久しぶりに私の専門(だった!)のハイテックの話題。お正月にラスベガスでCES(家電の見本市)が開催された時、日本での報道とはちょっと違う見方を紹介した。日本の報道を読んでグローバル・マーケットの視点と、技術と商品を総合してビジネスとして見る姿勢に欠けていると感じた3つのテーマだ。10ヶ月たったところで、この3つのテーマに対して私の予測(懸念)が実際に起こる展開になった。
1) グローバル市場で決め手は価格競争力、韓国勢が日本勢を上回る
報道によると世界のフラットテレビ市場は前半ソニーの新ブランドが健闘したが最近は様子が変わったようだ。テレビは「モジュール生産」商品であり、品質はある範囲に作りこめる。従って平面テレビの世界市場への浸透度という点で価格競争力が決定的となる。
多少の画質差よりも圧倒的な供給能力を背景に価格競争力がある韓国勢が徐々にシェアを増やし予想通りシェア・トップに立ったのは自然な成り行きだ。日本メーカーが苦戦というわけではなく、韓国勢が上回ったということだ。
2) 戦いは「ブルーレイ対HDD」ではなく「光デスク対インターネット」になる
アップルとディズニーが9月半ば映画のダウンロ-ド販売を開始し1週間で12.5万本販売した。小売最大手のウォルマートは強硬に映画会社にねじ込んだが、その後流れは止められないと見て方針転換し、店頭ダウンロード販売に踏み切ると見られている。
音楽CDは既に販売激減、来年はDVD販売もピークを打ち、以後減少していくと調査会社は報じた。行方は映画会社の値付け方針次第であるが、少なくとも現在ダウンロード販売のほうが安い。次期DVD方式の戦いはメディアの好きなテーマだが、その間に全く別のインターネット媒体がビジネスの主流になるシナリオが現実味を帯びてきた。
3) マイクロソフト・インテル家電連合は苦戦
CESで発表されたマイクロソフト・インテルの家電連合は基本コンセプトが欠けたその場限りのもので市場に浸透することはないと予想した。その後の展開は明らかだ。先週Dellはインテルの家電向けブランドViivのプロモを停止したと報じられた。
HPやGatewayのパソコンには依然Viivロゴが貼られているというが、Viivの運命は決まった。直ちに中止することはないだろうが戦略の見直しは必須だろう。仮に優れた考えだとしてもWintel文化はパソコン以外で受け容れられることは非常に難しいだろう。
よく考えれば明らかだと思うことも、当事者になればなるほど大局とその中で自分の立つ位置が把握できなくなる。私も同じだった。多くの報道はそういう人達の声を伝えたということだ。それは非難すべきことでは決して無い。その中から予想もしなかったビジネスが生まれてくるのだから。後からなら何とでも言える。でもどうして心配したことがこうも易々と起こるのだろうか。■
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