになったらしい。ギリシャ国民の(身勝手な)反発をみれば、国内向けのジェスチャーをやってみたい気持ちは分かるが賢い振る舞いではなかった。
これを見た市場のメッセージは明らかだ。与えられた選択肢は、欧州全体としての金融政策と財政政策の連携を強めるか、もしくは冒頭のようにユーロを分裂させて国毎の政策の自由度と機動性を高めるか。競争力や財政規律の異なる国を一つの通貨圏に入れた現在の矛盾(日本経済新聞)、この構造的な問題を避けて、市場を説得し危機を回避することは容易ではない。
問題の性質が「ギリシャ問題」から「EU問題」に変わったことが明確になった市場のメッセージであった。政治は国民の支持を得てやるもの、市場からの信任を一々気にしてもしょうがない、という声はさすがに聞かない。というのも、結局のところそれは実体経済に効いてくるからだ。このところの「市場の失敗」をあげつらった直後、この「政府の失敗」を見て何と言うか。必ずしも同じ状況ではないが、ヤーギンの言葉「信任の均衡」(市場対国家1998)を結びに代えて終りにしよう。■