下がるものは何でも下がった
昨日のダウ平均は37.65ドル高で3日ぶりに反発して終ったが、今週のダウ平均は約737ドル(6%)下落し、2008年10月以来の最悪の週だった。日本列島を縦断した台風の行方もさることながら、世界の株式市場の連鎖下落はリーマンショックの悪夢を思い出させ気になって仕方がなかった。株安は欧州・アジアに連鎖し、実物経済の下ぶれ不安から原油など商品価格の下落を招き、株価下落の埋め合わせから金が暴落した。
この2年かけて組み替えた景気変動に強いはずの私の金融資産は、初めの頃は組換え効果を発揮して下げ幅は大きくなかった。しかし先々週に山中湖で楽しんで東京に戻った頃から雲行きが怪しくなり、田舎に来た直後から猛威を振るった台風とシンクロで私のボトムラインがみすぼらしくなっていった。昨日庭の大草を刈り取って一息ついたこの週末に、一体誰のせいか考えてみた。勿論台風ではなく、株式連鎖下落の犯人は誰かについて。
世界は三重苦に直面
日本経済新聞(9/21)は「世界が直面しているのは欧州の債務危機、米国のデフレ懸念、新興国のインフレ懸念」と3つの懸念を報じた。私は年頭の大胆占いで3つのリスク(中国不動産バブルが軟着陸できるか、欧州のソブリン危機がスペインまで波及するか、米国経済回復が巡航速度に乗れるか)のどれか一つでも扱いを誤まると世界経済は二番底に入ると予測した。こんなことでえばってもしょうがないが、私の予測が当たる最悪事態が現実の可能性として見えてきたようだ。
欧州の金融政策と財政政策のまとまりのなさは随分前から指摘されてきたが、依然として根本解決せずにズルズルと先送りされている。ギリシャはEUに加盟してはならない国だったが、今追い出す訳には行かない。しかし、追い出したいという国民の声が独・蘭から北欧や東欧まで広がっている。EU全体として財政は健全なのに解決できないのはその為だ。民主主義体制下で国民と会話を続けながら対策を小出しで打ち出し、今後もズルズルと危機が続いていく可能性が高い。
米連邦準備理事会(FRB)は21日長期国債の保有比率を高める「ツイスト・オペ」の導入し金融緩和の強化策を示した。だが、米ダウ平均は予想の範囲内として大幅反落した。量的緩和の第3弾(QE3)を打ち出せないFRBに、市場は金融政策の限界を見て失望した。FRBが示した厳しい現状認識と、財政赤字をめぐる議会との駆引きで思い切った財政政策が打てない米政府。追加緩和で米景気の下支え効果は得られるか、二番底を回避しても低迷は続きそうだ。
中国だけでなく新興国全体に経済成長減速が指標にはっきり現れてきた。物価上昇抑制と経済成長の二者択一に迫られる事態が対応を難しくしている。これを反映して新興国の株価下落幅は先進国よりも大きく(香港-9.2%、韓国-7.8%、台湾-7.0%)、リスクマネーは逃げ足速く引き上げて新興国・資源国通貨は急激に下落した。ブラジルレアルや豪ドルの下落幅は特に酷く20%以上の下落を記録した。
人は聞きたいニュースを探す
だが、市場の反応はパニックとまでは言わないが、やや過剰なように感じる。リーマンショックの亡霊が彷徨して市場が恐怖で震えているようだ。冷静になれば、実際のところFRBのツイスト・オペは現時点で採りうるベストの施策であり、即効性には疑問があるもののその規模は予想以上に大きいという評価もある。ツイスト・オペはQE2時に次のステップとして敢えて残した施策であり、むしろドルの信任を高め次の有事に対応できる余地を残したという専門家の見方に私は組する。
巨額の資金を保有する機関投資家が株式の比率を落としたというのが今回の株価下落の直接的な原因である。だが、悪い材料のみ並べて悲観的になりすぎた結果を反映したと冷静な見方をしている識者も多い。株式から逃避して行った資金を見る目安として、米国のPER(株価収益率)が2000年の24.3から13.2まで低下した(日本経済新聞9/21)。業績が悪かったという訳ではないのだ。因みに日本では2000年35.8が13.6に下落した。ドイツは9台、ブラジルは8台、中国は10台だという。悲観的なのはグロバル・トレンドなのだ。
個別企業のPERを見ると最悪だった一昨日はマイクロソフト9.3、フォード5.7であのグーグルでさえ18.8だという。これはいくら何でも低すぎる。が、今買うと絶対儲かると楽観もできない。そう思って買うともっと下がったなんてことになりそうだからうっかり勧められない。一方で、今こそリスクを取って勝負に出ようと動いている企業は多い、それが証拠に8月企業買収が再び活発になったという報道がある(日本経済新聞)。市場のセンチメント(リスク・オフ)に比べ、企業はリスク・オン・モードにあり、現在の足元は決して悪くない。何時もの様に最後に楽観的な予測で終わりたい。■
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