再び格差社会について。年収520万円の老人の医療費負担が3割に増えたことを非難し、医療費負担増加を嘆く老人の声を流すテレビ番組を最近良く見る。本当に困っている老人は本当にお気の毒だが、この報道は問題点の全体像を見せずバランスに欠け無責任だ。
どこのテレビ番組も「70歳以上の1世帯当たりの保有資産額が最も高く30歳代が最も低い、かつその資産額の差は99年で6.7倍、2004年では何と7.3倍にまで開いている事実を伝えていない。つまり医療費負担増を問題にしている世代が日本で最も金持ち世代でもあるのだ。
フリータや派遣社員で年収が520万円の半分にも満たない若者が全て医療費3割負担しているのだ。若者にこれ以上負担を強いるべきではない。一方で我国の個人資産1500兆円のかなりの部分を保有しているのが同じ老人世代なのだ。
欧米とは異なりこの資産を抱え込んで社会に還元せず死蔵させているのが日本の老人世代の特徴だ。無駄遣いしないというのは日本の美徳だと思うが、子供に相続させるだけでは単なるケチ、これが格差を固定することにも貢献している。
私が直感的にこれはおかしいと思う理由の一つは、私の田舎の母や近所の老人達の声は医療費負担増を必ずしも悪いことだとは思っていない。又、医療費が無料時代に病院が老人のたまり場になったトラウマをまだ記憶しているからのようだ。
医療費とは異なるが田舎のタクシーの運転手さん情報によると、年金が入るとパチンコに注ぎ込む老人が沢山いるそうだ。田舎では家族と同居している老人は年金が小遣いになっている例は多い。それ自体は非難すべきことではないが、少ない給料から年金を負担している若い世代の人達が聞くと堪らない気持ちになるだろうと思う。
「弱者は腐敗する」と哲学者の言葉を以前引用したことがあるが、この報道に接すると強欲とは言わないまでもある種の「たかり」精神を私は感じる。老人世代の問題は出来るだけ老人世代で解決しようという精神が必要であり、保有している資産を同世代の問題解決に活用すべきであり、後世に負担を先送りすべきではないと考える。■
日々,エントリーご苦労様です。
sundy様の経済動向、社会問題への主張、解説には、いつも感心させられ大変勉強になります。特に、今回を含め所謂「格差問題」に関するsundy様の主張は秀逸と思います。
もともと、小生が貴ブログを拝見するようになったのも、メディアが「格差」を論じだしたことに違和感を感じたことがきっかけでした。
私の違和感とは、第一に、抽象的な言葉である「格差」が用語として先行し、具体的になにが「格差」の現象なのかハッキリせず、それによってあたかも世の大多数の人間が経済的苦難におちいっているかのように論じられること。
第二に、「格差」の原因を「規制緩和」「競争主義」に単純に結び付けて批判し、マクロ的な分析が充分に論じられていないこと、です。
第一の点について言うと、メディアで先ずとりあげられたのは、特定の地域の給食費免除・生活保護支給の多さ、タクシー運転手の給与といった特定の業種の収入の少なさですが、いずれも全国平均との比較で論じられました。全国平均の数字を経年比較するのであれば理解できるのですが、特定の地域・業種の特定の指標を、全国平均に対して比較するのであれば、その地域・業種の特殊性を先ずは検証すべきであり、それは「格差」とは別の問題で、小生は「格差問題」そのものの存在を疑っています。
第二の点では、「規制緩和」「競争主義」への批判が、学生時代の「資本主義」対「社会主義」の二元論争を見るようで、世代間・階層間のマクロ経済的分析が少なく、議論の深みが感じられません。そして、メディアではあまり語られませんでしたが、「格差問題」「規制緩和」への批判が政治問題化される過程で、時を同じくして独禁法の特殊指定による新聞業界保護廃止の攻防が国会でなされおり、何か不気味なものを感じた次第です。
小生としては、テレビ等でよく見かける○○大学経済学部教授や○○研究所主任研究員といった類のかたがたは、「格差」を飯のタネとして煽っているとしか思えず、彼らの分析や主張を、あまり信用していません。今後も貴ブログで勉強させていただき、世を見る眼を養っていきたいと考えております。
ご自愛ください。
鋭い指摘をされていると思います。総じて「格差」という言葉が便利に利用されていると感じ、何か言わねばという気持ちです。
学者や識者がどういう意見を持つかは自由だが、メディアは承知した上で都合のいい意見をピックアップして活字にし電波に乗せているというのが私の見方です。インタビューも同じです。
正直なところ私も色々な人の考えに接して本質は何か自分なりに整理して書き込みをしているだけ、謂わばオピニオン・オブ・オピニオン、平たく言うと受け売りです。必ずしも信念があってのことではありません。お気づきのことがあれば今後もご意見ください。