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社長より高年収の中途採用人材

2022-01-16 16:54:32 | ニュース
今日の日本経済新聞の記事「ファストリ、中途人材に年収最大10億円」を見て感慨深い思いがこみ上げてきた。1995年に米国子会社に赴任後に経験した驚きと、同時にやっと日本もここまで来たかという思いがない交ぜになった複雑な気持ちになった。

記事はユニクロのファーストリテイリング柳井社長が取材に応えて、来年度から年収最大10億円を用意してディジタル化・電子商取引・供給網に精通した優秀で天才的な人材を募集するというものだった。柳井社長の年収は3.3億だという。コンサルタントではなく本部所属で事業を白紙から考える人材を求めるとあり、社長の覚悟のほどを強く感じた。

今迄の日本企業の年功序列をベースにした終身雇用システムを360度引っくり返す思い切ったやり方だ。今回のコロナ禍で官民ともに旧態依然としたやり方が悉く躓き、日本式人事制度の問題点が鮮明になったにも拘わらず改革が進まない状況に失望していた私にはトンネルの向こうの灯りのように感じた。やっぱりこの国は「民」が先行して改革を断行するしかないという思いだ。

同時に90年代半ばに米国子会社に出向した時の経験を思い出した。技術開発の経験しかなかった私が上司にワシントン州工場の責任者を打診された時、二つ返事で引き受けて家内と子供3人をおいて米国に出向した。それまで工場運営の経験は全くなく興味もなかったが、一度の人生を色々経験する絶好の機会が向こうからやって来たと無謀にも何の疑いもなく引き受けた。

その分野の経験がある優秀な日本人スタッフを数人つけてくれたが、そんなもので上手く行くほど甘くはなかった。半年後には品質問題から不良在庫が1年分以上も溜まり、本社から視察を受ける事態になった。私を含め各部門に経験を積んだ優秀な中間管理職がいなかった。その時、誰かの判断(?)で業界でも名の知れたオペレーション専門家Cを私の上司に雇ったと通知が来た。

この業績では当然と受け止めたが、Cは現地子会社社長より高級で雇ったと聞きこの国はそういうことがあるのかと驚いた。Cはカリフォルニアの本社務めだが、状況確認と組織見直しを打合せしたいと連絡が入り工場で会った。私は面接試験を受けるような気持で彼と向き合った。結論からいうと彼と馬が合い、その後優秀な部長クラス2人を紹介してくれ私の下で働くようになった。

彼等はかつてアップル等で働きその時知った経験者を多く採用し、田舎の工場は素人集団からプロの部隊になった。更にCは世界的なコンサルタント会社を雇い当時最先端のERPを導入し、工場オペレーションをディジタル化した。その頃は例えば先進企業のIBMですら手こずったという。それやこれやで、製造品質が改善し一気に棚卸が減って半年もたたずに順調に工場が回り始めた。

Cは社長より高給の価値があったし、彼が紹介してくれた人材も多分私より高給だったはずだ。それでも十分価値があったと私は思うし、お蔭で私も最悪だった評価が多少なりとも良くなったはずだ。その後工場移転など紆余曲折があって結局4年弱で帰任した時、今度は本社の昔ながらのオペレーションを見てがっかりした。多分、Cがいても日本の壁は高くどうにもならなかったと思う。

今回のコロナ禍での菅首相の奮闘と、縦割り日本社会の強固な抵抗は変わってないとつくづく思った。しかし、柳井社長のインタビュー記事を見て「民」ならやれる、こんな方法があったかと思った。最近の日立製作所など年功序列を止めてジョブディスクリプション(職務記述書で社員の仕事を定義して給与を決める)を導入する会社が増えているという。期待したい。■

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