中国経済の調整効果が出て原油輸入の伸びが落ち着きを見せたと思ったら、ハリケーン・カタリナが米国南部を襲い史上最大といわれる損害を与えた。余りに被害の規模が大きく未だに被害全体を掴みきれていない様子で、テレビ報道を見ると政府の対応に対し苛立ちが伝わってくる。経済的には需要の約30%をまかなっているメキシコ湾岸の製油所が軒並み運転を停止したのが気になる。元々米国内の石油精製能力が不足しており90%以上の稼働率で目一杯運転されていたのでその影響は甚大である。たちまち原油価格が跳ね上がり70ドルを越え史上最高値をつけた。
意外なことにNYはじめ世界の市場はこの悪いニュースをやり過ごしている。市場動向を見る限り原油高騰は今のところ恐れたほどに米国や世界経済に悪影響を与えていない。米国のガソリン価格は所によって1ガロン4ドルになったが、これ迄のところ消費者市場は健在のようである。90年代後半米国に駐在した頃は日本より断然安く1ドル余りだったので4倍になった。ある調査によるとガソリン価格増の帳尻あわせとして年収3.5万ドル以下の人達は買い物を近場のディスカウント・ストアに変更、5万ドル以下の階層は外食等を減らしているがウォルマートでの買い物は続けているらしい。5万ドル以上の収入の人達の消費パターンは全く変わっておらず、依然買いたい車のトップはガソリンをがぶ飲みするSUVらしい。
中国は政府が価格統制しているので消費者や企業に渡る石油価格は安定しており景気に影響を与えていない。日本や欧州経済は石油依存度が米国や中国ほど高くない。今後も世界各国の石油利権に中国が挑戦する構図が続き、数年遅れでインドが参加することになるだろう。実際のところもう始まっている。先月中国石油が中央アジア油田の利権を持つカナダの石油会社買収を決めた時、争ったのは実はインドの石油会社だった。インドの資源需要が近い将来更に急増する可能性が非常に高い。中印関係が中央アジアやロシア等の資源獲得を巡って競争しあう関係になることは間違いない。日本が戦略的に資源を確保できるなら保険としてやってみる価値は十分ある。
石油高騰により世界経済が悪化しない限り日本経済に対するインパクトは軽微である。逆に原油高の追い風を受け米国でハイブリッド・カーが人気で3ヶ月待ちになっていたり、太陽電池の世界シェアが50%を超え、中国からリサイクルシステム受注するなど日本の資源コンシャスな商品やシステムが世界市場でも高い競争力を保っている。一部の国で「もったいない」という昔からの習慣を表す日本語が受け入れられている。
化石燃料価格が更に高騰を続けると従来のエネルギー大量消費型の産業や生活の基盤を揺るがし競争力を弱める。しかし日本のようなエネルギー依存度の低い国にとってはゲームのルールを変えるまたとないチャンスであり、今後も代替エネルギーや省資源技術の開発強化に取り組むと同時に国策として開発や普及を支援していくべきである。石油価格の上昇速度は色々な条件で変化しそのバックアップとして十分な化石燃料確保が健全な代替エネルギー開発の保険になる。
6月に原油価格が近い将来1バレル100ドルになる可能性があると書いたが、今回のハリケーンの影響は短期的なもので一旦は落ち着くと見られている。為替と同じで急激な価格高騰はせっかく回復途上にある世界経済を傷めるので是非そう願いたい。しかし長期的には化石燃料価格が上昇し代替燃料と経済的にコンパラブルになる時代が予想より早く来るのではないだろうか。■
意外なことにNYはじめ世界の市場はこの悪いニュースをやり過ごしている。市場動向を見る限り原油高騰は今のところ恐れたほどに米国や世界経済に悪影響を与えていない。米国のガソリン価格は所によって1ガロン4ドルになったが、これ迄のところ消費者市場は健在のようである。90年代後半米国に駐在した頃は日本より断然安く1ドル余りだったので4倍になった。ある調査によるとガソリン価格増の帳尻あわせとして年収3.5万ドル以下の人達は買い物を近場のディスカウント・ストアに変更、5万ドル以下の階層は外食等を減らしているがウォルマートでの買い物は続けているらしい。5万ドル以上の収入の人達の消費パターンは全く変わっておらず、依然買いたい車のトップはガソリンをがぶ飲みするSUVらしい。
中国は政府が価格統制しているので消費者や企業に渡る石油価格は安定しており景気に影響を与えていない。日本や欧州経済は石油依存度が米国や中国ほど高くない。今後も世界各国の石油利権に中国が挑戦する構図が続き、数年遅れでインドが参加することになるだろう。実際のところもう始まっている。先月中国石油が中央アジア油田の利権を持つカナダの石油会社買収を決めた時、争ったのは実はインドの石油会社だった。インドの資源需要が近い将来更に急増する可能性が非常に高い。中印関係が中央アジアやロシア等の資源獲得を巡って競争しあう関係になることは間違いない。日本が戦略的に資源を確保できるなら保険としてやってみる価値は十分ある。
石油高騰により世界経済が悪化しない限り日本経済に対するインパクトは軽微である。逆に原油高の追い風を受け米国でハイブリッド・カーが人気で3ヶ月待ちになっていたり、太陽電池の世界シェアが50%を超え、中国からリサイクルシステム受注するなど日本の資源コンシャスな商品やシステムが世界市場でも高い競争力を保っている。一部の国で「もったいない」という昔からの習慣を表す日本語が受け入れられている。
化石燃料価格が更に高騰を続けると従来のエネルギー大量消費型の産業や生活の基盤を揺るがし競争力を弱める。しかし日本のようなエネルギー依存度の低い国にとってはゲームのルールを変えるまたとないチャンスであり、今後も代替エネルギーや省資源技術の開発強化に取り組むと同時に国策として開発や普及を支援していくべきである。石油価格の上昇速度は色々な条件で変化しそのバックアップとして十分な化石燃料確保が健全な代替エネルギー開発の保険になる。
6月に原油価格が近い将来1バレル100ドルになる可能性があると書いたが、今回のハリケーンの影響は短期的なもので一旦は落ち着くと見られている。為替と同じで急激な価格高騰はせっかく回復途上にある世界経済を傷めるので是非そう願いたい。しかし長期的には化石燃料価格が上昇し代替燃料と経済的にコンパラブルになる時代が予想より早く来るのではないだろうか。■