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ネチズンは民意か

2006-10-06 14:51:30 | 社会・経済

ネット調査は信頼できるか

昨日の朝日新聞の記事「ネット調査信頼できるか」(世論調査部・松田映二氏)は興味深い調査報告だった。8月の長野県知事選で、田中候補が圧倒的に有利というネット調査結果にもかかわらず落選したのがきっかけで、ネット調査が果たして世論調査として信頼できるか調べたものだ。

小泉政権登場以来高支持率が権力のバックボーンにパラダイム変換し、為政者の民意の的確な把握の重要性がこれまで以上に重要になったと感じていた。支持率は常に変動しているという視点から、「民意を測定」しながら政治を進めていくスタイルに変わると思われる。

ネット調査は田中康夫氏圧勝だった

記事のポイントは以下の通り; ネット調査の支持率は村井氏34%、田中氏66%だったが、県知事選開票結果の得票率は村井氏53%、田中氏47%となった。一方、同社がネット調査と同時に実施した郵送調査と電話調査は選挙結果を正確に予想していた。

つまり、ネット調査は有権者の一部しか代表しておらず世論とはいえない。これは揺るがせない明確で重要な結論であった。ネット調査で圧倒的に支持された意見でも世論は反対している可能性があるということだ。安易にネット調査結果を信用するなという警鐘だ。

ネット回答者は有権者を代表していない

記事は更にこの違いが何処から来たのか考察を進めている。サンプリング母体が有権者の縮図になっていない: ①ネット調査は自発的な回答に対し、郵送調査は受身である。 ②ネット回答者のピークが30代に対し、郵送回答者は70代。 ③ネット回答者の3割が政治に不満で6割が生活に不満、郵送回答者はそれぞれ2割と4割が不満を抱いていた。

総合すると平均的なネット回答者像は、教育があり政治意識が高く生活に不満を持ち、積極的に意思表示する30代ということになる。しかし有権者の中には低学歴でパソコンも無く普段政治に興味を持たない層も沢山いるのである。

それでもネット調査は意味がある

記事によるとサンプリングが有権者の縮図になっていないが、時間経過による意識変化といった相対的な傾向はかなり正確に把握できる。全ての調査結果で、選挙後村井氏の支持が増え、田中氏の支持が減る所謂事後承認の傾向を示した(小泉首相靖国参拝もそうだった)。又、来年参院選の投票については同じ傾向を示しており、将来を予測するには便利な道具になりそうだ。

専門家はこの結果に対し、ネット回答者は高学歴で政治意識が高く、不安・不満・不公平感が強い傾向を指摘し、目的を明らかにし母集団を把握してネット調査を利用していくことを示唆している。ネット調査は安価に素早く結果を出せるのでその特徴を理解した上でドンドン活用すべきだ。

ネット調査分析にIT活用を

数年前、米国で選挙結果分析にITを活用している、具体的には顧客管理(CRM)ソフトを利用していると聞いたことがある。私は今回の朝日新聞の記事を読んで分析が不十分で惜しいなと感じた。IT世界でよく使われるところの「データ・マイニング」が徹底的に足りないのだ。目の付け所は良いので、是非調査を継続してネット調査を充実させていくことを望む。

定点調査として継続してデータを蓄積し、この結果を色々な切り口で時間経過と合わせて分析すればもっと有権者の意識と変化を把握し報道にも貢献出来ると思う。穿った見方かもしれないが安倍内閣の報道官になった世耕氏はこの分野にも明るいと聞いたことがあり、メディアに先駆けてやる可能性が十分あると私は思う。

引っ掛かるところ

記事によると選挙結果を左右した選挙民の平均像は郵送回答者と一致した。だとすると、50歳以上が多数で70歳以上にピークがあった(おかしいと思うが記事からはそう読める)。完全な逆ピラミッドだ。うーん、年寄りの意見がこんなに選挙結果を左右するのか、それでは思い切った改革は難しいな、という印象を持った。

若ければいいというものではないが、2030代合わせて70代以上より選挙民が少ないというのは極めて歪な年齢構成だ。これは長野県だけでなく国政レベルでも同じだろうが。それでは若者に借金を負担させ年金改革しろという声が有力になってもおかしくない。私が覗くサイトのネチズンの意見は極端に走る傾向が強い印象がある。彼らに強い不安・不満がありそれが過激な意見に向かわせているのかもしれない。■

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