昨年日本の貯蓄率が再び上昇したそうだ。
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務省の家計調査によれば、サラリーマン世帯家計の平均貯蓄率が8年ぶりに上昇、前年比で2.2%アップして27.5%となったという。貯蓄率上昇の背景としては、30~50代の働き盛りの世代が消費を抑え貯蓄や住宅ローンなどの負債の返済に充てたとの見方があるという。
先月27日に金融広報中央委員会が発表した別の調査、2007年の「家計の金融行動に関する世論調査」によれば、一世帯あたりの平均金融資産の保有額は前年比12.5%増の1259万円だったというから、この傾向は間違いなさそうだ。
何故わざわざ「間違いなさそうだ」と書いたかというと、近年の貯蓄率減少傾向は構造改革による格差拡大を攻撃する材料として、事あるごとに貯蓄率の長期低下傾向を指摘してきたメディアが今回何も言わないからだ。自説と異なる情報が出て来ると沈黙した可能性が強い。
報道の問題は別の機会に論じるとして、もう一つ注目すべきデータが上記調査の中にあった。
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融資産の大半を占める保有額3000万円の層の比率が高まった一方で、100万円の層も増えていた。ところが、昨年12月末の投資契約残高は167兆円となり、9月末比2.5%減ったという。低金利の預貯金が総金融資産の5割以上を占め、その傾向が更に高まっていたという。
これをどう解釈すればよいのだろうか。日本人のリスク回避傾向が強いのは昔から指摘されている。20年前のバブル崩壊以降のトラウマがまだ克服されておらず、生活の将来不安がその傾向を助長しているとの指摘が前々からある。
だが、事態はもう少し深刻ではないだろうか。投資判断は最終的に自己判断によりその結果も自己責任だ。単純にその覚悟が出来てない、そんな知識も暇も無い、ということのようには思えない。今回の貯蓄率再上昇は日本の未来にたいする信頼が劣化した結果というべきではないだろうか。
日本の将来は投資するに値しないと考える国民(金融資産保有者)が増えているという仮説は正しいかもしれない。少子高齢化が進み自動車に代表されるように国内市場は停滞、国も地方も財政悪化に歯止めがかけられず、にもかかわらず海外からの資本は入りにくくなっているからだ。
近年の日本の一人当たりGDPが急降下、中国等途上国の経済成長のなか官僚の堕落と政治の混迷など、我国の存在感低下を国民が肌で感じ、それが金融資産の保有のあり方に表れた結果かもしれないと考える。
全世界が株価を下げ円高の進行下で、現金を握り締めている日本人の個人資産評価額は結果的に上昇した。とりあえず縮み思考は個人には良い結果をもたらしたように見える。しかし、それは個人がリスク・マネジメントを真剣に考え自助精神を育む機会を失ったことにならないか。■